第130回 三味線の魅力

‘98.5.28寄稿

本の話★-<244>(1998年5月19日火曜日 室蘭民報朝刊)

浜美枝という女優がいました。今でもいるのかな? バスガイド出身で,ちょっと肉感的な,もっとはっきり書くと,おっぱいが30年も前としては人並み以上に大きくて,言うなれば「日本人離れした姿態」で人気があり,そのおっぱいのせいばかりでもなかったのでしょうが,全作品に肉体女優を登場させるのが常套手段だった。ご存じ,007シリーズにも,確か,ショーン・コネリーの相手役として抜擢されたのではなかったかしらん。

私は,この女優に何の関心もありませんでしたが,ある事をきっかけとして,俄然,嫌いになりました。ある事というのは,ある時,「私はお買物上手」とか言う婦人雑誌の特集に出たこの女優が,”私って我ながらお買物上手なの。それに結構目利きで,ポケットマネーでいいものを見付けるのが上手いのよ”との前口上で,最近の掘り出し物は,と記者に示したのが,イタリヤ製のシャンデリアで,これが何と300万円!!。あなた,これって,ポケットマネーって言います? これを読んでウンザリして以来,私はこの女優を一顧だにしない,つまり,ちょっとした注意すら払わない,無視すると言う態度で来ました。今でもいるのかな? といのは,そのせいなのです。

ウンザリと言う感じを今少し説明すると,私という、しがない庶民が,それこそポケットマネーでこの女優が出ている映画を見ると,結果として,この女優のポケットマネーを増やすことになる,そんな口惜しくも馬鹿々々しいことはしていられない,という気持ちです。

さて,同じような意味で,近頃ウンザリしていることがあります。郷ひろみなる流行歌手に関わることです。私は,北海道弁で言うならば,いい年かっぱらっていつまでも,高低定かならぬ声で,垂れ流しみたいな歌を歌うこの歌手に,先の女優同様,何の関心もありませんが,彼が書いた? 「ダディ」(訳は父っつぁん)なる本が,これを書いている4月20日現在で,既に50万部売れ,その印税が7.000万円になんなんとしていると聞くと,これは何たる現象であるか? と気にせざるを得ません。

昨年であったか、大阪のナントカ体育館? とやらに,彼がイタリア・レストランを出すとかで,職人はおろか,調理場の器材全てをイタリアから取り寄せて,その額,何億とか言う報道を読みましたが,土台,5%の消費税にあえいで諸事切りつめているはずの庶民が,何を血迷ったか,1.500円ナニガシを投じて「ダディ」なる,読んで三文の得にもならぬと思われる本を買う。その結果,得をするのはダディこと郷ひろみと言うのでは,庶民たるもの人が好すぎはしないか。私ならこの類の人間の懐を肥やすなんてことは,頼まれても真っ平御免です。

さて,「報道特集,図書館」の「市民の声」で,本町の長谷武さんは,「読みたい本がない時は,リクエスト制度を利用しているが,殺人事件のタイトルの本が多いのは公立図書館として如何なものか」と選書の必要を訴えました。誠に我が意を得たりで,私も,着任後,本欄で,客の要望だからと言って全てを買うことの寧を指摘し,その時出ていたSMポルノ小説家C・Tの作品を難じました。

ちなみに,当館の本代は,年間1.000万円強で,市民一人当たり僅か100円です。「図書館は訴える」なる本には,10年前の時点で活動的と見られる図書館の平均本代は市民一人当たり400円とあって,その資料を採用すると,10年前ですら10万人の市民だと4.000万円なければならぬのです。つまり,当館は,10年前の水準にすら追いついていないのです。

本代が決定的に少ないと言うこの現実を踏まえて,その本代を有効に生かす手段はとなると,ただ一つしかありません。下らぬ本を買わぬこと,この一事です。図書館は貸本屋ではありませんから,一時の好奇心が満たされれば後は用なし,と言った態の本は買わずに済ましたいものです。

それにしても「ダディ」とはなあ!! 「近頃のガキは恐ろしい,隣りのガキも,学校から帰ってくるなり,ママ,腹へった,ママ食いてえ,だと!」と三味線の合間に語った故竹山が聞いたら,何と言うだろう。

・・・・という訳で, ・・・・「竹山」とは,言わずと知れた,故「高橋竹山」で,つまりは「津軽三味線」。

今回は三味線について語ろうと思うのですが,三味線とくれば,猫の皮・・・・で,先にその話から始めます。

「猫の日めくり」,猫のカレンダーを見たことがありますか。365日,猫,猫,猫で,全国からあつめた猫の可愛いいやら,面白いやら・・・ のが並んでいて別に,猫好きならずとも見ていてあきが来ないカレンダーです。

私の友達(と言ってもずっと年若ですが)のC子も,自他共に認める愛猫家で,自慢の猫を写しては,このカレンダーに出品していましたが,6年かかって,昨年,初めて,写真が採用されて,カレンダーにおさまったのはいいのですが,今年に入って,その猫が死んでしまった。C子の嘆くこと〜。

そのC子が昨日,私のところに来て言うには,「山下さん,日本には猫を捨てたら罪と言う法律はないの」と。C子の話では,今,全国で,30万匹から 100万匹の野良猫(=捨て猫の結果)が殺処分されている。この殺処分と言うのは,何でも,空気を注射するそうな。これが,猫好きのC子には,耳をふさぎたくなるような事で,ガマン出来ない。 ・・・・聞いて私は,うろおぼえだが,今,捨て猫を殺さずに,猫を不妊にする,或は去勢する,の2つの手術の費用を助成する制度がある自治体が出始めている。これは最初,愛猫家のボランティア達が,捨て猫をみつけては,自前で雌1万円,雄5千円と言う相場で手術していたのだけど,今では雌3万円と上がって来て,もうボランティアでは無理だ,となって自治体の出番となったんだ・・・ 云々。

或る自治体の発表では,今,1匹あたり,5万円かかるそうな。 ・・・とここまで話して来て,今度は,私が,待てよ,待てよ,冗談ではないぞ・・・・ 世の中には猫大好きもいれば,猫大嫌いもいる。青の人達全部の税金で,つまりは,「猫も杓子も」が払っている税金を使って,人の迷惑を考えず,飼い猫を捨てると言うフザケタ輩の尻ヌグイを何故せねばならぬのか。こりゃ,ちょっと,おかしいわ,と思い始めました。

ここで話を三味線にもどすと,けいこ用の三味線だと犬皮でもいいが,プロの使うものには,猫皮でなければ絶対ダメの由。人間国宝・常磐津英寿の話では「猫皮は厚みが中央と周囲で違っていて,その厚さと薄さの微妙なバランスがいい共鳴を生む」そうで,「音質で猫皮をしのぐものはない」とか。今,猫皮で三味線をつくる業者は,全国で1軒,原皮の入手に四苦八苦の由。ならば,殺処分の猫の皮だけでも生かせぬものか・・・・ とC子の顔をみながら内心思った次第。

肝心の三味線の本の話をするひまがなくなった・・ ので急いで説明すると,「津軽三味線の誕生1 」(大條和雄/¥2.310)は題名通り,

「三絃の誘惑2  」/¥3.045)は,小むずかしげですが,「三味線」に魅せられた文人達の,精神のありようを描いて不思議な位,面白い本です。

「正統的異端3 」(¥2.625)は,「武満徹」との対談の所で,五木が「三味線」について力を込めてしゃべっています。

先づはお読みあれ!!

‘98.5.29(金)


  1. 大條和雄.津軽三味線の誕生.新曜社 (1995) []
  2. 樋口覚.三絃の誘惑.人文書院 (1996) []
  3. 五木寛之.正統的異端.深夜叢書社(1996) []

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