`99.1.29寄稿
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小此木真二郎(おこのぎ しんじろう)の「フレームアップ−アメリカをゆるがした四大事件−1 」は、岩波新書の一冊として、1983年に出た。いい本だった。
frame−up(フレームアップ)とは、事件や犯人をでっちあげることで、「3人の獄死者を出した横浜事件は拷問によるフレームアップとして有名だ」(朝日’83)と言った具合に使う。
小此木は「アメリカをゆるがした」と言ったが、私に言わせると、この四大事件は「アメリカを駄目にした」或いは「腐敗させた」と言うべき事件で、これらの事件をきっかけにして、アメリカでは「暴力」が幅を効かすようになる。
四大事件の最初は「ヘイ・マーケット事件」で、タイトルは「誰が爆弾を投げたのか」・・・・で、これは、つまりは、労働者階級が組織化されることを忌み嫌った資本家側からの攻撃の話なのだが、「・・・・ピンカートン探偵事務所と言う存在は、〜いくつかのフレームアップ事件にかかわりを持ち、またアメリカ労働運動史全般とも深く関係している。」と言う具合にしてアメリカにおける私立探偵業の先駆者、アラン・ピンカートンが歴史に登場してくる。
政治史だの、労働運動史だの、七面倒くさい話は大嫌い・・・と言う人も居ようが、ちよい待ち草のやるせなさ・・・・ コナン・ドイルの「恐怖の谷」は、炭坑夫達の秘密結社「モリー・マグワイア」の話をヒントに出来た話で、・・・・この組織をつぶすために資本家側がスパイとして使ったのが「ピンカートン探偵事務所」の面々だった。
このいけおかない会社の全体像を物語る本が出た。面白い!!「血の収穫」「マルタの鷹」のダシール・ハメットも、かつてはこの会社で工作員として働いていたのだが・・・・と言う話は良く知られた話。
ピンカートンの話は組織的スパイの話。こちらはその名もおどろおどろしい「隠密(おんみつ)」の話。
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まあ、間宮林蔵が幕府のスパイだったと言うことは今ではかなり知られた話で、と言っても、私がその説を最初に知ったのは、吉川弘文館刊行のシリーズ「人物叢書2 」中の、洞富雄(ほら とみお)の「間宮林蔵」でだった。
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ところがそのあと、清水書院の「人と歴史シリーズ3 」が出た赤羽栄一の「間宮林蔵−北方地理学の建設者−」を読むと、評価がまるで異なっている。私は大いにとまどったが、
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小谷野敦4 も、とまどった口で、こうも相反する評価が、如何にして現れたかをさぐりにかかる。
このさぐりにかかった部分が全13章の中の最後の2章・・・ ちょっと「へりくつ」をこねる感じの文章だが論理は悪くない。そして面白い。
だけど私はやはり間宮林蔵を好きになれない。
どこかのテレビで「楠木正成」をやっているのか、それともこれからやるのか・・・ 最近、楠木正成の本が文庫などで目につく。
時の人は「忠臣(ちゅうしん)」と言ったって何のことかわからぬだろうが、これは「忠義な臣下(しんか)」のことで、臣下とは家来のことだが、「忠臣は二君に事(つか)えず」(=忠臣は一旦主を定めた以上、再び他の君に事えぬこと)と言った具合に使う。
ところで、昔(とは第二次大戦が終わるまでだが)は、忠臣と言えば、それは、即、直ちに「楠木正成(くすのきまさしげ)」だった。何故か、後醍醐天皇(ごだいごてんのう)を守って、天皇に反旗をひるがえした足利尊氏(あしかがたかうじ)の軍勢と湊川で戦い、見事(?)討死を遂げたからだ。ところが今、この正成、人名事典なぞには「忠臣と称(たた)えられた悪党」なぞと出ている。この落差!!
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この落差の理由を知りたい人はこの本「楠木正成と悪党5 」を読むべし。非常にいい本だ。
探偵、スパイ、悪党、と物々しかったから、[tmkm-amazon]4770409788[/tmkm-amazon]
最後は心に沁みる静かな本を一冊。紙面がないので、帯を読んで下さい。 6
‘99.1.29(金)