第040回 コンドームについての本

`93.9.17寄稿

「隔世」(かくせい)と言う言葉の意味は、時代を異(こと)にすることで、時代も変わったもんだなあ、とか世の中が甚だしく移り変わったなあ、というような時「隔世の感あり」などと使います。この感じを持つことは、最近多々ありますが、「コンドーム」のこともその一つです。

1991年11月21日付けの新聞(朝日?)には『米コンドームCM解禁、日本では車内ポスターに「ノー」』の見出しがでました。アメリカでは産児制限への反発を恐れて、10年近く姿を消していたコンドームのコマーシャルが、「エイズ対策に貢献するため」にテレビに復活する事になった、と言うのに、日本では、「エイズ予防財団」が作成したポスターがコンドームの写真がついているというので、JRや営団地下鉄側から、駅構内での張り出しを拒否された、というのです。

ところが、今年(1993)2月付け、「北海道新聞」の『コンドーム自販機』設置規制を緩和、エイズ予防で厚生省都道府県に見直し要請』なる見出しの記事によると、「エイズ予防にコンドームが有効なため、高校生らを含め、若い人への普及が大切で設置の制限はもういらないのでは」との考えで「自販機の方が心理的抵抗なく購入できる」メリットがあるとして、上記のような要請が出たと言うのです。下線の部分の表現が面白い。

そのあと、2月26日付け「北海道新聞」で札幌は白石区に25日「コンドーム専門店」が出来た、と報じられ、これを追っかけるようにして、3月24日の「読売」には、『寄付金付きコンドーム、「エイズ」活動支援』なる見出しで、エイズ関係のボランテア団体を支援するため、コンドームメーカーの日本ゴム企業が1箱30円の寄付金付きコンドームを4月末から発売するとの記事が出ました。

昔は、誰であれ、コンドームを買うには何やら恥ずかしさが先にたったものです。岡田甫編「艶句1 」にのっている“ゴムを買う夫を妻は遠く待ち”の一句は薬局でコンドームを買っている夫、それが恥ずかしいので離れた所で待っている妻を詠ったものですが、心理的抵抗なく自販機で買うことが出来る現代では、この句の恥じらい気持ちもやがては消える、いや既に消えた風情(ふぜい=あじわい)かも知れません。

つまりは、これが「隔世の感」です。それはともかくこの際、コンドームとは何か似ついて、諸表をひもといてみましょう。

まずは、大場正史「世界性語学事典2

この大場正史はリチャード・バートン英訳の「アラビアンンナイト」を日本で初めて全訳した人です。次は北大出身の医学博士飯田初男「性語典3

次は、碩学(せきがく=学問が広く深いこと)中野栄三の「珍具考4 」からこれは500部限定本で第116番著者署名入りで、私の愛蔵する珍本です。

次はN・ハイムズの「受胎調節の歴史5 」です。この全300p余の本の第8章が「コンドームあるいは鞘(さや)の歴史」です。これは30ページ近くありますから、内容は省略して、タイトルだけをあげると、序説・コンドーム初期の歴史・コンドームと言う言葉の起源・18世紀のコンドーム・ゴムの加硫操作後のコンドーム・工業の現代の経済的見解です。

この本は「「世界性学全集」全20巻の中の第11巻目です。さて、最後は、穴倉富士雄著「突撃一番−スキンの歴史ー6 」です。

安政年間、信州上田の英学者、赤松小三郎が残した日記に「郷里の土産にルーデサック2個を横浜で買い求めた」とあって、明治の初期にはこれが,1ダース3円著者がこれを書いている現在(昭和54年)の貨幣価値は約4万円するそうな。こんな話しをあれこれ折り混ぜながら,日本のコンドームの歴史と現状を語っているこの本は,体裁(ていさい)こそ豆本ながら,貴重で愉快な本です。この本以後、コンドームのみを扱った本を,残念ながら私は知りません。どうでしたか、コンドームも色々面白ものでしょう。

つけたし① 薬局のあの自動販売機の前で「これ買う」とねだっている子供に「お家に帰ったらありますヨ」といっているママがいた。(滋賀県大津市 塚本もと子)

② うちは,薬局を経営仕手いるんですけど,面白いことがあったんです。「サックください」と恥ずかしそうに,コンドームを買いに来た男性に,店の女の子ったら,真面目な顔で「中指ですか?」といいながら指用サックを出しちゃったんです。あのときのことを思い出すとみんな大笑いです。(東京都 裕子)

③ うちの近くにあるコンドームの自動販売機には『乱用を禁ず』という張り紙がしてある。(愛知県一宮市奥町 名和美津代)

④ デパートのペットショップで“愛犬用のスキン”を売っていた(大阪府牧方市 高橋宏香)

「つけたし①〜④はいずれも私の愛読書の「ぶったまゲ−ション7 」から


  1. 岡田甫.艶句.有光書房 (1962) []
  2. 大場正史.世界性語学事典。白鳳社(1963) []
  3. 飯田初男.性語典.都山書房(1963) []
  4. 中野栄三.珍具考.第一出版社(1951) []
  5. N・ハイムズ.受胎調節の歴史.河出書房新社 (1957) []
  6. 穴倉富士雄.突撃一番−スキンの歴史。未来工房(1978) []
  7.   ヤング解放区編集部.ぶったまゲ−ション。光文社(1983) []

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です