第280回 中国、江戸の性文化

この「あんな本,こんな本」は、最初北海道NTTに頼まれて本の情報を全国に発信したい云々で、平成3年から始めたもので、私の方では通算280回となるのだが、途中NTTが室蘭から引き上げた頃、私の前の館長,久保さんが『ひまわり」を出すから,こちらに欲しいと言うことで、「ひまわり」に転載したのが今お読みのこれで、こちらの通算NO.は今回で96回となる。

さて、12/16に久保さんが現れて,来年の新年号は年内12月26日に作っちゃいたいので,原稿を12/24までよこせ、と言う。年明けは皆退屈しているから,そう言う話がいいーと言う。

そう言われてもなあ、大体,牛は色っぽくない。土台、中国では(私の記憶に間違いなければ)丑女と書いて,意味は醜女(しこめ)=ブスのことだ。日本では「色の白いのは七難かくす」と言うが,中国では確か『色の白いのは百人の丑女に匹敵する」と言う言い方をする筈で、まあ、いずれにしても色っぽくない。

弱ったなあと帰宅して、一酌後、それでも書庫から「牛」の本を18冊ばかり取って来て見てみたが、まあ期待通り(?)そのての話は出て来ない。そのうち(1)1 の本でひらめいた。この本、著者は東北大学名誉教授,出版元も東北大と、いかめしい本だが、その第3章「牛の用途」の第6節「牛の体から得られる多様な製品」の2「化粧品からフィルムまで多様な利用」の中に、色っぽい話がある。「あっ、これがあったな」と思い出したところで、この話題で書くことに決めた。もっとも久保チャンの強制で,私自身は渋々であるけれどもーであるぞ。

著者は先ず、「角は江戸時代”張形”」の材料にーと見出しをつけて「又は牛の角は,かつては”張形”の材料として使われた。張形とは男根に擬して作られたもので、すでに鎌倉時代には存在し、使用されたという」と書き、材料として、「べっ甲製が高級品であった。牛や水牛の角はべっ甲製よりずっと安価」として、水牛の角が重用されたらしいのは、和牛の角より表面に凹凸が多かった故であろうか」と加え、「牛角製のものは内部をくりぬいて薄くしてあり、温湯に浸した綿を入れたり,湯や温い灰であたためて用いた」と足す。そして「用いた女性は後家や大名の奥方、あるいは大奥に仕える女中達などである」として、その情景を詠った川柳を紹介している。著者は大学教授であるからして、最後はいささか固くしめる。曰く「筆者は残念ながら実物を見たことはない」。とここまで書いて「用いた女性は〜」に引っかかった。と言うのは、某紙の書評に取り上げられた最新刊の「江戸の下半身事情」永井義男(祥伝社新書)には、第4章の「江戸発“性”の事件簿」の中に、「張形で失神老人」との見出しで藤沢なる老武士が、自分はあらゆることを経験してきたが、只一つ「男色の官能」は知らない・・・と言って、今更、この歳になって念友(ねんゆう=男色の相手)を探す訳にはいかない。どうすればよいのか・・・つまり、この武士はオカマを掘って欲しいのだが・・・そこでこの武士が思いついたには「張形」を自分の肛門に挿入すればいいのだ・・・で、この老武士は張形を購入して、ある春の日、縁側に出て・・・とここから引用を始めると、「張形をそろそろ肛門に挿入しようとした。ところが高齢だけに足腰が弱っている。腰を屈めて無理な体勢をしていたため、思わずよろけて、ドスン縁側に尻餅をついた。はずみで、張形が勢いよく中に入ってしまった。藤沢はその強烈なる刺激に、“ギャッ”と叫ぶなり,悶絶した」となった。因に著者永井は東京外語大卒の作家で1997年「算学奇人伝」で、第6回開高健賞受賞と言う実力派。つまりは稀ではあるけれども、男性も使った訳だ。出典は江戸町奉行,根岸鎮衛著の「耳嚢」なる有名な古典。この古典、鈴木棠三の注付きで、平凡社から出ておるぞ。

さてこの辺で、読者の中には、或は「何を先程から、不謹慎なことをグダグダと〜」と怒りだす仁もおるやも知れぬ。そこで、この話は何も不謹慎ではないのですよ、ちゃんと、正々堂々と論じてしかるべきものですよ、と言うことをば分かってほしいために、未公開の浮世絵資料を渉猟して、世界に類を見ない張形文化の深層に迫る江戸文化論の快著と銘打った(3)を紹介しておく2 。著者は着物姿でテレビに登場する法政大学教授田中優子。中味については読めば分かるから、解説は止すとして、この本、同じく着物姿で売った(?)けど、死んでしまった杉浦日向子が絶賛していた本だ。この辺で、再度(1)に戻ると、「〜江戸城大奥には御殿女中が約1,000人も勤めていたという。建物の部屋数も100近くあり、長局と言った。この長局は将軍以外の男子禁制で、女中は一生不犯を強いられた」とある。不犯とは男女の味を知らずに終わる訳で、殺生なことよ、であるが、これが事中国では?となると、同著に「秦の始皇帝、後宮3000人のうち、楊貴妃ひとりを除いて,他は牛を使った」とある。そうかそうか?と一人で納得して、これを確かめておこうと、R.H.ファン・フーリックの大著「古代中国の性生活」を棚からおろしたが、何しろこの本500p余り、引用その他にはちょいと面倒だから先程の田中優子先生の絶賛する、(4)3 を使う事にして・・・第9回、秘具、小道具に「張形」の話が出て来て、中国では俗にこれを「角先生」と呼んだ由。そしてこの「角先生」は考古学上の出土文物の中にも出ているそうで、最古のものは漢代の中山靖王,劉勝の墓から出土していると言うから、まあ日本と言わず中国と言わず、皆いたしてた訳だ。

ところで、中国には女性が一人で楽しむ時に使う「美人椅子」なる木製の肘掛椅子がある。女性が座って、肘掛けに足をかけ・・・と、あとは御想像を!!私はこれを、昔上海の「中国古代性文化博物館」で見たことがある。まあ「百聞は一見に如かず」であったぞな。ここまで書いて私しゃ、くたびれた。あとは(2)の本にまかせる。4
久保さん、この辺でいいかなあ??

では皆さん、今年もよろしく。モオー。


  1. 津田恒之,牛と日本人,東北大学出版会(2001) []
  2. 田中優子,張形―江戸をんなの性,河出書房新社(1999) []
  3. 邱海濤,中国五千年性の文化史,集英社(2000) []
  4. 蕣露庵主人,江戸の性愛文化 秘薬秘具事典,三樹書房(2003) []

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です