山下敏明さんのあんな本、こんな本

第204回 最近気になり,語りたいこと

`02.7月16日寄稿

「〜(ナニナニ)」について是非共語りたい事柄が4つも続いたので、順不同に行く。①/知里真志保(ちりましほ1909〜1961)登別に生まれ、東大卒、北大教授、アイヌ言語学研究に尽力、大著「分類アイヌ語辞典」は未完。真志保は、大量のカードを遺して死んだ、死の床で、彼は最後の奥さんだった萩中美枝に「俺が死んだら、北大ばっかりでなく、あちこちのだいがくから和人共が、カードを借りたいと言ってくるだろう。しかし、絶対に貸すな。貸したら帰って来ないから、絶対に貸すな」と言って死んだ...

大体、こんな事を萩中が、痛恨の思いで書いた文章を読んだ事があったので、私は、初めて山田秀三に会った時に「言いにくい事かもしれぬが、本当の所はどうなんだったのでしょう?」と聞いた。萩中の悔いは、真志保の言にもかかわらず、貸してしまったことの、悔いなのだ。山田秀三は、東大出の内務官僚で、後に幌別のソーダー会社の社長になり.傍ら、真志保と共にアイヌ語地名の研究をした男だ。

私の問いに、それまで、豪放に(と見えたが)あれこれしゃべっていた山田がまゆをひそめ〜「イヤー、何かとありましてね」と言っただけで、あっち向いてホイ...となったのは、色々あったと言うことなのだろう。

真志保は旧制の道立室蘭中学校つまり、現栄高校の出身だから私は後輩だ。

それで、私は、室工大在任中の30年間、折に触れては.真志保と姉の幸恵について語ることを試みた.例えば、新入生相手のオリエンテーション(入学指導)などの時にである。

私の言い分は、“室工大に学んで、理工学系の分野に強くなるのはあたり前のことで、バラの樹にバラが咲く如く、何の不思議もない。そこで、諸君、その他の点で室工大に学んだと言う証に、知裡姉弟について学んで行ってくれ。日光観ずして、結構と言うなかれ!!にならうならば、知裡姉弟を知らずして、室工大に学んだと言うなかれ!!”と言うものであった。

声高にこう語りたくなるには訳があって、毎年毎年入って来る栄高や清水高の卒業生が知裡の名を丸っきり知らぬからだ.これは今でも変わらぬ。一昨年だったか、胆振の高校図書館大会に呼ばれての講演で、出席していた、6人の栄高校生に聞いたら、全員知らぬ因みに、八木義徳は2名がしっていた。又因みにジョンバチエラーとバチエラー八重子について、伊達,ソオベツ両校の生徒に聞いたら、全滅だった。

どうして、各地、各校で郷土の偉人にいついて教えようとしないのだろうと素朴な疑問が湧くばかり。

ところで、幌別にある「知里真志保を語る会」(会長上武やすこ、事務局長、小坂博宣)が素晴らしいことをした。

真志保の姉幸恵(1903〜1922)が遺した名著のほまれ高い「アイヌ神謡集1 」の初版を復刻したのだ。岩波文庫本他の異同について、書いているのは.北道邦彦先生。19日北道先生の講演を含む、会合があって、同会員の私も行って来た.この本是非に読んで見て欲しい。人類最上の詩魂と言うべきものがうかがわれるものだからだ。八木義徳に関しては、先日、文学碑が室中栄高校のOB会たる「白鳥会」より市に寄贈された報じられていたが、同じく、卒業生の知里に対しても、同窓生の目が、今少し注がれぬものかと私などは切に思う。

②/コスタ・ガブラスが来日した。三部作「Z」「告白」「戒厳令」の名監督だ。今度は最新作「アーメン」が完成しての来日だ。「アーメン』の原作は、ロルフ・ホーボットの戯曲「神の代理人2 」だ。この戯曲程、緊張して読み、かつ.多大の感銘を受けた戯曲は私には他にない。

ナチスのユダヤ人虐殺を完全に知っていながら、政治的判断から、無関心を装いかつ沈黙し、つまりは反対運動を起こさず、非難の声明も出さず,,,と言う教皇ピウス12世の非道を暴いたもので、この戯曲の素晴らしさは、一切が虚構にあらずして、全て歴史的文書によって、と言う事は、事実によって書かれていることで、せりふの一つ一つが出所のあるものなのだ。

北海道弁で言うならば、人間の役目を放棄した、この糞にもならぬ男=教皇を貴方なら、許すか、許せぬか??

コスタガブラスが一番影響を受けた外国映画は、ジョンフォードの「怒りのぶどう」と黒沢明の「七人の侍」だと。いいね。

チリの軍事クーデターで、アメリカから行っていた作家志望の息子が、行方不明になり、それを探しに父親が...と言うジャックレモンがカンヌで男優賞をとった「ミッシング」もコスタの作品だが、これなぞももう一度観てみたい。

〜③/月1日(日)まで、目下,函館の“道立美術館」で「極東ロシアのモダニズム1918〜1928−ロシア・アヴァンギャルドと出会った日本ー」展をやっている。雨の中.往復6時間かけて行って来た、イヤ、疲れた...と言っても当方は助手席で、寝ているだけだが、※アヴァンギャルド=前衛(仏語)

札幌の「ゴッホ展」もこの前に行って来たが、もう、押すな、押すなの大盛況、ところが、このロシアの方は、私入れてたったの4人、どうなっているんだろうね理由は、私に言わせれば只→ゴッホを知っている人は多いが、こっちは知らない人の方が多いからだ。無知は関心を生まぬ。

私は1973年、平凡社刊のアントニオ・デルグルチョの「ロシア・ソヴィエトの前衛珍画」でこの運動を初めて知って、中で、ヤウレンスキーなる画家が一番好きだが、今回の展覧会には、影響を受けた、或いは与えた日本側にも目が配られて、とてもよかった。図録は¥2500最新の研究成果満載の素晴らしい図録だ。「ゴッホばかりが美術じゃないとおもうがなあ」「ロシア・アバンギャルド3

〜④/ビール王国ドイツに、新潟県の杜氏(=酒作りの職人)達が行って、「酒造りの唄を歌ったら、酒造りの心は同じだとえらく受けた...との記事が出た。ホンヤ.マーとこの本出してみた次第.いい話だなあ。「日本の酒造り唄4



  1. 知里幸恵.アイヌ神謡集.岩波文庫(1978) []
  2. R・ホーホフート.神の代理人.白水社(1964) []
  3. 水野忠夫.ロシア・アバンギャルド.岩波書店 (1996) []
  4. 宮内仁.日本の酒造り唄.近代文芸社(1997) []

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