山下敏明さんのあんな本、こんな本

第339 和食文化の日本を代表する「豆腐」を食べよう 

2014.1.08寄稿

農水省の役人だった鈴木宣弘の「食の戦争―米国の罠に落ちる日本1 」(文春新書¥760)が出た.主題は言わずと知れたTPP.

鈴木によると、アメリカは「今だけ、金だけ、自分だけ」の立場で、巨大企業と官庁と金に目のない研究者(機関)が結託して、食の価格競争に日本を巻き込もうとしている由.心ある物なら皆懸念しているこの問題,他人事ではない。読むべし。

今、日本の食糧自給率は4割を切っている.現に発がん性のあるモンサント社のトウモロコシなんてのが千万トン単位で入ってくる.豆腐の大豆も驚く事なかれ8割が輸入だそうな。それを円安で買って出来る豆腐の小売り値はここ15年下降線をたどっているという。2012年の売り上げは21億円減だというからすさまじい。その結果今年で豆腐屋をやめる件数が実に500件、そこへ今年からたのみもしない、8%が来る.豆腐業者の52%が年間売り上げ1億円未満という中小零細業者でその人達が8%を価格に上乗せできないという。とまあ柄にもなく数字らしきものを並べたが、今日は1月8日 週末にはマイナス7度寒波が来るとの予報に引き変え、今日は全く珍しく無風でしかも夜半うっすらとつもった雪がとけて庇からしたたっている.小鳥の水浴び用に出している鉢の水も、今朝は割らなくていい。そして朝食の味噌汁の具はもちろん豆腐、学生時代から毎日食べている納豆もむろん椀のそばに並んでいる.それで、何を言いたいのかって?「豆腐のことです」。

いいですか、昨年来、和食が「国連教育科学文化機関」いわゆるユネスコによって、無形文化遺産に登録された。条件は「栄養バランスに優れた健康的な食生活」など4点。そこで豆腐は「和食」の最たるものではないか...と言いたい訳.豆腐を口に入りにくくしておいて何が和食が文化遺産だ、と言いたい訳です。

豆腐が文献に現われるのは、寿永2年(1283)奈良春日神社の...ナンテ講釈は今しない。それよりも、とにかく豆腐を食べよう。そして「冷や奴」と「湯豆腐」ばかりじゃ力もつかないしあきた ステーキがいいいーなんて不健康なこと言っている貴方に次の2冊を紹介しよう。何必醇(か ひつじゅん)著「豆腐百珍2 」そして 林春隆の「新選豆腐百珍3  」前者は江戸時代の料理本にして豆腐百科、この本の威力によって例えば江戸時代のナンデモ屋石川英輔の「大江戸番付事情4 」(講談社文庫)におかずの番付が出ていて東の「精進方」の大関(最上位)は「八はいどうふ」ーと言われても我妻さん(さえーと一寸自慢して)作り方がわからぬ。ところが、「豆腐百珍」248pにちゃんと出ている.林の本は現代と言っても昭和10年になったもの。

読者にしてみればそんな古臭い本出されてもなあ、今時、価値あるの?と言いたいであろうけれども....

ここで、別の話しをする。戦争大好き気な安倍も知ってもらいたいことだが、太平洋戦争末期、「本」を戦火から守るべく図書館人は筆舌につくせぬ苦労をした。図書館人ばかりではない.蔵書家たるもの、月並みながら、我が子同然に愛する本を守るべくの苦労、或いは焼かれての悲しみ,,,は語りつくせぬ程の例がある。それを全て語る訳にはいかぬから..ここにあげるのは都立日比谷図書館を中心とした記録、本を守った記録を出しておく。

「疎開した40万冊の図書5 」

その中に、図書館だよりが貴重な上にも貴重なものとして公費を出して買い上げた。図書の第1号として大阪出身の実業家加賀豊三郎の旧蔵書、いわゆる「加賀文庫」がある。これは現在東京都立図書館に保存されていて、その数役24000冊.中の1000点余の「黄表紙と洒落本は近世文学の世界では珍重」と解読されー…主たる書名と更に大事な物は短い解説がついているのだが、その解説付きの3番目に「豆腐百珍」が出てくる。つまり、公費を使って救おうとした本の中に入っている程に価値ある本となる訳で、今手軽に入るからとて、軽視すべき本では毛頭ないということ。結論ーーー「和食」の歴史をたやさぬためにも「とうふ」を食べよう。そして「豆腐屋」も助けよう。

室工大勤務中の或る新学期早々のこと、一度に一クラス皆で来たかと思う程に大勢が連なって図書館に来て、カードや機械に当っている.手元をのぞくと、「著者索引」で一様に「アンナカレーニナ」と打ち込んでいる.見たとたんピンと来た.と言うのはドイツ語のOと飲んだ時に、今年はアンナ・ゼーガースを教材に使うつもりだと言っていたからで。アンア・ゼーガースとは、その昔東ドイツの作家で...そのゼーガースと教室から図書館に来る間に、忘れて学生達はうろ覚えの「アンナ・カレーニナ」を加えた訳で、即ち、御存知トルストイの「アンナ・カレーニナ」もちろんこの名は女性名であるから、世の中広しと言えどもではなくて、世の中は広いから、或いはこの名の女性作家はいるかもしれぬ。しかし、私は寡聞に知らぬから君たちの探すのはアンナ・ゼーガースでしかもその作品(名は忘れたが)の和訳はないから、自分で辞書を引くしかないよ、とさとした(?)のだった。

さて、アンナ・ゼーガースは東ドイツ文学界で作家同盟の議長などもつとめた反ファッショ作家たちの重鎮だ。白髪と言うよりも、藁色に見える髪をひっつめに結った農夫みたいな顔の人だった.私の本棚には順不同にあげると、「ハイチの物語」「奇妙な出会い」「ハイチの妻」「死者はいつまでも若い上下」「トランジェット」「聖バルバラの難民一揆」「死んだ少女達の遠足」今余読まれてはいない。そして「第七の十字架6 」などが並んでいる.皆若き日の読書の結果の蔵書だ。

ところで、このゼーガースを何故思い出したかと言えば、遅ればせながら、「第七の十字架」に基づいたドイツの現代作曲家のハンスニヴェルナー・ヘンツの合唱付き交響曲第9番を沼尻竜典の指揮で東京フィルが昨年10月に演奏したと知ったからだ。ゼーガース自身ナチスに捕らえられて、脱出の経験者だが、この「第七の十字架」もナチの収容所から脱出した7人の政治家の行方を追うスリルある物語だった。この演奏CDになったら是非聞いてみようゼーガースの作品のとなりにドイツ語のOに譲ってもらったナチス政治犯収容所の報告,ヴィーヒェルト「死者の森」もあった。ゼーガースを忘れた感のある文学界に較べてゼーガースを追っている音楽界はエライなあ。

 

 

1989年(平成元年)11月4日、第一回「鷲山第三郎のこと」を皮切りに、24年間室蘭民報に掲載されて来た、「本の話」が、2004年5月に1冊目として室蘭民報より、出版され、2010年9月に

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「普通為替」番号「051-0015」にて申し込みください

室蘭市本町2丁目2-5 市立図書館「ふくろう文庫」山下敏明宛


  1. 鈴木宣弘.食の戦争―米国の罠に落ちる日本.文春新書(2013) []
  2. 何必醇.豆腐百珍.新潮社文庫(2008) []
  3. 林春隆.新選豆腐百珍.中央文庫(1982) []
  4. 石川英輔.大江戸番付事情.講談社(2004) []
  5. 金高謙二.疎開した40万冊の図書.幻戯書房(2013) []
  6. アンナ・ゼーガース第七の十字架 .河出書房(1972) []

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