司書独言(171)

◯月◯日 来客が言うには、議員の山東昭子が「ゲスの極みと評したんだけどさ」と。言われた相手が誰で、事が何だったかを忘れてしまったが、聞いた途端に、これ山東の方がゲスの極みだわという事だった。これで弾みがついたのか、その後ゲスな話が続いた「ゲスの極み」ナントカ言う歌手の団体の男と、横文字名前の女タレントがわりない仲になった云々。さらにその男が歌う歌を、正真ゲスな甘利が好んで唱うと言う不思議。

◯月◯日 そういえばこの「ゲス」でいきなり始まる文章がある。枕草子の「にげもなきもの」=「ふさわしくないもの」がそれ。「下衆の家に〜」と始まって、ふさわしくないものが列挙される中に、「老いたる女の〜若き男持ちたるだに見苦しきに〜」とある。横文字名前のタレントは老女ではないけれど、清少納言ならこの一連のゲス騒動、何と評するだろう。それにしても自分の団体名によくも付けたりこの不快な名前。そしてまたそれにファンがいるってのも、老生にはとんと解す、否解せぬ話だわ。

◯月◯日 「あんな本・こんな本」の2013年8月号で大宮知信著「平山郁夫の真実」を取り上げ、平山の妻美知子が、遺産隠しで2億円を現金で洋服タンスに入れていたが、東京国税局から仮装、隠蔽と判断されて云々他話を紹介した。以前登別在住の絵描き故・佐久間恭子女子が、「平山の絵は感心できないけれど、どう思う?」と言う度に「賛成」と私は答えていたが、私自身は平山を絵描きと言うよりは、政商と見放している。

◯月◯日 脱税の後、毎日新聞で永い事美術記者だった安井収蔵が、件の美知子が、平山の訃報記事に作品を付けた各新聞社に、」代理人を通して著作権料を求めた、との話を呆れた口調で書いているのを読んで、心底ウンザリしたものだ。それが3月中旬、道立美術館に、昔有島武郎を中心とした北大の同人雑誌「さとぽろ」の回顧展を観に行ったら、ものすごい人出で、何だと思ったら平山邦夫展.「さとぽろ」の方は我々夫婦他2人。平山は観る気きがないので出てきたが、大方の人が平山の実像を知らないのだろうな。

◯月◯日 ウンザリと言えば最近知ったが、自民党歌と言うのがあって、それは「我らの国に/われらは生きて/われらは創る/われらの自由」とくるらしい。”われら”連発がいやらしいが、この”われら”には「保育園落ちた」他の多くの人は含まれていないんじゃないの?と思っちゃうね。しかもこれの作詞が岩谷時子と聞いて,頼まれりゃ何でも作る人なんだと、更にウンザリした。

◯月◯日 「野球賭博でプロ野球がダークなイメージになった。サッカーとの差が開く」との投書が出ていたが、イチローにもゴローにも感心がない私には、この感想正しいのかどうか判断がつかぬ。賭博と言えばサイコロだが、あれの1の目が赤いのは太陽を意味しているのでは?との説がある。というのは、サイコロの目には「天一地六」と言って方角がついているので、その天の1が赤いのは太陽では?との類推になる訳で、となれば、白昼堂々の野球賭博に御天道様も雲に隠れたくなるのでは!!

◯月◯日 私は碁なるものした事がない。親兄弟含めて周りに碁をする者が一人も居なかったせいだろうか。その碁で名人が人口知能にしてやられていて、囲碁九段がアルファ碁に弟子入りを申し込んだとの冗談が投稿されている始末。何やら必死の気配濃厚で碁石をつかんだ事がな一身としては、蕪村の「葉桜や、碁気(ごけ)に成り行く南良の京」=「葉桜の季節だよ。碁をしたい気分にな、奈良の都」の方がのんびりしていいなあ。

◯月◯日 二人の写生家の生涯を描いた素晴らしいドキュメンタリー映画を続けて観た。一つはよく知られたブラジル生まれのサルガドについて、もう一つは誰も知らなかったアマチュアのヴィヴィアン・マイヤーのもの。サルガドの傑作「金鉱」は金採掘の労働者5万人が金山の山腹にへばりついてかけられた梯子を、袋を担いで登り下りする図で、この有様にサルガドは鳥肌が立ったと言うが、これを最初に東京写真美術館で見たときの私の方も鳥肌が立ったものだ。V・マイヤーは家政婦or乳母をしながら、自分の生涯を隠し続け、その間15万枚のネガを残した人。半世紀前のアメリカを活写したストリートフォトが全部いい。R・フランクや、A・スティーグリッツも顔色なしと言った出来栄えで、画面に映し出される一枚一枚に驚嘆した。この二人の作品集、そのうち「あんな本・〜」で取り上げてみようと思う。

◯月◯日 DVDと言えば、70年代初めの「エマニエル夫人」が1月末に復刻された。本の方は翻訳が出ると直ぐに発売禁止となったが、洋書の丸善の山口札幌支店長が一冊確保してくれたお陰で、今も私の書棚にはある。医者になって今聖路加にいる姪が当時高1くらいで言うには、「おじちゃん、料理遅い女の人を何と言うか知ってる?」「しらん」「今煮える夫人て言うんだよ」と他愛もないことを言っていたのを思い出す。ポルノとしては悪くなかったが、映画化されての主演シルビア・クリステルは顔が長くて、私は嫌だった。

◯月◯日 これを書いている所へ、大分在の卒業生・市川君から荷物が届いた。市川君の母と妹は二代続いてミス◯◯だが、我が家で学生達と飲んでいるとき、その妹が九州から遊びに来た。部屋に入ってきた時、やや暫く沈黙で、ハハア、本当の美人を見たら皆ダマリコムんだと、初めて分かった。

 

司書独言(170)

◯月◯日 スマホ。私は持っていないが、これにタンタルとかタングステンなど数十種類の鉱物が使われている。ところが、その鉱物が採れるコンゴと近隣諸国では、これが武装勢力の資金源なので、これを「紛争鉱物」と呼ぶそうな。この悪関連を絶つべくオランダでフェアフォンが開発された。紛争に関連しない鉱物を使うんのが眼目。路上でスマホの迷惑は聞いていたが、こんな問題があったとは!!使わぬが一番だ。

◯月◯日 遅ればせながら、超一級の馬鹿女を知った。漫画家・蓮見都志子。英国の児童救援の国際支援団体「セーブ・チルドレン」の職員J・ハイムズが、レバノンのシリア難民の少女を写した写真をそっくり真似た、自作?のポスターに付けた文句が聞いて呆れる。曰く「安全にくらしたい、清潔な暮らしを送りたい、美味しいものが食べたい、何の苦労もなく、生きたいように生きていたい、他人の金で。そうだ難民しよう!」がそれ。この非常、この無知!!そんなに安全に暮らしたいなら「戦争法」反対のポスターでも描けないものか。といっても無意味だな。そんな才覚がありゃそもそも馬鹿はしないわな。

◯月◯日 最近目にした変な日本語を順不同に、①「元旦の朝」、旦は朝、夜明けだから、これだと元旦の朝の朝だ。②歴史を「紐解く」紐解くは下紐を解くとも言って男女が共寝することを婉曲に表現する(全訳読解古典事典/三省堂)。書いた人は褌でも外す気か?、本を読むと言いたいなら、昔の書籍は巻いて紐で結んであったから「繙く」(玄海)と言う。「繙読(ばんどく)と言うではないか!。声にすりゃ同じでも大分品格が違う。③「目を細めて微笑する」、目を細めるは、嬉しさや愛らしさに満面笑みを湛える(広辞苑)これに微笑(少し笑う)を足したんでは、筋肉も混乱して顔面神経麻痺するのでは!。④「暗転に沈む」は厄介だ。漢語林(大修間館書店)では暗転は人の知らないうちに(密かに運動して)地位が進むこと、で、これなら沈まず上昇だ。書いた人は沈みたい訳だから、事態が悪い方に転じる(大辞林)の意の方で、だとすると希望(上昇気分)は含まれず沈むは余計。ただ暗転するでいいのでは?。

⑤食堂で順番を待つ人の気持ちを「従容たる面持ちで」と書いたのがあった。従容は「生命の危険な場合などに、普段と同じように落ち着いている様子)(新明解国語事典)で、例文には「従容として死地に赴く」とある。さしづめ特攻隊員の気分だ。たかが食堂での順番待ち、なんぞの何ほどでもない場合に使うには大袈裟すぎるし、「面持ち」も余計。書いた本人は食べたあと切腹でもするつもりか?。これ我妻さんに見せたら、「空腹で死にそうになってたのかもね」と。あり得るか!!

◯月◯日 1月末、仏法曹が抗議の辞任をした。これフランスのトビラ法相の事で、鳥の「仏法僧(ぶっぽうそう)ではないぞ。人権を重んじる政治家として有名なトビラが、テロ対策の名目で国籍剥奪法案を提出するなど、諸所の人権を侵害する態度に変化しつつあるオランド大統領に対する批判、反対の意を込めての辞任だから、甘利なんぞの低次元の話とは違う。

◯月◯日 ところで、「名は体を表す」なる言葉があるが、「甘利」程ドンピシャリなのは珍しいのでは!。安住アナとやらの「ピッタシカンカン」なる番組の意味は知らぬが、「ピッタシ甘甘(カンカン)」で、安住とどこぞの事務所で落ち合うなんていうヤラセはどうだろう。甘利の自慢は先祖が武田信玄を支えた「武田二十四将」の一人「甘利備前の守虎泰」だと言うが、だと言って「とらや」の羊羹のイタダキははいただけぬ。

◯月◯日 「放送大学」は私には実態がよくわからぬ所だが。某所の客員教授・佐藤康宏東大教授が、日本美術史の単位認定のための試験問題として、「戦前、戦中に風刺画を描いて弾圧された画家」らを取り上げて説明した所、受験生670人の中一人が、「これは現政権の批判とも取れる文章」だとして、学長に抗議のメールを送ったら、ナント学長がこの問題の一部を学内サイトから削除した。この学長の態度、何を恐れての配慮か知らんが、気のまわし過ぎではないか。学問の自由も何もあったものではい。放送大学も「アッチ向けホイ」の籾井の支配下にあるということか。

◯月◯日 栄高校の創立100年史の執筆者という人が来て、5期生に学校祭の記録がないけどどうしてか?と訊く。それで思い出したのが、名は知らず名字が斎藤なるクレージー校長。この人温厚な樋口前校長とは全く異質の人で、自分も丸刈りだったが男子全員丸刈りにした。さらに夏は革靴禁止で、男子は下駄で、私は専ら足駄で通った。私は硬式野球の選手だったが、選手が真剣にプレーしているのに騒音は失礼だとして、試合中応援団の歌も、太鼓も声援も野次も、毎回選手交代時のみとした。結果対抗試合は静寂通り越して無言となって、誠に気勢の揚がらぬ事となった。この校長が理由は忘れたが学校祭中止と決めて、私にはファイヤー・ストームの経験がない。まあ「質実剛健」的人物だったのだろうが、先生にも生徒にも傍迷惑な人だった。そう言えば...

◯月◯日 同時期かもう一つあとかに、市の教育長が同じ型,つまり修身科的に頑固な人物で、先生たちが「健康なのも困るよな」と揶揄的愚痴をこぼしていたのをお覚えてる。校長も教育長も「知情意」兼備の人でないと周囲の人間にいい思い出が残らず、こちらの人生が味毛無くなる。栄校五期生は運が悪かったね。

 

司書独言(169)

⚪︎月⚪︎日 京都の下鴨神社で恒例の「蹴鞠初め」が1月4日に行われた由。中国渡来のこの遊び、鹿革の鞠を蹴り上げ続けて地に落とさぬようにするもので,平安時代に貴族間で普及.崇徳天皇の時の大納言・藤原成通が上手だったので、その子孫の公卿連中は師範=家元となって数十世代続いた。代表格が難波家と飛鳥井家。思うに三浦、沢、ちょっと変形で五郎丸だの、世が世なら公卿だ。なんだかおかしいいね。

⚪︎月⚪︎日 2013〜14年,大英博物館で「春画展」が開かれ大成功をおさめた。その学術的な図録(小学館刊/¥25,000)を昨年注文したら、高額なのに既に売り切れ。この成功を受けて、細川護熙元首相が理事長の「永青文庫」で、日本初の春画展が昨年開かれ,これもまた大成功。細川と美術研究者31人が都や警察庁と連絡を取り、万全の体制で臨んだ由。細川もいいことをしたもんだ。細川初めての善行ではあるまいか。それにしても日本人が生んだ世界最高級と称される芸術を、当の日本人が自由に見ることがかなわぬというのは変な話だね、

⚪︎月⚪︎日 大阪安治川河口の天保山は、確か4m余の小山(?)丘(?)だが、それでも登山証明書が出る。安治川の浚渫(しゅんせつ)で出た土で、1831年に築かれた。北京の景山は故宮の堀を掘った時の土で築かれた。4人組の江青が確か此処で捕まったと記憶するが、普段は市民憩いの場所だ。ところで長野、山梨とリニアで出る土、どう処理するつもりだろう。山は余っているしな。まさか、安倍の古墳をつくろうってんではあるまいな。

⚪︎月⚪︎日 2011年に英国の自然写眞家ディービット・スレイターが、スラウェシ島の写真集を出した。中にクロザルが「自撮り」したものがあった。クロザルが偶々置いてあったカメラを持ったのが「自撮り」になってしまったもので、面白いといえば面白いが、只それだけのこと。

⚪︎月⚪︎日 ところが、全米動物愛護団体「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)」が、この写真はクロザルに著作権があり、スレイターはそれを犯したとして、訴訟を起こした。閑というかご苦労というか...理屈は省くが裁判官はこの訴えを却下した。

⚪︎月⚪︎日 この馬鹿馬鹿しい訴訟で思い出した裁判がある.1925年、アメリカテネシー州の猿裁判だ。公立学校で進化論を教えた教師が、聖書の記述を絶対視する団体から訴えられたのだ。その言い分は、人間は猿から進化したのではなく、神が創り給うたもので。この教師は聖書を否定するけしからん輩だから、教師資格を剥奪せよ云々。

⚪︎月⚪︎日 この事件、映画にもなって、教師の弁護士役のスペンサー・トレイシーの演技が見事だった。さて申(猿)年。アメリカではこの聖書絶対視の連中が今も勢力を持っていて、かの脳足りんのブッシュを支持したのもこの団体。そのブッシュに猿回しの猿同然に引き回されたのが小泉という図だが、今またアメリカにはカルタ、花札、いやトランプなる白人至上主義の男が現れた。他の国ながら嫌な雲行きだ。

⚪︎月⚪︎日 日本医大特任教授・海原純子が書くには、さるスポーツクラブのレストランでビュッフェスタイルの朝食をした所、隣席のカップルが茹で卵を6ケずつ持ってきて、白身だけを食べ黄身は全部残して去ったと。スポーツクラブだから健康志向で当然、何か問題ある?と当人たちは言うだろうが,端から見りゃ矢張りもったいない。

戦争中は兵隊も餓死したし、民間人も空腹にあえいだ。今市立病院がある所は、昔は鉄道官舎で,どの家も前庭で芋他を植えて自給自足していた。

先日「花抜いて芋植える日が来ぬように」なる投稿句があったが,この句の意味する所、このカップルには通じぬのかも知れんな。

⚪︎月⚪︎日 「ふくろう文庫ワンコイン美術講座」で牧谿(もくけい)の国宝「猿猴図」を語るので、猿のことを色々まとめていた折も折、庭の干し柿を狙って5匹の猿の親子がやって来た。孫たちが喜んで一騒ぎの後、猿たちは去ったが、一番下の3歳の子が家に入らない。何でだと思ったら「ゴリラ?」と言った、という投書があった。いい話だなあ。

⚪︎月⚪︎日 これ書いている今日。道内大荒れの1月20日。思い出したのは,旭川駅の改築前、根室管内の図書館大会に講師として呼ばれた時のこと。

確か2月、何やら悪い予感がして前日は旭川泊まり、翌朝旭川駅のホームで待っていると、今くる網走行きの後の列車は吹雪で運休ですと言う。名札を見たら同じ山下。で乗って遠軽へ着いたはいいが、迎えがない。暫くして来たが、吹き溜まりに突っ込んでJAFに助けてもらったと。で会場に向かったが雪で何も見えず、といきなり急ブレーキ、前を見たら、真っ白い猫が歩いていて、こりゃ一体何?。結果は道路封鎖で参加者は誰も来ず、館長と話をして、昼飯食べて旭川まで戻った。という珍な体験。

⚪︎月⚪︎日 昨年、札幌円山動物園でグランドシマウマ、マサイキリン、マレーグマが続いて死んだ。聞いて呆れたのは、ここ専任の獣医が居なかったこと。何やらやる気のある司書を置かず知の拠点たる図書館を、単に営利目的の企業に外部委託する図書館の行末を見たような気分にさせられた。

 

司書独言(168)

⚪️月⚪️日 ロシアがチェチェンに侵略し破壊と殺戮の限りを尽くす。両親を殺されたショックで、話すことが出来なくなった少年は、赤ん坊を抱き村を出る。少年に声は戻るのか?...の「あの日の声を探して」を観た。戦争への怒りを描いて文句ナシの傑作。全編グルジアでのロケと言う。グルジアと言えば、放浪の画家ピロスマニと宮廷詩人ルスタヴェリの事を「本の話」で書いたのは1993年の12月。この二人を知ったのはそれより20年近くも前だ。映画を観た後、元気なうちにグルジアを訪れたいと思い、旅行会社に行った。 続きを読む 司書独言(168)