山下敏明さんのあんな本、こんな本

司書独言(119)

2011.8.寄稿

○月○日 お中元でメロンが届いて、これが美味しい。もう一切れ、と思いつつ自制するのは、メロンで死んだ人を思い出したからだ。それは15世紀神聖ローマ帝国皇帝だったフリードリッヒ三世、放っておくと際限なく食べ...で...消化不良で死んだ。そして息子のマクシミリアン二世も父と同様の死を迎えた。

もっとも、高価なメロン、際限なく食べられる程には送って来ないけどね。

○月○日 7月末の台湾のニュースに笑った。軍隊の集会中中華民国建国の父・孫文と蒋介石の名が出ると、全員がその都度直立不動と義務つけていたのを、民主主義の時代だから止そうとなったと言うのだ。しかし笑えない、と言うのも戦時中、日本でも「天皇陛下』と出ると矢張り直立不動で、「元へ」つまり元の姿勢に戻ってよし、との号令が出てから初めて普通の姿にもどっていたことを思い出したからだ。馬鹿馬鹿しいことをやっていたものだ。

○月○日 そう言えば台湾で,序でにもう止めた方がいいんじゃないの、と思うことがある。忠烈祠とやら,国共内戦で死んだ,つまりは中華民国の方で,毛沢東に対して戦った兵士達を祀るところだが、ここに立っている番兵が1時間交替と言うのは仕方ないが(私なら嫌だが)、その1時間は微動だにしちゃいかんのだ.台の上で股開いて左手に銃をそえて...そして一番びっくりするのが1時間「まばたき」しちゃダメと言うこと。人間業とは思えぬが実際見ていると開いたまんまで,充血して真っ赤だ。インデアンの処刑に,炎天下,大地に仰向けに寝かせ,四肢と首を地面に固定し、その上で両目の瞼を糸で引っ張って目をつぶることが出来なくするのがある.つまり、太陽で焼いて失明させるのだ。台湾のエリートらしき連中も、あれ、続けてりゃ、早晩若くして失明じゃないのかと他人事ながら心配だ。あれ絶対に人権無視だわ!。

○月○日 台湾でもう一つ、今度は又笑える奴、馬総統とか言うのが経費節約 and 元気な所を見せようと、自転車通勤を始めた...はいいが、護衛達(シークレット・サービス)がベンツ12台に乗って回りを固めた。台湾人笑って曰く「意味ないじゃん」。これがベンツでなくて50ccカブでも馬鹿げていることは変わらない。麻生の皇居一周のランニングやブッシュにも笑ったが、歩くだ、走るだ、バスだと、ピンからキリまでの政治家諸君、余り笑わせんでくれ。

○月○日 「東京大空襲・戦災誌」で菊池寛賞を受けた評論家の松浦総三が死去した。戦争中のデッチアゲの最たる「横浜事件」や、戦後のGHQの言論統制などについて堂々たる批判の論陣を張った優れた批評家だった.死去のニュースの切り抜きをはさもうと彼の本を出してみたら、7冊読んでいた。どんな人だったかわかるから書名を列挙してみる。

「占領下の言論弾圧・1969」「戦後ジャーナリズム史論・1975」「天皇とマスコミ・1975」「戦時下の言論統制・1975」

「われわれにとって”君が代”とは何か・1977、石上正夫と共著」「文芸春秋の研究・1977」「文芸春秋と天皇・1977」

○月○日 最近ドナルドキーンが戦争中の知識人の日記を材料に日本人の心証を論じた本「日本人の戦争」を出したが、これなどは「今頃遅いわ!」と言いたいようなもので、松浦は30年も前に「戦中日記にみる戦争観」を「週刊読書人」に連載している。序でに言えばキーンは文化勲章をもらったが、やはりキーンの作戦がちだ。何故って「アメリカに行けば日本の悪口を言い、日本に戻ってはアメリカをけなし」要するにキーンは「人付き合いがうまいだけ」と言った意味のことを確か評論家の小谷野敦が言っていたが私もそう思う。私は一応キーンも読んでいて、本人が自著ベスト3に選ぶ「足利義政と銀閣寺」などは、確かにいい本だと思うが、その人物となると、何やら「人たらし」と言われた司馬遼太郎に似ているような気がする.遼太郎にも文化勲章が当っていたなあ。

○月○日 「原発はなぜ日本にふさわしくないのか」なる本が小学館から出た由。まだ読んでいないが、著者は、元皇族の竹田恒泰とのこと。なにしろ元皇族だから、万世一系の天皇あればこその日本、の立場で、天皇の先祖たる神々が作った神国日本を放射能で汚すな、又、陛下の宸襟(しんきん)を原発ごときで悩ますな、と言うのが主旨らしい。「しんきん」と平仮名でくれば「心筋+コウソク」かと思うが、「宸襟」ときたら「天皇の心」のことで、つまりは天皇に心配をかけるな、ということ。昔、開国の時横浜の女郎が、「降るアメリカに袖は濡らさじ」とかの句を残して、つまりは神の国の女「なでしこジャパン」たる身は、ブッシュのアメリカごときに操を汚されたくないとて自害した話しがあるが、上の主張、発想が,何となくこれに似ている気がする。

○月○日 まあ、脱原発を主張しているんだから良いようなものだが,皇族とても,天皇の心ばかりでなく,国民の方にもいささかの関心を払ってほしかった。ところで、被災地の見舞いを初めとして今一番人間的で民主的なのは天皇夫妻じゃあるまいか.鳩だの鷺だのひっくるめて政治家や役人の及ぶところではないわ。

○月○日 西尾幹二だの鈴木邦男も日本の土地が汚されるとて、方向転換で脱原発の由.今頃遅いわ!と思うが,もう一つこの結構な発想で,日本の土地を汚している最たる存在の米軍基地にも出ていってくれ、とやってくれれば首尾一貫して見事といえるがな。

しかし、「友愛は震災時には何もせず」なる川柳の投書があったが、麻生だの、安倍だの、福田だの元総理達は,被災地見舞いにいったのかな?

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