第382回 四國五郎と峰三吉.ベンシャーン.宮川裕章

2017.11寄稿 とある朝、7:30頃呼鈴が鳴ったので玄関を開けると、隣家の小3の美少女ほのかちゃんが、活発でめんこい弟、5歳のかいと君と手をつないで立っている。「なんじゃらほい?」と訊くと、「今日は授業参観日で、地域の人にも解放するので来てください」と言う。せっかくの誘いなので用事があったが後回しにして我妻さんと2人で行ってきた。仲々面白かった。そのほのかちゃんが、先ごろいつになく早く帰ってきて、玄関先にいるのを我妻さんが気付いて、「今日は早いのね」と言うと、「学芸会あったから」との返事。で私が「ほのかちゃんも出たのかい?」と訊くと「?じぞう」の劇に出て、「じぞう役」をやったと言う。この?の所が私には聞こえなかったが、後で「おこりじぞう」のことかと思い始めた。それで後日、庭先のほのかちゃんに「この前のじぞうの話は、原爆の話かい」と訊くと、「そうです」と帰ってきた。

「おこりじぞう」については、私が税理士の尾形俊哉さんの寄金で「ふくろう文庫」に入れた永田浩三「ヒロシマを伝えるー詩画人・四國五郎と原爆の表現者たちー1 」にこうある。「そして、四國五郎の名前を最も有名にした作品が誕生する.1979年に出版された絵本「おこりじぞう2 」である。

いまも多くの学校や、俳優座などの演劇集団が朗読劇に使い、平和学習の教材に利用されている.1980年代から2000年まで、小学校国語三年の教科書に掲載されていた。”おこりじぞう”は中沢啓治の漫画”はだしのゲン”とともに、原爆とは何かを子供達に伝える原典となっている」。「はだしのゲン」は2013年9月に「閲覧制限」されて問題となったが、今は触れない。四國五郎に話を戻すと、過ぐる10月に、東京は世田谷区の平和資料館で、四國五郎作品が開かれた。観に行きたいが多忙でいけないので。電話をして図録の有無を聞くと図録は出していない、との返事。残念だが仕方がない。しかし嬉しい話が二つある。

1つは1970年7月に広島詩人会議から¥500で出た「四國五郎詩画集・母子像3 」が復刻された事。解題ほか9頁の付録と合わせて¥1200、送料300。私も先日入手した。素晴らし。是非多くの人に読んでもらいたい。購入希望の人は「追悼の会」(082−291−7615)まで。嬉しい話の2つ目波、「わが青春の記録ー画と文.四國五郎ー 」。総頁カラー(全2巻)が出る事。今年12月に刊行の予定だという。¥48,000。

以前、1999年に広島ミニコミセンターから出た「四国五郎平和美術館①」が欲しくて探したが入手出来なかったので、今度は直ぐに買うつもりだ。刊行元は京都の三人社(075−762−0368)。

ICANがノーベル平和賞を受け、ローマ法王が核兵器使用のみならず保有禁止に言及しているというのに、被爆国たる我が国の政権は、??と言うこの時勢。二度と「じぞうさん」を怒らせてはなるまいに。ローマ法皇は言う。原爆や他の核実験の犠牲者の目撃証人は「かけがえのないもの」で、「彼らの予言的声が、すべての未来の世代への警告となることを願う」と。

いい機会だから永田浩三の本をもう一冊出そう。「『ベン・シャーン』を追いかけて4 」だ。ローマ法皇の言う目撃証人に当たる人として、ビキニ環礁での水爆実験で被爆した久保山愛吉がいる。久保山が乗っていた船が「第五福竜丸」。そして今事件を取り上げたのが、画家ベン•シャーンで、作品の名は「ラッキー•ドラゴン」シリーズ永田は「シャーンは、ラッキードラゴンシリーズを亡くなった久保山愛吉さんを軸に描いた」として、シャーンの著書「ここが家だ5 」から、「放射能症で死亡した無線長(=久保山)は、あなたや私と同じ、一人の人間だった。第五福竜丸のシリーズで、彼を描くと言うよりも、私たち皆を描こうとした。久保山さんが息を引き取り、彼の奥さんの悲しみを慰めている人は、夫を失った妻の悲しみそのものと向き合っている。亡くなる前、幼い娘を抱き上げた久保山さんは、我が子を抱き上げるすべての父親だ」を引く。

私も2012年5月、第26回「ふくろう文庫ワンコイン美術講座」で「ベン•シャーン」をテーマに語り、その後、聴講料で映画「第五福竜丸」「死刑台のメロディ」のDVDを入手し、再度美術講座特別編として上映会を開いた。多数の人が観に来てくれて良かったと感謝したものだ。永田のベン•シャーンは、画論にとどまらず、ベン•シャーンの人間そのものを語っているいい本だ。

ところで先日、思いがけぬ所で永田に出会った。宮川裕章の「フランス現代史・隠された記憶ー戦争のタブーを追跡するー6 」の第2章「永田丸の記憶ー同盟国だった日本とフランスー」がその思いもかけぬ所。

なんでも、ブルターニュ半島西端のブレストの墓地に5人の日本人の墓があるとのことで、これ、日本の商戦「永田丸」の乗り組員の墓の由。この「永田丸」を所有していたのが、永田三十郎の「藤永田造船所」で、この三十郎が永田浩三の祖父だという。第2章は30頁弱もあるから、ことのしだいら、事の次第は同書にまかせるが、この本を何故買ったかと言うと....先日、「アルジェリアの戦い」がDVD化されて店頭に並んだ。これイタリアとアルジェリア合作で1965年作。

フランスから独立しようとするアルジェリアの解放戦線の動きを描いたもの。舞台はアルジェリアの迷路ようなカスバ(砦の意)。8万人の市民がエキストラに動員された名作で、ベネチア映画祭金獅子賞を受賞。実に50年ぶりに観て又々感動したが、その後のアルジェリアが気になった。加えて最近のフランスの不穏な空気、というよりも大統領のマクロンの言動が引き金となっての色々な出来事。例えば、前オランド政権の時には経財相として、日曜日に商店主が休めるとしていた日曜営業規制を緩和,更に労働法改悪の問題、12万人の公務員を5年間で削減etc.

して又、労働者の抗議デモに対して「むちゃくちゃやらずに仕事を探しに行けばよいのに」と言うかと思えば、「こんな人達に負けられない」と言った安倍に東西呼応するかのように、「怠け者には負けられない」と言ったり。そして移民の問題、殊にアフリカから来た身分証明書を持たぬ「サンパピエ」なる移民達の問題、それを含めて、フランス現代史でいい本はないかと探している時に見つけたのが宮川の本。第二次世界対戦中のユダヤ人移送のこと、ヴイシーの事、レジスタンス運動の事。そしてアルジェリア戦争の事。具体例を挙げてくれて実に分かりやすい。本棚から昔読んだ林瑞枝の「フランスの異邦人」(中公新書)やアンリ・ミシェルの「ヴイシー政権」(文庫クセジュ)などを取り出して読み比べてみたが、この宮川の本が断然いい。(私にとっては)新知見に満ちたありがたい本だった。読むにつれて歴史の闇が明るんでくる


  1. 永田浩三.ヒロシマを伝えるー詩画人・四國五郎と原爆の表現者たち.WAVE出版(2016)   []
  2. 四國五郎.おこりじぞう.金の星社(1979) []
  3. 広島詩人会議.四國五郎詩画集・母子像.追悼の会(2017) []
  4. 永田浩三.『ベン・シャーン』を追いかけて.大月書店(2014) []
  5. ベン•シャーン.ここが家だ.集英社 (2006) []
  6. 宮川裕章.フランス現代史・隠された記憶ー戦争のタブーを追跡するー.ちくま書店(2017) []

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