山下敏明さんのあんな本、こんな本

第145回 ヴィクトリア朝の性と人種差別

`99.5.14寄稿

ダイアナ妃が事故死してからのナントカで,記念のコインが出るそうな。そしてそれを記念して,英国の大使館でパーティが行われたそうな。と言うような報道を耳にしながら,読み終えたのが、度会(わたらい)の本

「ヴイクトリア朝の性と結婚1 」こんなことが出ている

“ちぇ、おいおい、おまえさん、じっと頭を上げとれんのですかい」。ボンネットを被る女王の手助けをしながら,彼女のあごの下に手をやって、ブラウンは言った 。

女王とは言うまでもなくヴイクトリア女王。ブラウンとは,スコットランド高地出身のジョン・ブラウンで、もとはヴイクトリア女王の亡き夫、アルバート殿下の従僕だった男。ブラウンは39歳、女王は44歳。「女王の種馬』と言われたブラウン。

ダイアナ妃の恋の遍歴も,この2人の話の前には、何やらかすんでしまうなあと思いつつ,他の頁に移る。

今度はオックスフォード大学の話、と言ってもおどろくなかれ娼婦の話。

この時代、大学町オックスフォードには学生が,1500人,それに対して,300人から500人の娼婦がたむろしていて、これが大学生相手に稼ぎまくる。

ところが警察は取り締まりに熱を入れない。勉強もせずに娼婦にうつつをぬかしている学生達を見て,ナント大学側では「大学警察』を作って,娼婦狩りを始めたと言うのです。

人間関係がうまくいかずに一人でとじこもって登校もせずにいる学生の為に「動物療法」とて、モルモットを貸し与えて,人間感情を取り戻させようと,室工大がモルモットのレンタルを始めた,,,との記事がいつか出ていたっけが、こちらの方がまだ話がおだやかかなあ。

史上、お上品な時代として知られるヴイクトリア時代の性と結婚にまつわる実情の数々を、まあじっくり読んでごらん。

エリザベスの婆さんが、嫁のダイアナの行為にあれこれ言ったり、眉をひそめるなんざおせっかいじゃないの!!と思っちゃうね私は。

「ヴイクトリア朝の性と結婚 を読んでから

「ヴイクトリア朝万華鏡2 」に目を転じると、これが又面白い。

これは、我が国では余り知られているとは言えないイギリス美術の中から20数名の画家の代表作を選んで並べて,それを見ながらヴィクトリア朝社会の人生の諸相を理解しよう。いや理解させようと言う中々面白い試みだ。

例えば、

今でも有名な競馬のダービーで言えば,ウイリアム・パウエル・フリスなる画家の<ダービー開催日>と言う画が出ていて,数えられるだけでも80数名というおどろくべき人数が描き込まれている。

活気あふれる観客、盛り場につきものの大道芸人等々。一点の画につき、一話で完結,,,の絵解き集   語られる逸話の面白いこと、「ヴイクトリア朝」の何たるかを知らない人でも一気に引き込まれてしまうのは間違いなし。

次は、ウイリアムホガースの画の中の黒人について語る3 ,,,と見せかけて、実は大英帝国の白人達が何の良心の呵責(かしゃく)もなく平然と持ち続けていた、人種差別について語ったもの、

「赤面すると言う白人の能力」と言う言葉が出ていて、これは当時の殆どの人が、色の黒い顔がどうして赤面出来るのか、出来はしない赤面するのは色が白いからでそれは即ち、白人がすぐれているからであるとかんがえていた...と言うのだから、何をか言わんや!!

ホガース(1697〜1764)は、イギリスの画家の中で、一番黒人を多く描いた人、この本も優れた絵解きの本だ。イギリスの富が奴隷の貿易による利潤によった物だあることが実によくわかる。是非目を通してみて下さい。

「ガヴァネス4 」 については紙面が足りぬので省略


  1. 度会好一.ヴイクトリア朝の性と結婚.中央公論社(1997) []
  2. 高橋達史.ヴイクトリア朝万華鏡.新潮社(1993) []
  3. D・ダビディーン松村市橋共訳.大英帝国の階級・人種・性.同文館(1992) []
  4.   川本静子訳.ガヴァネス.中央新書(1994) []

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