第188回 色々な型の本と色々な3D Book

`01.9.15(土)寄稿

前回ふれたように,私は8月30日に「本室蘭小学校開港百二十周年」の記念行事をして、全校生徒200名余と,父兄に「読書」について講演した。年端もいかぬ子供達に「読書の効用」を語るのは、甚だ難事であることは容易に想像のつく所であるから,私はこむずかしい話はヌキにして、子供達が見たこともない、聞いたこともない,,,つまりは,この世にあろうとはおもってもいにであろう「物」を見せ、「話」を聞かせて,この世が、つまりは日々の生活が、どれほど面白いものやら話にとりまかれていて、その委細に気付くことが出来る物はそれらを細部にわたって楽しむことが出来るのだ、と言うことを伝えようと試みた。

のっけから人世哲学めいた話し振りになったが、何のことはない,子供達の耳目を驚かせようと思った訳だ。そこで色々工夫したものの中から2.3記してみることにして,,,(順不同)

先ずは、アン.カット本 この書物,雑誌などで小口(こぐち)を切っていない本を言う(小口とは,洋装本の背を除いた部分,即ちページが切ってなくて袋状なのでペーパーナイフで,上下それに左右のどちらかを切らぬと,読めない本をさす。これは外国の本に多いのだが、この型の本を読む時になくてはならぬ小道具は,ペーパーナイフだ。そこで私は愛用の,イギリス製でセイウチの牙で作られたと言う握りの部分がフクロウの型をしているペーパーナイフを子供達に見せた。ペーパーナイフ自体を知っている子供達は反応からして皆無に近いようであったが,頁(ページ)が切られていない本を見るのも,無論初めての様子であった。

これに対する子供達の反応は,,,

◎ フクロウのナイフは肉を切ったりするのではなくて、紙を切って本を読むためと聞いて私はびっくりしました。(4年生)

◎ あのナイフでほんとに本を切ってみたかった (4年生)

と言うもので、まあ見せた甲斐があった訳だ。この時みせたのがプルースト詩集で絶版)プルーストとは「失われし時を求めて1 」の例のプルーストである。

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次に見せたのはまん丸い本で、最初は、丸いコースターの形をした本,,,これはビールのことばかり書いてあるほんで、これに引っ掛けて書型がコースターになっている訳だが,,,を思ったが、待てよ、ビールはわかるとしても子供達にはコースターはわからぬかも知れぬと思い直して、まづは、世界のビアコースターをあつめた「世界のビアコースター2 」を見せたが、もう一つおまけとして、これ又私が愛用するところのウイーン製のジョッキを見せた。

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これは、胴体にフクロウの親子が,3羽浮き彫りになっている物で、日本の大ビン1本分がすっかり入る容量のもので,おまけに錫のフタ付きである。

このフタの用途は、誰しもが思いつくであろうように、一つは泡が消えぬように、一口飲んではいち早くフタをする,,,北海道弁で言えばツッペをカウ訳だ。もう一つの用途は、実は、馬糞風をふせぐための物であると言う。     つまり、ウィーンや、ミュンヘンは、往事、馬車が沢山行き来していて、動力たる馬の方はバケツをケツペタに下げていればともかく、大方は遠慮なく,もようした所でいたすとわけで、それがかわいて,風と共に去りぬ、イヤ飛び来りてジョッキの中に入る,,,ではまずいので、フタをしめしめ気分もシメシメ飲むと言う訳で、これを聞いた生徒達は、◎ 次に気になったののが、ふたつきのビールジョッキです.あの工夫はおもしろかったです。であって、これももって来た甲斐があった。

思えば大学一年の時、銀座は「ミュンヘン」なるビアホールで、初めてフタつきジョッキでビールを飲んで感激したのが、いまだに尾を引いて、大ビンを一本を、毎日こうして空けている訳だ。

かくして、コースター/ジョッキ/ビールの本/=丸い本と進んで次に紹介したのが「相撲丸豆本シリーズ・写楽相撲膝栗毛3 」これは謎の絵師「写楽」と相撲絵との関係を論じたもので、中味は土俵の型をなぞって丸い本となっているのです。これ350部限定本の149番という代物。

次は、いわゆる「飛び出す絵本」=仕掛本=pop  up  book(ポップアップック)で、この頃はこれを 3D Book と言う。このDは=Dimensionで、つまり3次元の本と言う訳。

これを色々見せて行ったところが、その反応は、

◎ 三角の本から絵が飛び出して来て、すごかったし、楽しかったです(2年生)

◎ ○本や△本や□本は、初めて見たから、びっくりした。ちょー長い本もびっくり、世界にはたくさんの本があるなあーと思った(6年生)

私は他に、ふくろうの握りのステッキも見せたのだが、それについては

◎ あと僕がすごいと思ったのは、ふくろうの杖です。なんですごいかというと、杖のふくろうがキレイでした。すごくキレイでした.本よりすごかったです。それも印象に残りました。(2年生)

で、これはパリで250年も続くステッキ専門の「アントワーヌ」なる店で昔買ったもので、見せた私も嬉しかった。

「立ち上がる本・動く本4」はタイトル通り3D Books の優品を集め解説したもの

てな訳で、この講演会成功したとみてよいようだ。

  1. プルースト.失われし時を求めて.筑摩書房(1992) []
  2. 向田直幹.世界のビアコースター.美術出版社(1988) []
  3. 小島貞二.写楽相撲膝栗毛.丘書房(1986) []
  4. 横山正.立ち上がる本・動く本.六耀社(1989) []

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