司書独言(153)

○月○日 オリバー・ストーンは反戦反原発の映画監督で、アメリカの歴史を他民族に対する征服戦争の連続史ととらえた歴史書を出し、来日もしたりの人だ。その人の新作ドキュメンタリー「パンドラの約束」が公開されるというニュースでこりゃいいやと思って読むと、これ原発推進の映画で、ありゃ変だと読み直したら、ストーンはストーンでもロバートで反原発から原発推進に転じた変節の男と分かった.危うし、名前はよくよく見なくちゃな。

○月○日 大量のポテトチップス入りの段ボールを不法投棄して逮捕された25歳の若者が出た.兵庫県の話。歌手のライブ招待の応募券の付いたポテトチップスだと言う.世界には飢えた子がいる,イヤそこまでいかなくとも、施設の子どもに配る位の知恵はないのかね。

○月○日 3年程前か,27歳でガンで死んだ室工大卒の水野君の墓参りという、もう30数年続いている恒例の行事の後、富岡製糸場を見学した。奇麗に保存されていて感心して観たは観たが、胸中には、何と言っても製糸の前史は「野麦峠」「女工哀史」の世界だからな、との思いが強くあった。それが今年になって「世界遺産〕に登録され栄光には違いないが、先の思いは消えない。そこへその女工達の歴史を辿った高瀬豊二著「異郷に散った若い命」(¥1,000)がオリオン舎から復刻される由読んでみるつもりだ。

○月○日 独のメルケル首相が米国のスパイ疑惑に抗議しているが、米国側は「コメント無し」と無視の構え。次いで、ストーン(今度は良心派のオリバーの方)が「スノーデン・ファイル」を使った映画を作ると発表した。「暴露」にはNSA(国家安全保障局)が1ヶ月で970億件の電子ネールを収集ーとの数字が出ている。秘密機関の連中が「テロ防止〕なんて事より、自分の「覗き趣味」を楽しんでいるだけだと思わせる馬鹿で無駄な数字だ。

○月○日 スパイと言えば、戦時中、自分のカラフト旅行で見た風景を、外人教師に話したことが軍事機密を漏らしたスパイ行為とされた、北大生宮沢弘幸とクエーカー教徒のレーン教授の冤罪事件がある。この事件を使って和歌山大学学長・山本健慈は今年の卒業式で「秘密保護法」は容認できぬと学生に語った。偉い学長もいたもんだ。

○月○日 学長と言えば、先頃前尾池和夫・京都造形学芸大学学長や元滋賀大学学長・宮本憲一らが集まって、大学自治破壊を狙う国立大学法人法を阻止しようとのシンポジウムを開いた。改悪案は大学運営の権限を教授会から学長に集中するもの。独文学者・池内紀の兄の名古屋大学名誉教授・了(さとる)も「学内が権力にゆがめられないためには、学問の自由が保障されねばならず〜その場である大学の自治が必要」とこれに反対している。我地の大学からは何の動きも伝わってこないが、どうなってんだろう。

○月○日 学問の自由と言えば、5月の末だったかの広島大学の一件には呆れ果てた。ナンデも同大学の准教授が「従軍慰安婦」を授業で取り上げたところ、これに反撥し異を唱えた学生の声を基にして「産経」が攻撃に出たもの。日本科学者学会は「ナチスが青年組織を使ってナチスに批判的な教師達を攻撃した」先例に類似しているとて抗議したと言うが当たり前だ。この学生、社会的正義を果たしたとでも思ってんのかな。この学生の行為、単なる密告に過ぎぬ。

○月○日 もう14.5年にもなると思うが、室蘭空襲などの戦争体験を紙芝居にして子供達に伝えてきた元先生達のグループが、先日(高齢故か)解散すると地元紙に報じられた。残念だと思っていたら、苫小牧工業高校の松本徹元校長ら7人の元公立高校長が集団的自衛権容認の閣議決定に反対して、今こそ教え子を戦場に送らない、との動きに出た。子供を持つ親達にしてみれば、ありがたい動きの筈だ。

○月○日 国会では「戦闘現場に自衛隊」の論戦中と新聞に出た7月15日、地元史には昭和20年7月14日、室蘭港内で米軍機に撃沈された20隻の船の一隻航海長だった93歳の人が大阪から来欄して港内で戦没者の冥福を祈ると出た。先頃ナントカと言う自衛権行使推進はの北大(?)教授が「戦争で死ぬのは当たり前」と言っていた。死ぬ現場に行きそうにも行かされそうもない連中が総じて勇ましい。

○月○日 去年の暮だったか、日本作家クラブが「銭形平次」の作品を記念して「野村胡堂文学賞〕を創設し、第一回目の受賞作品には小中陽太郎の「翔べよ源内」(平原社)が選ばれた。元NHKディレクター時代の小中は、日仏合作のドラマで来日した主演女優と恋愛関係になり、NHKを出された後べ平連で活躍してた。一方胡堂はクラシック愛好者にもかかわらず戦中は洋楽排除に動いて軍部に協力した男だから、この受賞体制派vs反体制派でいささか皮肉に見える。ところで昨日ブドウとワインの町岩手は紫波町でTPP即時撤退の集会があった。紫波町は胡堂の生地だが、今胡堂が生きてたら、反対運動の側にたつだろうか、或いは今度は米国の側に立つだろうか

 

 

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