第223回インカ文明と「インディアスの破壊についての報告書」


`04.2月寄稿

「同じく、これも断言するが、私は数えるのも面倒な程、多くの場所で、スペイン人たちが、手当たり次第に、ただ気紛れからインディオ達の男や女の手と鼻と耳を削ぎ落としているのを目の前で見た。又私はスペイン人達が、数匹の犬をけしかけてインディオたちをずたずたにさせようとしているのを見たし、実際に大勢のインディオが、犬に苦しめられているのも、目撃した。同じく、私は多くの家や村が焼き払われているのも目にしたが、その数は非常に多くて。正確には言えないくらいである。

又、スペイン人たちが、乳飲み子達の腕を掴んで、力一杯遠くへ投げたり、そのほかなんの目的もなく、様々な暴行や残忍な行動を働いたりしたのも事実であり、私は、それらを、目の当たりに見て愕然(がくぜん)とした。

さらに、私はスペイン人たちの数限りない非道な所行を目撃したが、いちいち述べれば日が暮れてしまうであろう。」

ここに引用した文章の書き手は「私こと、フランシス会士、マルコスデ・ニサ[?〜1559.ニース生]は、ペルー地方における同修道会所属の修道士の代表であり、初めて、キリスト教達がこの地方へは入り込んだ時に彼らに随行した最初の聖職者の1人である。」 と言う人だ。彼は次いで又言う。

「私はそこで目撃したいくつかの出来事.とりわけ原住民に対して行われた措置と征服(コンキスタ)について述べようと思うが、それらはすべて真実の出来事である。」こうして、彼は、最初に、引用した報告を含めた文章を、正しく日が暮れてしまう程書き続けたのであるが、これらの文章を載せた報告書が、ラス.カサス著染田秀藤訳「インディアスの破壊についての簡潔な報告1 」なる一書で(岩波文庫.`76刊¥500)その中の「ペルーの数々の広大な王国と地方について」に上記の報告はある。

スペイ人の聖職者にして、歴史家たる、バルトロメ.ド.ラス.カサス(1484-1566)は。「インディオの自由と生存権を守るため精力的に活動したが、もちろん、こうした動きを嫌う人、憎む人は当然いて、その結果、ヨーロッパ人の征服行為に絶対的な不正を見てとり、被征服民族の人間としての権利を擁護しつづけたラス.カサスの報告は、歴史から抹殺されることになる。

このキリスト教徒スペイン人の罪を告発した本を我が国に紹介しようと力を尽くしたのは、作家の故堀田善衛だった。

ドイツでは、詩人H.M.エンツェンスベルガーが、今から220年程前になされていたカサスの独訳の本を発掘して、これを世に広めた。

さて、ラス.カサスの報告に盛られた話の数々は妄想からの与太話又は法螺話であるか?.そんなことは断じてない。

ラス.カサスの本に書かれた略奪の数々が、本当だと納得するのは、皮肉なことに、スペイン各地の寺院、とりわけ天を指して起立する大聖堂の中に於いてである。

それらの大聖堂の中にあるキリストの像であれ、諸聖人の像であれ、調度品であれ....その馬鹿馬鹿しいまでの金ぴか振りキンキン.キラキラ夕日が沈む...どころではないギラギラの金メッキの数々...見上げる者の目に、それは崇高と写るか...悪趣味とうつるか?

少なくともカサスの本に一度でも目を通したことのある人間にとっては、それは、人間の征服欲、物欲の醜悪極わまる具現としてしか見えない。よくもよくも、こんなにもかっさらって来たものだ。北海道方言で言い直せば、ガメテ来たものだ。

ところで、突然ラス.カサスに言い及んだについては、理由がある。この正月早々。このペルー、しかも、その歴史的遺物として、著名度抜群の「マチュ.ピチュ」「ナスカの地上絵」「チチカカ湖」などを観て来た人の土産話に刺激されたのだ。遠くペルーくんだりまで(と言いたくなるが)言って来たのは当「ふくろう文庫」図書館サービスに期待する会の世話人たる.安藤薫さん。いやまっことタフなもんだ。

「マチュ.ピチュ」は1911年、H.ビンガムによって発見されたクスコ地方にあるインカ時代の都市遺跡。標高2500m余の急峻(きゅうしゅん)な山の鞍部にあるこの都市で、安藤さんは激しい頭痛、つまり高山病に悩まされた由、一歩進んで「ハー」二歩進んでよろめいて「ヒー」の連続で、2.3時間置きに宇津救命丸、六神丸。龍角散、座薬、ケロリン、バファリンなどなど、を飲んでも全然効かなかったと言う。当たり前のことに現地のガイドは平気の平左衛門だったそうな。

私これを聞いて、室工大在任中に、大連からの留学生、金(じん)さんに聞いた話を思い出した。何でも、チベットに派遣される役人の細君が妊娠すると、急いでふもとの町に降ろす由.そうでないと、胎児の心臓が破裂するのだそうな、しかし、元々居住しているチベット人の胎児にはそうしたことは起こらないと。不思議なるかな!!

安藤さんの土産話の圧巻ハイライトは「ナスカの地上絵」これは「ナスカ文化(100〜800)」のシンボルみたいなもので、直線、ジグザグ線、三角形、台形、巨大な動植物を地上に描いたもの。そこで再履修の趣でかって読んだ何冊かの本を並べてみた。騒がしいまでにうるさい司会をする、楠田枝里子の本はなぞの地上絵の研究と保護に人生をささげ`98年6月に95才で世を去った、マリア・ライムの半生を追った好著だ。「ナスカ砂の王国2

ウッドマンの本はナスカの人々が、空を飛んだであろうことを実験考古学の試みの記録だ。

「ナスカ気球探検3

ヴェズバールの本は、現在までの諸学者の説を知るいい本だ。「ナスカの地上絵4

イズベルの本はたったの64ページ、自分で読んで判断して、ちょうだい。天体観測や占星術とも関わりがあるのでは(?)とみられながら、なお解明さ れナスカの地上絵.それにしても、安藤さんよく行って来たねえ!!

彼女の巧みな土産話のせいで、私も終始同時体験、つまり、同じく観ているような感じになった。これもひっきょう.我が愛するふくろうの夜の闇をも見 通す「ふくろうの目」(Owl`s Eye)であろうか。

4冊のナスカ関係の中3冊なしーとはあんまりだから1冊つけ足す。

ヘルムート・トリブッチ/渡辺正訳「蜃気楼文明―ピラミッド.ナスカ.ストーンヘッジの謎を解くー5 」/工作社/`95/¥2,900


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  1. ラス.カサス著染田秀藤訳.インディアスの破壊についての簡潔な報告.岩波書店(1976) []
  2. 楠田枝里子.ナスカ砂の王国.文藝春秋(1990) []
  3. ジム・ウッドマン.ナスカ気球探検.講談社(1979) []
  4. ヴェズバール.ナスカの地上絵.創元社 (2006) []
  5. ヘルムート・トリブッチ.蜃気楼文明―ピラミッド.ナスカ.ストーンヘッジの謎を解くー.工作舎; 新装版版 (1995) []

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