第277回 近代日本の貧困と現代蟹工船ブーム

`08.9.11寄稿

「俺(おら)もう嫌(やん)だ」と言いたくなることは,人生に間まゝあることだけれども、それにしてもなあ。「もう止めます」で「ハイさようなら」と言われてもなあ,,,イヤ・ナニ「安倍」と「福田」のこと。あの態度じゃ,生徒会の会長はおろか、ホームルームの室長も勤まらんわな.その後に立ちも立ったりの5人,,,この世の中をどうしてくれるつもりなのか.早い話が,例えば身近も身近のパチンコ.今や推定200万人がパチンコによる多重債務で悩んでいる由。このパチンコ依存症、私の知り合いの,ナントカ小学校長までが、これにはまり込んで退職金までどうとかで,家庭崩壊しちゃったわ。ナニシロこのパチンコ業界の売り上げたるや年30兆円。これ、自動車産業、一般機会製造業に次ぐ売り上げの由。私が工大にいた時も機械に1人、数学に1人、「学校にいなけりゃ,パチンコや探せ」と言われた御仁が居たっけが、ナンニシテモ、後期高齢者が年金をパチンコに注ぎ込んでいると言う様は感心したもんではないのう。イヤ、今日はこんな話をするつもりでははなかった。

今日のテーマとしたいのは,小林多喜二とその他色々。と言うのも,目下,若者が置かれている厳しい労働状況(いわゆるワーキング・プアとか言う)の中で,小林多喜二の「蟹工船1 」が人気だと言う。

つい先頃、「この工船=光線=レーザーってわかるけど,カニって何なの?」と質問する女子高生の話を書いたことがあるが,今は皆、正確にカニコウセンを分かる時になったのだ。否応ナシにとは言え、いい現象だと言えるだろう。

このブーム海外にも報道されていて、例えばイギリスではロイター通信、ガーディアン紙、インデペンデント紙が一様に、世界第二の経済大国で、この10年間の構造改革の中で、多くの労働者に対する保護措置がどんどん廃止されていることに対する不満が増大していることの証明だ、と言った調子で解説されてい

シンガポールのストレーツ・タイムス紙も「蟹工船」」が「今日の日本のワーキングプアの窮状を鏡に映した様な小説」と書いている由.他にも中国しかり、韓国しかり。

ワーキング・プアだ、フリーターだと言えば、私がフリーターなる言葉を初めて聞いたのは、もう何年前になるか?.知人の息子が都立大を出て勤めずに、「これからフリーターだ」と言って云々と親から聞いたのだが、「妙なことが起きているんだな」と思っていたら、今日、このていたらく。

さて、そのフリーターや派遣労働者の若者達の間で読まれている「蟹工船」,,,それはそれでいいが、ここで紹介したい文章がある。はしょって紹介したいが、事の性質上、そうはいかぬ(ここで著者に許可をもとめて)、それは澤地久枝のもの。このブームについて彼女は...「あの時代は、人権なんてものが何もんかった。せれでもあまりの労働の過酷さに、死を覚悟して立ち上がった人達の話です.今も過労死するほど残業させられたりする、ひどい労働条件はある。しかし今は組合もストライキも会社側と交渉する事もすべて合法です。そういう権利を持っていながら、蟹工船にわが身をなぞらえるのは、矛盾なんです.(アンダーライン山下)読む事はいいけれど、かつて日本の歴史に何があったのか、今とどう違うのかは勉強しないと、小林多喜二が可哀そう。多喜二自身、警察で拷問受け、獄中死しているんですよ.今はごく人間的な要求を掲げても、その事で投獄されたり、殺されたりすることがないはずの社会に、私たちは生きている。それが、どれだけ日本の歴史の中で貴重な時代であるかということを、もっと若い人達は知らなきゃいけないわね。」これ談話で発表された(毎日新聞)ものだが、その時の見出しはこうだ。

「今も過酷な労働はあるが、要求掲げて投獄されない、もっと歴史を学びなさい」

まだ札幌で出てた「北方文芸」があった頃、事務方にいた(青山だったか、青野だったか)お嬢さんに誘われて、私は沢田誠二がガイド役をつとめた多喜二の文学散歩に参加したことがある.今思い出した。

さて、手塚英孝の名著「小林多喜二2 」が復刊された。これ、最初筑摩書房から出たが、私の持っているのはその後の新日本新書版(1971年刊)だ。久しぶりに出してみると,今井正の監督で山本圭と中野良子が主演した映画『小林多喜二」の半券が入っていた。

手塚で言えば,最近祥伝社からでた「小林多喜二名作集―近代日本の貧困ー」について,昔、伏せ字や削除されていた所が,皆復元されているが、それが手塚の業績によるとの断りがなくて,つまりは他人のふんどし式になっているのは,如何なものか?との指摘があることは,知っていてもいいのだ。

多喜二のついでに、今年没後70年を迎える槇村浩(まきむらこう)と没後50年を迎える徳永直(とくながすなお)のことも知らせておこう。

槇村は(1912-1938)は高知市生まれの詩人。代表作は「間島パルチザンの歌」なる反戦詩。この人を描いた大原富枝の評伝「ひとつの青春3 」と土佐文雄の小説「人間の骨4 」の2冊、今は絶版だが参考のためにあげておく。

徳永(1899−1958)は東京の共同印刷でのストライキを扱った「太陽のない街5 」が代表作.戦後の作品に、「静かなる山々」(未完)がある。これも今は絶版だが書影のみあげておく。この2人の作品は、当図書館にある「日本プロレタリア文学集」で読める。

暑さにめげず、固い本読んで、頭しゃっきりさせようぜ!!


  1. 小林多喜二.蟹工船.新潮社; 改版版 (1954) []
  2. 手塚英孝.小林多喜二.新日本出版社(2008) []
  3. 大原富枝.ひとつの青.東邦出版社(1974) []
  4. 土佐文雄.人間の骨.東邦出版社(1974) []
  5. 徳永直.太陽のない街.主婦の友社(2008) []

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