山下敏明さんのあんな本、こんな本

第212回 羊年に因んで、大人の玩具

`03.3月寄稿

室蘭民報のY記者は、非常に聞き書き、つまりインタビューの上手な人で、かつ、正確な人だ。私自身13.4年前に最初に話を聞かれてからこっち、何度かインタビューされたが、その結果、新聞に出る記事には、いまだかって一度たりとも、“こんなこと言ったかなあ?”とか“こんなまとめ方じゃこまるよ!”とか言った思い、不満はもったことがない。いつだって、上手にまとめたなあ、うまいもんだなあ!!で、感謝するのみだ。そのYさんが電話をよこして、今年のエトに因んで「羊」の話を聞きたい。...と言う。私は快諾して、自宅の本棚から羊に関する本を何点か取り出し、サービスの意味を込め、かつ、張り切って、年来大切にしている「羊柄」の手織りのスウェーターを着てYさんを待った。そして、その聞き書きが去る1月26日の朝刊に「もっと羊が楽しくなる」と題して、文芸欄に大きく出た。

一読、又しても“うまいもんだなあ”と我ながら面白く読み、そのしめくくりにはことの外、感じ入って、再度“うまいなあ”と内心つぶやいた。

ところが、これが“運の尽き”ではない“事の始り”であった...。と言う話に入る前に、まあそのYさんの絶妙の「しめくくり」を再録するので、読んでもらいましょう。そこには私がおまけにつけた特ダネ(?)が次の如くにまとめられている。

“〜そんな羊にもう一つ、人間の欲深さを象徴する利用法がある。死後、目をまぶたごと周囲からくり抜き、目玉を捨てた後の「輪」を乾燥させ、女性を喜ばせるための性具として男性器に装着するのだとか、効果は絶大との事だが、死して瞑目(めいもく)もできないなんて...。ああ合掌ー。”

以上だが、これが何故“事の始まり”であるかと言うと、このインタビュー記事を読んだ人が、これ以後私に会うと、老若男女共、複数つまり連れがいると聞かぬが、これが単独でいると、必ず声をひそめて“あれ本当?”と問うのである。

本当もなにも、嘘もへちまも...私はかくも大勢の人が、かくも清らかーな話題ないしは主題に、かくも真摯(しんし=まじめでひたむきなさま)にして、秘めたる探究心を持っていることに、いたく感心し、内心つぶやいた。“これは一つ答えずばなるまい!”

そこで私は声をひそめることなく、聞かれる都度、“微にいり細を穿って”説明してきたが、いくら私とて、生身の身体、生々しいテーマを繰り返すのにはちょいと疲れた。

じゃによって、ここに纏(まと)めて、つまりこれから聞いてくるだあろう人と、既に聞いたけれども今一つ詳しく、なぞと望む人のために、一挙公開に踏み切る。...と言う程のものではないけれどね。

と言う訳で、この「羊眼」ないし「羊の目」と呼ばれるものは確かに存在した。何のためにか?言わずとも知れたこと、より高い快感に女性を導かんためにだ...そうな。

しかし、この偉大なる(?)発明品は、昭和30年に発売禁止になり、和合リングに代わった。何故って??。I    don`t    know!!ではあるけれど、昭和31年に制定された「売春禁止法」に関係あるのかな?とか、動物愛護団体からの干渉かな?なぞと思ったりはしている。

それはともかく、発売禁止のあとは山羊の目の代用品が出回った、と物の本にはある。同じウシ科とは言え山羊もとんだとばっちりだった、イヤとんだ目に遭った訳。

又してもそれはともかく、使用の効果は(?)ともなれば、これが今流に言うと、チクチク感があって、大場盤雄著「十二支のはなし1 」(1988/ニューサイエンス社刊/¥1,236)には、「いかなる女性も羽化登仙は必定」とある。ナニ?この4文字ナント読んで、ナンの意味か?だって??「うかとうせん」と読むが、意味くらい自分で調べてたもれ。

まあ、話はこれで一段落したようなものだが、私は司書であるからして、この主題についても、こんな本もあるのだよ、との意味で文献的な話は一応しておこう。

「羊眼」のようなものを「淫具」と呼ぶが、これは当節言う所の「大人の玩具」のことだ。そして、それは江戸の昔からあった訳だが、それらについての名著が、中野栄三著「珍具考2 」(1951/第一出版刊・絶版/限定500部)だ書名が既に秀抜だが、これ500部限定のそれこそ珍本だぞよ。

これに勝るとも劣らぬ名著が、母袋未知庵著「川柳四目屋攷3 」(絶版/限定300部)。これ300部限定、ていか10,000という秘本。因みに「四目屋(よつめや)とは、江戸時代のポルノ・ショップのこと。

さて「羊眼」もそうだが、実態のよく分からぬものに、緬鈴(めんりん)なる珍具がある。これ俗に言う「りんの玉」のことだが、これが何かを探ったのが「南島の人類学的研究開拓と弥生時代人研究の業績」なる著述で、昭和53年度の朝日賞を得た人類学者・民族学者の金関丈夫著「お月さまいくつ4 」(1980/法政大学出版局刊/¥2,400)だ。

興味のある人は、断固起ってこれらの名著に向かうべしとは言っても本がないのが「隔靴掻痒」!!

最後に一つ聞いていいかって?。どーぞ〜!

何?チクチク感て、どこがチクチクか?って??。

何をおっしゃる、このカマトト、いや、かまチクわ!!

てな訳で、聞き終わっても全体かゆい所に手が届かぬままだ、と不満の方には、「そりゃそうだ、かゆいと言う字は《疒》に《羊》と書くのだよ。羊の話はかゆくて当然」と答えて、痒いままでさようなら。又いずれ!!

 


  1. 大場盤雄.十二支のはなし.ニュー・サイエンス社 (1980) []
  2. 中野栄三.珍具考.第一出版社 (1951) []
  3. 母袋未知庵.川柳四目屋攷.太平書屋 (1983) []
  4. 金関丈夫.お月さまいくつ。法政種出版局(1980) []

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