第390回 (ひまわりno206)関東大震災の混乱中の3つの事件、ジャンゴ・ラインハルト、鷺に関する本

2018.08.13寄稿

1923年9月1日、午前11:58。マグニチュード7.9の地震が関東地方を襲った。死者行方不明者10万人超、この混乱の中置きた事件が3つある。㋑朝鮮人虐殺事件、㋺亀戸事件、㋩甘粕事件。

㋑は内務省が全国向けに出した「東京付近の震災を利用し、朝鮮人は各地に放火し不逞の目的を遂行せんとし、現に東京市内に於いて爆弾を所持し石油を注ぎて放火するものあり」という内容のデマ宣伝を信じて、例えば武装した軍隊が出動して朝鮮人を虐殺したものだ。㋺は川合義虎ら8人の労働組合員と、平沢計七が亀戸警察署で軍隊に殺された事件。これについては、難波英夫ほか「亀戸事件の記録1 」日本国民救援会発行1973なるいい本がある。㋩は無政府主義者の大杉栄と内妻伊藤野枝、6歳の甥、橘宗一が、麹町憲兵分隊長の甘粕正彦大尉によって扼殺されたもの。

出動した軍隊は無論だが、この時朝鮮人を最も多く虐殺したのは「自警団」だ。これ「火災、水害など非常時の時に、民間人が自分たちの安全を守るために組織する私的な警備団体」(大辞泉)だ。この本来なら己の町を守り人の命を守る筈の組織が、自制を忘れて動いた結果、約6,000人の朝鮮人と700人以上の中国人が殺された。「自警団」の恐ろしさを語る証言は沢山あるが、有名なのは新劇の千田是也(せんだこれや)の体験だ。彼は当時19歳で早稲田大学の聴講生だったが、「若者は自警団に参加せよ」ということで登山の杖をもって出たところが、朝鮮人と間違われ、「あいうえお」を言え、「教育勅語」を言えと小突き回され・・・で、日曜学校の知り合いの「〜伊藤様のお坊っちゃまじゃないですか」の一言で救われた。これを機に、本名の伊藤を止め、当時住んでいた千駄ヶ谷の名をとって「センダ・コレヤ」=「千駄ヶ谷のKorean(朝鮮人)」と名乗った云々。内務省がデマの大本だったという驚くべき話。しかし平気で嘘をつき続ける安倍政権で、似たことが起こらぬという保証は何もないな。現代史出版会「歴史の真実、関東大震災と朝鮮人の虐殺」他を出そうと思ったが、今回はあまり知られていない中国人の虐殺、かの周恩来の親友だったという王希天に関する本を出して置く。因みに「ふくろう文庫」には日本画家、樫山南風の「大震災実写図巻」がある。四月にモルエの「ふくろう文庫春季展」で展示した。自警団の禍々しい姿も描かれている。「関東だ震災と王希天事件2

600万人のユダヤ人を殺したヒトラーは又、60万人のロマ(ジプシー)もこの世から抹殺した。Gypsyはチゴイネル、ボヘミアンとも云い、つまり放浪生活をする人の意だが、これは蔑称で、彼らは自分たちをロマとよぶ。金髪、碧眼(青い目)、長身白皙(白い肌)を良しとし民族的純潔(血)なる信念のヒトラーからすれば、ちじれた黒髪、短躯、色黒の肌のロマはその信念をおびやかす存在だから、これは存在しないほうがいい。ヒトラーは又ジャズを嫌い憎んだ。ワグナーを崇敬するヒトラーからすると、ジャズの原始的なリズムは社会の秩序を乱し、人々を堕落させるものだった。だからドイツでスウィングする若者たちは皆ひっとらえられた。こうしてナチの目の敵にされたロマ+ジャズをそれこそ体現したかの如き存在がいる。ロマのジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルト(1910〜1953)だ。ジャンゴはロマ語で「私は目覚める」という意味。ベルギー生まれだが、それはたまたまベルギーの平原に停められていた馬車の中で生まれたということだ。詩人のノアイユ夫人はジャンゴのジャズを聞き「このジプシーの男は、ゴヤにも匹敵する」と激賞し、ジャンゴの相棒としてベースを弾いたエマニュエル・スデューは「ジャンゴは人の姿を借りた音楽そのものだ」と語った。そのジャンゴは事故で左指が2本もなかったし、文字も楽譜も読めなかった。私がジャンゴを熱心に聞いたのは30代から40代にかけてだから、当然CDはなく、今私の手元にあるのは皆LPレコードだ。さて、この不滅のギターリストがナチの時代を如何に生き抜いたかを描く映画「永遠のジャンゴ」を観た。素晴らしい。特に幕開け、ストーケロ・ローゼンバーグ率いるトリオの演奏がすごい。ジャンごと、その時代をこの上なく緻密に語るマイケル・ドレーニの「ジャンゴ・ラインハルトの伝説3 」を読み、この映画を観かつジャズを聞けば、生きることがやっぱりいいものとの気がしてくる。

子供というものは大人の思いもしないことを口にするのが常だから、新聞に自分の孫やら子やら或いは近所の子供たちの、聞いて思わず吹き出しそうな発言を投稿する人が結構いて、読んで楽しくなる。以前次のようなのがあった。81歳の人からでー知人を訪ねて箱根に行った帰路、時は秋の夕暮れ。シラサギの大群に出会った由、道も田んぼも真っ白で余りの壮観さに「ワーッ、サギ」と叫ぶと、小2の孫娘が「あれが”オレオレ”ってデンワすんの?」と言ったという。これには笑った。ところが最近「冗談欄」に出た投書に「栃木でサギ大発生」を前書きして、「やりづらくなるな、振り込めサギ」というのがあった。これにも笑ったが、ナンデモ栃木でサギ、と言っても鳥の鷺が一箇所に集まって(集まり過ぎて)住民が大弱りとの記事が出ていた。鷺は全国的にいる鳥だが、室蘭に住んでいて鷺を頻繁に見る、ましてやマジマジと見た、なんて経験のある人は余りいないじゃないのか。どうだろう。それはともかく、これ滅多にない話題で、それ故殆ど紹介する機会のなかった本を、これぞチャンスと思って2冊出す。①は名著「野田の鷺山4 」小杉昭光、②は「幻像のアオサギが飛ぶよ5 」佐原雄二。①は江戸中期以来続く浦和市野田の数万羽の鷺の繁殖地(特別天然記念物だった)についての稀有の記録、②は日本人と外国人の鷺に抱くイネージ思いもよらぬ差異について縦横に語った好著。2つとも「面白いぞ」とだけ言っておこう。ところで今日本にとっての一番の厄介事は「白い鷺を黒いカラスという」=(明らかに間違いであるのに正しいと主張し続けること)つまり歴然たる詐欺師=安倍の存在だな。

 


  1. 難波英夫.亀戸事件の記録.日本国民救援会 (1973) []
  2. 田原洋.関東だ震災と王希天事件.三一書房(1982) []
  3. マイケル・ドレーニ.ジャンゴ・ラインハルトの伝説.シンコーミュージック(2009) []
  4. 小杉昭光.野田の鷺山 .朝日新聞社(1980) []
  5. 佐原雄二.幻像のアオサギが飛ぶよ.花伝社(2016) []

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