司書独言122

2023.12月寄稿

○月○日 津波学者山下文男が12月13日87才で没した。「津波ものがたり」「哀史三陸大津波」「近代日本津波史」、そして有名な「津波てんでんこ」と私は彼の著作を全部読んできた。今回の津波の時には文男は入院中で、病院の4階にいたが、驚くべし、そこ迄来た津波にあわやさらわれる所を、カーテンに捕まって助かったと報道されていたっけなあ。思えば未曾有の津波の破壊力を、死ぬ前に実感出来たというのは、津波学者としては本望とすべき体験だったかも知れんな。

○月○日 何年前か忘れたが、初めて韓国に行った時、キムチを鋏でジョキジョキと切ってだすには、包丁まな板派の私としては驚いたなあ。私はキムチ大好きで、三食はおろか、間食としても食べたい方だが、肝心の韓国ではキムチ離れが起きている由で、2001年の1人当たりキムチ消費量が36.3kgだったのに、2010年には28kgと減った由。聞いて妙な気がする。と言うのは1999年には、日本のインスタントキムチの人気に対して、このままでは民族の伝統食キムチがなくなる、と力んで日韓双方でキムチ国際規格作りが始まったとのニュースがあったくらいだから。

○月○日 それが今になって「忙し過ぎて漬ける時間がない」とやら「キムチに代わるおかずが増えたから」とやらで、この10年間で消費が2割減ったそうな。となればこれは日本のインスタントキムチのせいではない訳だ。ジョン・キョンファの「キムチの味」(晶文社/1993刊)といういい本があるが、韓国人に勧めたいところだ。

○月○日 胸糞悪くなるようなニュースが多い中で、時にはスッキリとするニュースがないではなくて、その一つは12月3日、「人権侵害の罪」で前大統領ブッシュを逮捕せよとの声明を国際人権団体アムネスティ・インターナショナルがエチオピア、タンザニア、ザンビアの3国に向けて出したと言う。その罪は大統領就任中に水責めなどの拷問による取り調べをブッシュが許可したからだと。ブッシュは「がん対策の啓蒙のため」アフリカに行く予定であったと言うが、政治の世界ではブッシュこそが一番のガンだった。と私は思うね。自分の症状には気付いとらんのかね。

○月○日 世間に面白い話しはやはりあるもので....クラッシックは眠くなるから嫌だ、と言う人がいるが、その居眠り、演奏中でもOK,OKどうぞ寝て下さいというコンサートが昨年10月末、京都で開かれた。そしたら1曲目が歌劇「トゥランドット」の「誰も寝てはならぬ」だったのに、演奏が始まると直ぐに寝込んだのがいる由で、写真をみるとメガネをデコに引っ掛けかけて頰杖をついて寝ている。曲名も佳。、この眠る人も佳。

○月○日 過ぎる11月中旬、JRの男性車掌が走行中に3回計10分間読書した。”小説の展開が気になり、読んでしまった”とて注意された由。これ程本を読みたがる司書は今、どこの図書館にもいないだろうな、と不謹慎なことをつい思ってしまった。

○月○日 11月下旬、ニューヨークのメトロポリタン美術館で「語りかける日本の絵巻」展が開かれ、大人気だった由。「鳥獣人物戯画」や「酒呑み童子絵巻」やら「北野天神縁起絵巻」など20点の絵巻物が出た由。同館は年間500万人の来館者があるそうだが、数はともかくとして、問題は、読みたい、見たい、聞きたいと言う文学、絵画、音楽に対する飢え=渇き=関心があるかないかだ。総じて言えばこれは文化度の問題で、頭の善し悪し、地位の有る無しには全く関係ない。文化度の低い人間は、つまりはお粗末と言うだけだ。お粗末さんに例えば絵巻をすすめても無駄だ。お粗末さんが多けりゃその地の文化度も当然下がる訳だ。

 

 

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