第282回 ひな人形と独裁者

平安時代の昔から,我が身のケガを「人形」に託して祓う行事がある。つまり厄払いの身代わりになってもらうものだが、その表れの一つが「流しびな」で,広辞苑には「3月3日の節句の夕方、川や海に流すひな人形。ひなはもともと〔ひとがた〕として神送りするものであった」とある。して又「神送り」とは「わざわいの神を追い払うこと」だ。

この流しびなで有名なのが鳥取で,私も40年も昔のことだが,鳥取まで出かけて,夕方、製作者の田中家を訪れて直接買ったことがある。この時は「民芸採取の旅」と言ってもいい旅で,鈍行列車でゆっくりと各地で1つ2つと買い集め,振り分け荷物で背負って帰って来たが,東室蘭に降りた時には、バス代ぐらいしか残ってないと言うぐあいで、それでも帰宅してから,旅での収穫をテーブルの上にまとめて,写真を撮った時には満足感いっぱいであった。その「流しびな」を

昨夜久振りに飾り棚から出してみた。と言うのも、午前中、室蘭民報の武田真理子記者の取材があって・・・それは,御前水の千葉さん方で,屋根付きの御殿に内裏びなが並んでいるのを飾っているのだが,これはいつの頃のものか?と言うもので、これを聞いた私は,数年前に倉吉市の博物館でみたそれを思い出しながら,そのことは①1  に出ているから、つでに「流しびな」をも出したらと言う訳だ。

さて「人形」から発生した「ひな」は、流し→立ちびな→すわりびな→段飾りと発展する。つまりは素朴なものから手のこんだものへと移って,更にその飾る段が,2段から7,8段へと豪華なものへと変化して・・・江戸の末には「・・・又近年豆御殿と名付け尺(30㎝)ばかりにて屋根ある物をり飾るもあり」となる。明治6年には太陽暦の採用で,太政官から五節句の廃止が命ぜられて「ひなまつり」が出来なくなった。しかしまあ,明治の末,大正の始めには,やはり日本の古き良き習慣として「ひなまつり」が復活して・・・で、千葉家のものはこの時期のもんだろう、と私は結論づけた。千葉家のものは豆御殿な訳だ。詳細は2月20日付室民の成田記者の記事を見られたし。

さて話し変わって,ヘベレケ大臣は出るは、一万円で買った「かんぽの宿」を6千万で売るロクデナシが出るわで、まあ日本という国も話題に事欠かぬ国で、とてもの事,他国の事迄、カマッチャおれんよ、と言った気持ちに襲われぬではないが、そんな事で好奇心をへこませていたんじゃ、漢字も読めなくなるぞよ・・・で,目下韓国ドラマ「第5共和国」を毎晩観ていて、これが中々観せる。「第5」と言うのは「全斗煥」が天下を取っていた時代の話で・・・、この時代をより分かろうと,②2 を読んでみた。

戦後直ぐの「李承晩」から始まって,歴代の大統領が各章毎に顔を出していて、「李承晩」なら「李承晩」だけを,他の人物に移らずに,各章次々とよんでいしまうと李承晩のおおよそが分かる,次に同じやり方で伊潽善をやっていくと、李とのつながりが一挙に分かってくると言う具合で、これはうまい書き方だ、とありがたく読んでいくと肝心要の「全斗煥」が出てこない。何故だと思ったら,著者の説明は、「〜韓国歴代の大統領のうち,崔圭夏、全斗煥、盧泰愚の3名の大統領については〜彼らが民主化後,光州事件を初めとする様々な点について裁判を受ける事になった関係上,客観的で詳細な研究がなされておらず、資料的制約が大きかったことが最大の原因」で、取り上げる事が出来なかった,云々 その欠如の部分は③3 で補える。光州民主化の鎮圧を最大のものとして数々の弾圧をくりかえし、ヤミの献金をすべて青瓦台で直接うけとり,最後には特別委員会の席で野党議員からコップの水をぶっかけられーと決してほめられたものではない生涯を送ったこの独裁者・・・・イヤハヤ・・・DVDの方はあと5巻残っている。

独裁者と言えば、ヒットラー。2月16日報道によると,14日,ドイツはドレスデンで「ネオナチ反対集会」が開かれ,ドレスデン大空襲の犠牲者の追悼が行われたよし。これ、どういうことかと言うと・・・,北ヨーロッパのフィレンツェと呼ばれるザクセン州の古都ドリスデンは、第2次大戦末期1945年2月13日〜14日に連合軍の大空襲でほぼ全滅し,35000人の市民が死ぬ・・・これをとらえて,ネオナチ=ヒトラー信奉者たち=ユダヤ人虐殺はなかったとする人々は、このドレスデン爆撃こそ,「必要のない市民殺戮であって」、これに比べるとユダヤ人殺しなぞは物の数に入らぬ物と,主張していて、つまりは,ユダヤ人殺しはなかったけれども、連合軍による「爆撃によるホロコースト=皆殺し」はあったのだ、と主張する。この連中=ネオナチの台頭を許してはならないとする人々の集会が行われたと言うものだ。このドレスデンの空襲を扱った映画が2006年「ドレスデン・運命の日〕で,ドレスデンの無差別爆撃を扱った映画はこれが初めてだ。TSUTAYAやGeoに並んでいる。見るべし。

ところで,イギリス人で超伝統派の聖ピウス十世協会に所属するリチャード・ウイリアムソン司教なる馬鹿がいて、この聖職者は言うに事欠いて「ユダヤ人を殺したと言うガス室はなかった」と主張し、又殺されたユダヤ人が600万人とはデタラメで,僅か30万人以下だとの見解を発表して、ドイツ・カトリック教会のカール・レーマン枢機卿から叱責されるおそまつさだ。この聖ピウス十世協会には、ウイリアムソンと同じ見解の聖職者が他にまだ3人いて・・・ところが驚いたことに、ローマ法王ベネディクト16世は、この叱責されていた4人の名誉を回復すると1月の末に発表した。殺されたユダヤ人の神経を逆なでする話だ。第2次大戦中、時のローマ法王ピウス12世がナチスのユダヤ人虐殺を黙認した事は歴史上証明されている事で,この点からしても上の話は呆れた話だ。ユダヤ人虐殺はないと主張したがる連中に,④「ナチスと映画」を読ませてやりたい。④4      紹介されている映画は未公開を含めて106本。貴方は何本観てるだろうか。

  1. 斉藤良輔・ひな人形・法政大学出版部・(2006) []
  2. 木村幹・韓国現代史・中公新書・(1959)  []
  3. 池東旭・韓国大統領列伝・中公新書・(1650) []
  4. 飯田道子・ナチスと映画・中公新書・(1975) []

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください