山下敏明さんのあんな本、こんな本

第129回 酒の肴のチョコレート・チーズ

`98.5.8寄稿

昔、室蘭工業大学にいたT先生は、趣味豊と言うか、好奇心旺盛と言うか、何に対しても興味を示す人でした.私自身も、人生諸々の楽しみは、全てこれ、

おとろえることのない好奇心に発する、と思っている人間ですから、T先生の精神のありようについては、何の違和感も覚えませんでした。

ところが、事が、T先生対図書館となると、しばしば軋轢がおこりました。

と言うのは、T先生は、例えば「 ウニとナマコ」とか、「酒肴百珍」とか言った本を、図書館経由で次から次へと注文します。

それが個人の註文、つまり、私費払いですと何の問題もありません。しかしこれが校費、つまり、大学の研究費で註文する、。となると多少問題が生じてこないではありません。

と言うのも、T先生の勤務先が「○○家政大学」とか「○○調理専門学校」と言う類のものであれば、ウニであろうと、ナマコであろうと、ヒラメであろうと、それは、調理、いや研究の題目として、何もおかしくはないものでしょう。

がしかし、現実にT先生は工業大学にいる訳ですから、ウニやナマコは、どう考えても「研究」と言う名にはそぐわない、と受け取られます。

もっとも、「工業的知識」を生かしての、ウニの養殖と言った研究もないではないでしょう....が....ウニ→ナマコ→酒肴(さけのさかな)と続くと、これはやはり、研究題目と言うにはウサン臭く、正しくは、好み、それも、晩酌からんだ興味と言った趣になってきます。

そこで図書館側はT先生に、イヤシクモ、研究費(=税金)を持って、自分の酒肴の知識カクトくに当てるのは困る,,,と言う不粋な文句を言わざるを得なくなります。図書館側のこの気持ちをはっきり言うと、いささか品に欠けますが、「酒の肴の本位、手前で買えよなあ!!」と言う気持ちです。

もっとも、T先生はまだ可愛い部類で、もっと図々しのになると、受験期の息子のために、研究費で受験用参考書の「チャート式数学」なんてのを買う御仁もいれば、「週刊テレビ」なんてのを買う人もいます。

更にひどいのになると、韓国で学会があるとて、旅費も何も、国(=税金)で行くのに、「キムチのうまい店なぞ紹介している本はないか」などど、図書館に聞いてくるケチ臭い人もいますから、あいた口がふさがらぬ,,,ではなくて,,,あいた口で,,,,「手前でかえよなあ!!」と言いたくなる訳です。

アレレ!!  T先生のウニやらナマコの話から話がそれましたが、何を言いたかったのかと言うと、つまりは、酒の肴のことで、それもチョコレートについてです。

東京医科歯科大学の学長、故太田敬三先生は(と言っても私の知らぬ人ですが)夜、シェリー酒をすすりながら、チョコレートを一寸ずつかじった由,,,これが絶妙の味とか,,,。いささかキザな話ですが、本当にそうなのです。

日本酒はいざ知らずチョコレートはウイスキーにもシェリーにもワインにもちゃんとおさまり良く合います。嘘と思うなら、「チョコレートの本1 」を読んでみて下さい。

さて、酒の肴と言えば,もう一つ「チーズ」です

もう,何年前になるか、まだ私が室工大にいる時の事ですが,テネシーから来た市民国際交流の一行を迎えた夕食会での,或る出来事を思い出します。

テーブルに「雪印」のチーズが出たのですが、私の隣席のポーランド系アメリカ人が「これは?」と聞くのです。「これはチーズだ」と答えると「それはわかるが、どこの物だ。」と言います。「これはスノーブランドのチーズで札幌で作っている。つまり、国産だ」と返すと、かれはえらく驚いて,「日本でチーズが出来るのか?」と言いました。

「朝鮮動乱』の際息子を兵隊にとられた母親が,朝鮮を日本の一部と思い込んでいたり、現今,沖縄にアメリカ基地があることをしらないハーバード大学生が何%もいると言うアメリカ或はアメリカ人ですから、日本でチーズが作られていると知っておどろくこのアメリカ人におどろく必要はありません。

只,この人に、1300年も昔の古代日本に「蘇」=チーズがあったと、出ている「古代日本のチーズ2 」を読ませたいものです。

さて、酒は飲みたし,肝障害はおそろしと思っている貴方,,,チーズに含まれル”必須アミノ酸の「メチオニン」は肝臓の働きを強化してくれる...なんてことが出ている「チーズを楽しむ3 」を片手に安心してお酒をお楽しみあれ!!


  1. ティ―タイムブックス編集部.チョコレートの本.晶文社(1998) []
  2. 廣野卓.古代日本のチーズ.角川書店(1996) []
  3. 村山重信.チーズを楽しむ丸善.(1998 []

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