山下敏明さんのあんな本、こんな本

第279回 文字の持つ功徳「代償行為」

`08.11.21寄稿

田母神なる男が、空幕長と言うエライ地位にいた時に,懸賞論文で「我が国が侵略国家だと言うのは濡れ衣だ」と主張して,物議をかもした。この男は既に統合幕僚学校長というエライ地位にいた時に「統幕学校講座」なるものを作って、これは「歴史観、国家観」を講ずるもので,そこで講師を勉めた6人の中5人が明らかになり、その中3人が「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーで、大学教授だったそうな.この会は扶桑出版の中学歴史、公民教科書を主導した会で,会長は八木秀次高崎経済大の助教授だが,副会長は藤岡信勝拓殖大教授.この2人が内部対立を起こして2人共辞任したが、その時の八木の弁は「事実上の解任で,藤岡氏に私が追放された」だった。

この八木が今回の5人の講師のなかの人で、あと2人の大学関係者は,福地惇大正大学教授と高森明勅拓殖大学客員教授。福地は「つくる会」の副会長だった男。

高森は今PHP文庫で出ている「歴代天皇事典」の著者だ。ついでに言うと,作家の井沢元彦も5人の中の一人で「つくる会」の賛同者なのだそうな。

も一つついでに言うと、一寸昔、八切止夫(やぎりとめお)なる男がいて、例えば「信長殺し、秀光ではない」とか「上杉謙信は女だった」を書いて.これは「八切史観」とよばれて、結構読者もいて、現に全12刊の「八切史観」も出ているが、私が思うに、この八切は、一種の「トンデモ男」で、その書くものも「トンデモ本」だ.そして又私は井沢なる男もこの部類だと思っているのである。

それはともかくとして、田母神問題が起きてから、自衛隊幹部連中などから「上がこうでは下は浮かばれない。折角お国のためにガンバッテいるいる自衛隊員達が可哀想だ。自衛隊のイメージが又これで悪くなる」と言った調子の嘆き節が異口同音に出た.誠にゴモットモと同情せざるを得ない。

ところで、次元が全く違うので,お国の大事とこんな事を混同するとは何タルコトかと呆れる向きもあるやも知れぬが,私に言わせれば、それを承知の上で,可哀想になあーと思った自衛隊員が1人いる。田母神と違って全く無名の男だが,,,,11月上旬の報道によると,カメラつき携帯電話でズボン姿の女性の「尻」を撮り続けたからとて,「北海道迷惑防止条例」違反(みだらな行為禁止)の罪に問われた旭川市の自衛官(31歳)の上告が棄却されたと言うもの。何でもこの自衛官、ショピングセンターで27歳の女性の後を40mついてまわり,その女性の尻をけい1回撮影したと言うもの.5人いた裁判官の中,一番エライ(?)裁判長は,「ズボンをはいた尻の撮影には卑猥性はなく,被告は無罪」としたが,残る4人は「女性を羞恥(しゅうち)させ,不安を覚えさせるもの」とて,旭川で一審は無罪だったが,二審の札幌高裁は罰金30万円の有罪となりーこれを上告した所、最高裁がダメを出したもの。

私の「可哀想だなあ」と言うのはここから始まるので、この自衛官,きっと,何かと「ウッケツ」否「ウックツ」してたのだろう.それが,フラフラとこの行為になったのだろう。もともとこの男、女性の尻が好きであったに違いない。そこにとてつもなく素敵な女性の尻が現れて,,,?

ここに「カタルシス」なる言葉がある.ギリシャ語で,「浄化」の意味を持ち,アリストテレスの「詩学」に出た言葉だ.意味は日頃心にうっ積している感情を放出させて,心を軽快にする事,つまりは、すっきりさせることだ。私がこの言葉を知ったのは遠い昔の大学生の時で、その時の記憶で言うと、「カタルシス」の本義は「へどを吐く」ことで,つまりは,胸のムカツキがすっきりすることだった筈だ。

だから精神医学の方では,抑圧されて無意識の底にとどまっているコンプレックスを外に出させて、その原因は何かを明らかにして,スッキリさせる技術を指して,「カタルシス」療法とも言う。

そこでだが,私が思うに,この男は尻が好きだ,尻が看たい,訳で,尻を追った訳だが,その前にこの男が,「尻」にたっぷりとお目にかかる機会があったれば、こうした,他人迷惑な行為は起こさなくてもよかた筈なのだ。ではどこでたっぷりとお目にかかれるのか例えば「お尻とその穴の文化史1

例えば「えっ?!絵?!2 」だ

世の中にはまだまだ「尻」に関する「傑作」がたくさんあるが、まあこれでいいだろう。こうした本によって,世界中の美術や文学に現れた尻の傑作を知ってれば、如何な尻に合おうとも、余裕シャクシャクでいられる筈なのだが,,,,。

つまりはこうだ.ギリシャの昔、人々は悲劇を見る事で、その殺傷の場にみなぎる殺意や害悪を見る事で、つまり、他の人が目の前で、自分が心の中で思っているかも知れぬ事をおかすのを見ることで、他の人が自分の代わりにやる「代償行為」がそこで行われることを見ることで、自分の心の中のモヤモヤをすっきりさせた。これが文字の功徳のと言うものの一つだ。となれば、尻の文化史やら、写真集やらも、既にそこに自分の欲望が集大成されている訳で、,,,早い話しが、現身(うつしみ)の尻なぞ追わなくてもいいとなる筈だと私はおもうのだが。こうした「代償行為」となる「本」を知らなかったとは可哀相だなあーと言うのが、私の気持ちだ。

話し変わって麻生首相、連日暴言を吐くは、字は読めぬは,,,この字読めぬと言うのは、A,マンガばかり読んでいるからで、B、本来字が読めぬのでマンガしか読まぬので...のどちらかで、これは読書を勧めるときの一つの戒めとして子供を諭すのに充分の資料だ。

それはともかく、この人の一つ一つに反論するための本をあげると、「あんな本・こんな本の」の10回位はできそうでーと言う訳で、ここでは二つにしぼる。一つは「朝鮮人が苗字をくれと言ったのがそもそもの始まりだ」なる失言に対しては,「創氏改名3

も一つ、野中某に対して「部落出身の人間が大臣になるってのはどうかな」と言った趣旨の暴言に対しては,「対論 部落問題4 」の本を読めと言いたい。

何にしても、これだけ字は読めず,歴史知識はおろそかで,となると,この人本当に「学習院大学」出てんの?と言いたくなる。或は,この大学、学力関係なしの,コネ入学の所なのかな。

(註)「あんな本・こんな〜」124、290回でも差別問題を取り上げております。


  1. J・ゴルダン+O・マルティ著藤田真利子訳.お尻とその穴の文化史.作品社(2003) []
  2. ジョンカーセル.えっ?!絵?!.芸文社(1996) []
  3. 水野直樹.岩波新書(2008) []
  4. 組坂繁之・高山文彦.対論 部落問題.平凡社新書(2008) []

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