司書独言(108)

`10.8月寄稿

○月○日 我が庭でアジサイが花盛りだ。3種類ある。「墨田の花火」などといい名だが、無論品種改良でつけられた名だ。花の色が変化するから、七変化と言われ、化花(ばけばな)幽霊花(ゆうれいばな)などとも呼ばれるが、私としては頓着無しだ。アジサイは湿気を好み、水気青を吸うから、昔は脚気の病人の病室に吊るした。脚気は水気を取れば治ると信じられていたからだ。アジサイを紫陽花と気取って書く人がいるが、これは間違いだ、と植物学者・牧野富太郎が指摘し、私も「本の話」で取り上げたことがあるが。この常識、万人に行きわたったようには思えない。

○月○日 毎年仲人した卒業生から「佐藤錦」が送られて来る。ゆったりとした気持ちで食べながら、種をプイプイと庭に飛ばすのだが、それが芽を出して今はひょろひょろと3本立っている。言う迄もないが、実はならぬ。ところでこの「佐藤錦」、戦争中は軍部から贅沢品と睨まれて伐採を命じられたが、名付け親の佐藤栄助と岡田東作が果樹園の中に原木一本だけを隠して守り通したのだそうな。そんなドラマがあったとは!!。

軍部の馬鹿ぶりには今更驚かないが、原木を絶やさぬ様、来年はもっと心してプイプイプイをやり、チェホフの「桜の庭」ではないけれど、我が庭をサクランボだらけにしよう...まさかね!

○月○日 中学2年の冬、同級のNが腎臓を患った。その時真意は知らず「スイカ」がこの病に効くと親から聞いた知識を披露したのがいた。だけど冬だからスイカはない。まあNはスイカなしで治って今もピンシャン(でもないか)しているが、このスイカ、今ではどうだ。春夏秋冬いつでも来いだ。おまけに、例えば「風呂敷のうすくてスイカまんまるし/右城墓石」が、今や「四角いスイカ出荷はじまる」てなもんだ。この四角いスイカ観るだけでたべるものではない、と言うに1個一万円もする。値段聞いて腎臓はおいて、どっか具合が悪くなる様な気がする。四角の前に「種ナシ」があったが、主流とならぬ所を見ると、矢張り、洗面器の上に新聞広げて、両足投げ出しププイのプイと種を吐き出しているのがスイカを食べた気になんのかな。

○月○日 そう言えば、室工大時代、ラ・サール高校で一緒だったと言う一橋大のKなる友人を連れて来たのがいて、そのKが卒業後ロンドンに派遣されたが、夏休みに帰って来て言うには、ロンドンでスイカを食べたと、どう言う風に?と言うとキョトンとして、「洗面器に新聞紙」と言うので、「それじゃ行儀が悪い、国辱ものじゃないか」などとはちっとも思わず「オー汝もか!」と嬉しかったが、このKの父は北電勤め。我等下々はそうやって食べていたのだが、幼稚園の頃、歯医者の娘Sの家に招ばれて行ったらスイカを出されて、それはいいが、熊手ならざる先端が三筋に切れ目が入っている様なスプーンを出されて、今じゃこのスイカ用スプーン、珍しくもないが、その時はプイプイが出来なくて、まるで食べた気がせなんだ。そうだ、植物学者の足立輝一に「スイカを最初に食べた人」なる抜群に面白い文章があったけ。そのうち「本の話」に取り上げてみよう。

○月○日 ムクゲも今や満開だ。隣家との境に植えてある。一日花だから、次々と咲いてくれるのはいいが、隣家の方々に悪い悪いと誤りたくなる程に花びらが落ちる。周知のようにこれは韓国の国花で「無窮花(ムグンファ)」と呼ぶ由。意味は「永久の花」。ところが所変われば、で、これ中国では、詩人、白楽天による「槿花一日の栄」或いは「槿花一朝の暮」とて、つまり、朝咲いて夕にはしぼむ、その咲き方故にはかない、ととる訳で、これは日本でも同じ。しかしこれが韓国では,しぼんでは咲くと繰り返すことから、粘り強く生きる事の意となって、つまりは目出たい=無窮花だ。いいねえ。今年は韓国併合100年。両国仲良く、ーで韓流が大流行。私は大いに喜ばしいと見ているが、先日週刊誌に「ヨン様」を迎える女性の一群が胸に各々ハングルのプラカードをつけていて、中の一人ナンと書いてあるのか?と思いきや、「ヨン様抱いて!」と書いてある由。ウヒャーと驚いて、改めてその顔を眺めると、ヨン様にあらずとも「イヤヨン」と返したくなる顔だった。

○月○日 これ又3株ある「ヤマゴボウ」も今を盛りだ。くき赤く丈高く、仲仲悪くない。この実をつぶすと赤紫の汁が出るので、昔はこれを赤インクの材料とした。但し、これ昔は「商陸(やまごぼう)」なる字を充てて、実は有毒。

我が本棚にある天保14年生まれの梅原寛重の「薬草と毒草」には、「根はやや毒があるが、水腫病を治す」と出ている。ところで私は「ごぼう巻」が好きだ。これはキク科で物が違う。私は「チョイス』でいつも最後にこの「ごぼう巻」を頼んでいたが如何なる訳か、去年あたりからどの店にもこれを置かなくなった。それでは。我が妻さんは丸井の地下で見つけてくれたが、これが丸井がなくなってダメ、で私は食べたくて困っている。スーパーなどでも見つける事が出来ぬ。誰かがどこかでニラと間違えて朝鮮朝顔を食べて中毒したように、有毒のヤマゴボウに当ったかして「ごぼう巻』が消えたのかな。

○月○日 多少当っても、「ごぼう巻」食べたい。当っても我が庭には「ドクダミ」がわんさか咲いている。ドクダミは「毒矯(どくため)」で「矯」は「矯正」の語あるごとく、治すこと。つまり2字で「消毒」。このドクダミ昔から消毒に使う。当っても自分で治すから...で誰か「ごぼう巻」ある店を教えて下され。



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