第101回 梟(ふくろう)木菟(みみずく)コレクション

英会話も堪能(たんの)、着付け教室では助手もつとめる才女の良子君から、木菟(みみずく)の柄の小皿が送られて来ました。これは嬉しや、ありがたや!!

良子君は、かって私の下でアシスタントをつとめていましたが、私の梟(ふくろう)コレクションに協力してくれて、こうして梟、木菟を見付けると、私に連絡してくれたり、贈ってくれたりするのですが、その目の付けようというか、気付きようというか、探す時の視点が独特で、おいそれとは人の気付かぬものを見付けるのが上手です。例えばそれは、消しゴムであったり、糊(のり)であったり、テッシュペーパーであったり、飴玉(あめだま)であったり、、、ですが、それが全て梟柄なのです。

或程度の大きさを持った置物や絵などは、わりと見付けやすいものですが、こうした類のものは、見付けようとしても、なかなか見つかるものでないことは、梟コレクターの私が一番知っています。良子君が高校の英語教師と結婚して、新婚旅行で行ったハワイでは、シロフクロウの柄のネクタイをみつけて贈ってくれましたが、イヤ、喜びで胸が、いや、首が

しめつけられる思いだったなあ。さて、良子君の手紙には近況報告のあとに、中島町のd酒店に、長野県の地酒で、ラベルに梟が描かれているのがあるーと書いてあります。これはグッドニュースと私は早速行って、日本酒の棚に目をこらしていくとあります、あります。、、、ところが、これが残念、無念!!ダメなのです。確かに、ラベルには梟(らしき)鳥が姿よく描かれているのですが、いけません。

何がダメかとかと言うと、足指がダメなのです。この鳥、梟らしき姿体ながら、前足の指が3本、後足の指が1本で止まっています。これが難点、これでは不合格です、と言っても、これは良子君の責任にあらず。さて、梟、木菟の足指は、獲物を捕まえて殺すのに、最も効力を発する武器なのですが、それは、他の鳥は知らず、前に2本、後ろに2本の指がついていて、この2本ずつ、向き合った指で、物を掴(つか)みかつ、枝に止まるのです。これは、小さなことのようですが、他の鳥と、梟、木菟を区別する大事なポイントなのです。ですから、私は梟のものを集めて蒐めていますけれども、小物を含めたいわゆるグッズの場合はさしてこだわりませんが、描かれたものとなると、この足指がすこぶる気になります。

枝に止まっている梟の指が3本指では、小笠原流の、三つ指ついての礼法になってしまいます。しかし、梟は礼法を習得して後、狩に出てくる訳ではありません。それ故、私は、指3本を突き出した梟の画を見ると、ついつい、これを描いた画家は、果たして実際に梟を見たことがあるのかな、と疑ってしまいます。そんな訳で、版画にしろ、油絵にしろ、3本

の梟の絵を、私は余り買いたいとは思いませんし、足の指の数が、2本か、3本かは、私の絵画鑑賞、および画家の伎倆の判定の際の重要な基準なのです。こうした観点からみると、幻視の画家ボッシュも、鬼才ビュフェも、巨匠ピカソも駄目です。

彼らの梟の指は大方、3本指なのであす。この点、H,ヤンセンは正確です。では、日本の画家はどうか、と言うと、横山大観の「木菟」、山口華楊(かよう)の「木精(こだま)」小林古径の「木菟」、小茂田青樹の「春の夜」などは合格。古くは鳥羽僧正や、北斎や、広重はいいのですが、大物の尾形光琳や、俵屋宗達はいけません。

そして又、この観点からでは、殆どの絵本画家や、童話の挿し絵画家も失格です。子供向けの物だからと言って、観察の足りない、不正確な絵が描かれていい、とは思いませんが、どんなものでしょう。実際のところ、私が多数莵めた絵本の中から、正確なものをさがすのがむずかしいくらいですが、一応2点正しいのをあげておきましょう。

と、ここまで書いたところへ、卒業生で札幌在移住の大西君が来訪。#デパートでみつけたという酒「蓬莱泉(ほうらいせん)」をお土産に呉れました。ラベルには2本指をつきだした「木葉木菟(このはずく)」が、描かれてじっとこっちを見つめています。傍の字を読むと愛知県北設楽郡設楽町「関谷醸造合資会社」とあります。、私は独(ひと)りごちました。「何が、流石だって?、」。設楽(しだら)町と言えば、大宝2年(702年)建立という真言宗五智教団の本山、「鳳来寺(ほうらい)」があるところです。そして、鳳来寺山には「ブッポウソウ=仏、法、僧」と鳴くことで知られたフクロウ科のコノハズク(木葉木菟)がいます。そして、平成4年には、この町で「仏法僧シンポジューム」が開かれた位です。その地で出すお酒ですもの。足指の数を間違える筈はありません。それ故、流石!!なのです。アンダースタンド??

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