司書独言(214)

◯月◯日/私が国民学校(太平洋戦争中の、今なら小学校に該当)1年の時、我が家の一軒おいて隣に石川さんという町工場があった。遊びに行くと、何を作っている工場か知らなかったが、いつも何本ものベルトがビュンビュン回っていて、「手をはさまれるなよ」と注意されたものだ。名前は忘れたが優しい職工さんがいて色んなものを作ってくれたが、中に潜水艦があった。木製で底に鉄の錘がはまられていてゴム仕掛けのスクリューもちゃんと付いていた。銭湯へ持って行って湯船の端から動かすとおもむろに沈んでいって、バネが緩むとうまい具合に向こう端の直前で浮かび上がるのだった。 続きを読む 司書独言(214)

第406回あんな本・こんな本(ひまわりno222) 政教分離について、シュタージの犯罪

2019.12.11寄稿

2018年11月末だったと思うが・秋篠宮が五穀豊饒を祈る「大嘗祭」は皇室行事であって、これに国費を当てるのは、憲法に定められた政教分離に違反する事だから、これにかかる経費は天皇家の私的生活費たる「内廷費」を使うべきだと発言した。これ聞いて、私は実にまともな考えだと感心し、かつまた皇族の中にもかように国民主権、政教分離についてきちんと考えている人がいるんだなと、或る意味感心もした。しかし世の中様々だから、或る週刊誌なぞはこの意見をからかって次のようなことを言ったりした。「即ち秋篠宮は経費のことをあれこれ言うが、そのくせ自分及び家族が外遊する時には、大嘗祭にかかる費用よりも多額の金を使っている。この経費の方が問題で、何やかんや言うならこれを止めた方がいい」云々。無論安倍政権は、秋篠宮の意見なぞどこ吹く風で、「皇室の伝統を尊重」の一点張りで周知の如き祭りを強行してしまった。しかし歴史学者中島三千男によると、この「伝統云々」はでたらめで、(既に行なわれてしまった)純神道式の「代替わり儀式」なるものは「たかだか150年前の明治以降に新しく創られた伝統に過ぎない」のだという。もっと笑わせてくれるのは奈良時代から江戸時代までの1100以上は、その即位式たるや中国風の服装で行われたというから、今盛んに「嫌中」を強調している連中、これを知ったらかなりショックを受けるのではあるまいか。

ついでだから一つ加える。NHKに安倍べったりの岩田明子なる政治記者がいる(といっても私は見たことがないが)「神道」大好きな安倍流に言うと、この岩田はさながら安倍の「巫女」よろしく、「大嘗祭は極めて重要な伝統的皇位継承儀式」云々と歴史を無視した安倍の御託宣を、安倍に代わって番組で下々に伝えていたとのことだ。さて「大嘗祭」はこの辺りにして、現天皇は伊勢を初めとして皇室に関係のある神社を全部巡った。思うにこれは天皇の意思というよりは「国家神道」を復活させたい安倍指示によるものではあるまいか「天照大神」の子孫たる天皇と、その天皇の治める「神国日本」の再現が安倍目的だろうからだ。そこで今回は、「天照大神」他を祭神とする「神社」なるものが、「太平洋戦争」中に占領した朝鮮、台湾他の国々でどれ程の迷惑を(本当は悪事といいたいが)引き起こしたかを調査した本を出しておこう。辻子実「侵略神社1 」だ。

各地に設けられた神社は、日本の敗戦と同時に殆ど焼かれた。現地人にとっては「神社」なるもの、ありがたくはなく全く無縁のものだった訳だ。(これは新年号だから)昨年2019年でいわゆる「ベルリンの壁」が崩壊してから30年たった、ということでいろいろな記事が出た。どの記事にも「シュタージ」のことが出ている。「シュタージ」とは、社会思想史が専門の中野徹三によると、旧ソ連の「KGB](カー・ゲー・ベー=秘密警察)の全身である国家保安省「M.G.B」をモデルに1950年2月に東ドイツに設立された「国家保安省」。

その役目はと言えば、言わずと知れた対外情報活動と国民監視と弾圧。壁がこわされた時点で正職員9万1千人、財産600億マルク、東ドイツ国家予算の13%を費やす巨大組織。この恐るべき組織の元本部が今「シュタージ博物館」となっているのだが、そこにある膨大な文書は製本したものを横に並べると178kmに及ぶと言うのだからすごい。

何故そんなすさまじい数の文書があるかというと、これ600万人分の個人情報。つまり「シュタージ」は企業、学校、教会etcとあらゆる組織にひそむ反体制派を見つけるべくIM方式(=非正規職員)をとって、実に実に50万人を「密告者」に仕立て上げ、市民同士をお互いに監視させていたのだ。結果、密告し、密告されーの個人情報が600万人分。
「シュタージの犯罪2

先に言っておくが、このすさまじい量の文書を破棄、焼却から救ったのも、これまた心ある市民たちで、彼らは先ほど引いた中野によると、文書を国に保全させ、自分たちに加えられた密告行為の記録を閲覧して真相を知らせる権利を保障させ、また被害者の人権を守る条件のもとで研究者とジャーナリズムに文書の自由な研究を認め、2度と独裁を許さないよう市民の政治教育の資に供するシステムを生み出したという。

ルワンダのフツ族ツチ族の抗争中におきた虐殺で、隣の小父さんがナタで殺しに来た、と言うような話が沢山あったが、東ドイツの密告も同様で、長年連れ添った夫が妻を密告していたとか、親友と思っていた男が自分を密告していたとかーそうした情報がつまっている文書なので、逆に閲覧を希望しない人も沢山いるという。ここで、親友に密告された例を一つ。ライナー・クンツェと言えばスエーデンやオーストリアなどの外国文学賞を受けた作家で私の書棚にも「素晴らしい歳月」(大島かおり訳,晶文社、1982年刊)がある.1968年チェコ事件を機に、77年に西独に亡命(というより追放されたが)、彼を密告したのが親友のオブラヒム・ベーメで後に東独社会民主党議長となった男。クエンツェは後に先に記した文書でこのことを知りことの顛末を自ら書いたのが「暗号名”抒情詩”ー東ドイツ国家保安機関秘密工作ファイル3 」(草思社)だ。

私はサッカーをしないし観もしないが、新聞に出るサッカー選手の互いの人種差別、ファンの同じ行為には注意を払っている。目下ラクビーだ、サッカーだと何やら乱痴気さわぎだが、「独裁国家」はそのサッカーまでを己の体制に組み込むもので、組み込まれた結果のすさんだ有様を他山の石として出しておこう。本当は陣野俊史の「サッカーと人種差別4) 」(文春新書)を出したいが、「シュタージ」の後だからナチス関係を出しておく「ナチス第三帝国とサッカー5」だ。オリンピックで浮かれ、「桜を見る会」を忘れている中に,雲ゆきあやしい、てなことにならなければいいけどな。

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  1. 辻子実.侵略神社.新幹社(2003) []
  2. 桑原草子.シュタージの犯罪.(中央公論社(1993) []
  3. 山下公子訳.暗号名”抒情詩”ー東ドイツ国家保安機関秘密工作ファイル.草思社(1992) []
  4. 陣野俊史.サッカーと人種差別. 文春新書(2014 []
  5. 田村光彰訳.ナチス第三帝国とサッカー.現代書館(2006) []

司書独言(213)

◯月◯日/「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展、その後」の中止については、私は今まで何度も批判してきたが。9月末「図書館問題研究会」が、同展への補助金を求める要請書を発表した。中で曰く(萩生田が補助金を撤回したのは)事実上の検閲としての結果を持ち、今後の表現、げ術活動の萎縮をもたらす表現の自由への明白な抑圧だ」と。正論だ。10月末には自由法曹団からも弁護士の中谷雄二が、愛知県の検証委員会で展示内容の変更を求める意見も出たことに対し、「作家にとっては検閲そのものだ」と指摘した。これまた正論だ。

◯月◯日/血も涙もない二階が「まずまずで収まった」と突き放す台風19号の被害はまだまだ収まる所ではないが、これに対して政府がようやく7億1千万を出すと発表した。自治体の要請を待たずに物資を送る「プッシュ型」を採るというものだそうだ。貴方ならこれ感謝する?私ならしないね。だってだよ国民が頼みもしないのに税金使って買った例のステルス戦闘機F35って1機116億円だよ。それも105機買うんだよ総額いくらになるか知りたいが、私が「ビックリドンキ」(だか)で買った¥600の卓上計算機ではケタが足りない。これ全部防災にまわしたら「まずまず安心」と言うことにならんかね。

◯月◯日/それともう一つ忘れない中に・・・例の安倍が我々の税金を使ってやる「桜を見る会」の2020年度予算概算要求が出た。その額今年の3倍の5,729万円。貴方これ何とも思わない?桜見入るなら自費で行けよと思わない?これ例えばだよ、どこぞの市長が市税使って自分のお気に入りの市民だけを花見に招くってのと同じ質の話なんだよ。そういえば今度脱税と報じられた、猫と暮らしているナントカ言うタレント。彼も確か呼ばれていたんではなかろうか。このタレントイケメン1位と出ていたが、私から見ると単にヒンマガッタ顔に見えるけど、これ私の乱視の度がひどくなったのかな。それにしても、「花咲爺」が「それでは花を咲かせましょう」と灰を撒くのはともかくー一国の首相に税金バラマカレタンでは国民たるものいい迷惑だ。

◯月◯日/トランプは安倍から相撲見物に誘われると「それはアメリカン・フットボールよりも面白いのか?」と聞き返し、「100倍面白い」と聞かされて観に来たと言う。こんな話を思い出したのは元フランス大統領シラクが9月末に死んだとの報道が出たからだ。トランプは土俵の真ん前で一脚50万の椅子に座って見たが、どうせならこんな日本無理解の無学な男より、シラクを座らせたかった。シラクは大の相撲好きで自分の愛犬に「スモウ」と名付けた程なのだから。

◯月◯日/前号で、名古屋の河村市長が「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展、その後」が再開された当日、「再開反対」のプラカードを持って開場前であぐらをかき、これを知った愛知県知事がツイターで「呆れた」とつぶやいたとの記事を紹介した。その暫くあと、今度は落語家の「志らく」が自分が司会番組で「私も河村市長の隣に座りたい」と言った云々を聞いて、又々呆れた。

◯月◯日/司会に抜擢されて舞い上がっちゃッのか。テレビ評でその司会が下手なので、「一介のコメンテーターに止めておけばよいのに〜」との評が出たのを読んだが、私はこのタレントでウンザリした事がある。それは何の番組か知らぬが、この落語家の日常生活を写すもので、この男が「愛人」と呼ぶ愛娘を連れて街に出る。そして娘が欲しいというものを手当たり次第に買いまくるもので、その時思った事は、これを給食費も払えない家庭の子供や、施設にいる子供たちが見たらどう感じるかという事だった。総じてテレビに出ているタレント達、「馬鹿金」もらい過ぎて日常感覚がおかしくなってきているのではないかね.

◯月◯日/チリの首都サンディエゴは温暖化抑制に向けての電気バスの活用が世界でも先駆者だとの記事が出て、そこに地球儀上のチリを描いた絵に「地球大好き」と入った手作りのパネルを持った実に可愛い少女の写真がのっている。これで思い出したのが日本の某拡大鏡の宣伝。どこぞの飲み屋で大の大人が揃いも揃って「〜なんとか大好き」とウインクしてみせるあれ。はしゃげばいいと思っている元テニス選手など見られた様じゃない。先のパネルの少女が見たらその言葉「大好き」の意味合いの違いにびっくりするのでは!!。

◯月◯日/これまた前号で、顔を黒塗りにしてお笑いに登場したタレントの人権感覚無視の無知を話題にしたが、その後俳人の堀切克洋の文章を読んで、各国の移民研究者から成るシンクタンクによる「移民統合政策指数(2015)において、日本は差別禁止の項目で38ヶ国中37位だと知った。唖然とするね。馬鹿芸人がはびこるのも無理はないか。

◯月◯日/前号で「大学入試改革」の事に触れ、元文科省の下村とか楽天の三木谷らがこの改悪策の推進者だと書いた。そして東大英米文学教授阿部公彦の「入試を外注する事が根本的な問題だ」との指摘も紹介しておいた。この問題きれいごとで済まないと思っていたら、案の定裏事情があった。興味のある方は「週刊文春」11月14日号p34、「安倍”おともだち”と英語試験業者の蜜月」をお読みあれ。其処に下村の写真が大きく出ている。

◯月◯日/この下村は元学習塾の経営者。その後援会が「博友会」。私は以前「江戸しぐさ」なるもののインチキ振りを暴露した本を読んだ時に、この下村とその集金体制を知ったが、そのとき某紙の記者が「胆震管内だけでも下村信奉の小中学教諭が200人はいますよ」と聞かされた。嘘か本当か?それはともあれ、話を戻してこの入試改革、薄汚い事は間違いない。

○月○日/前々号で横浜の女市長がカジノを決めた話から、「道民目線」なる言葉で本音をくらまし続けてきた道知事の煮えきらない態度にも触れた。その後の報道では「ハマのドン」こと藤木幸夫、横浜港運会会長(89歳)が「命かけて反対する」と表明し、埠頭からの立ち退きを迫る市に対し、港湾業者達がこれを拒否して港に泊り込みを開始している。さて、お隣の苫小牧。先日市議会がカジノを決めた。

○月○日/横浜の場合は、推進者はトランプとそのトランプへの一番の献金者ジェルドン・アデルソン(ラスベガス、サンズなるカジノ経営者)と安倍3者の構図だそうな。しからば苫小牧の場合はとなれば、それを解いてくれるのが「週刊新潮」11月14日号の「”橋本聖子”に”違法献金”の企業グループは”北海道カジノ利権”プレイヤー」が詳しい。やっぱりな。興味ある方は一読なされ。

○月○日/それにしても、各新聞社はいささかだらしなくないか。自分の名入りの時計を配った経産相、スピード違反する法務相等々。みんん週刊誌の後追いばかりだ。

○月○日/今「等々」と書いたが、今この「等」が注目されている。例の「桜を見る会」がらみの言葉だ。今月のこの文章の初めの方でこれに触れてから暫く他のことにかまけて書き足さずにいたら、今朝11月14日朝刊に「”桜を見る会”来年度中止」と出た。この会については、かつて投書文芸欄に「桜を見る会」と題して「”サクラ”がいっぱい」(山口後援会)なる、まことに秀逸な作がのったことがある。

○月/○日/それで、この「サクラ」を旺文社の「国語辞典」で引っ張ると、「①露天商などの仲間で、客のふりをして品物を買い、見物人の買う気をそそるように仕向ける者、②芝居や演説会などで、主催者と共謀して拍手したり賛成したりする人」とあって「語源」が続く。それは「芝居で無料の見物人を只で見る意で”桜”と言った事から」これは笑わせてくれるな。庭であれ、山野であれ、他人の者であれ、自分のものであれ、本来桜見物は只だった訳だ。

○月○日/となれば繰り返すが、本来「只」で見る(られる)桜を、時の政権は「税金」を使って見せるとは!!安倍一統もふざけたもんだ。これに加えて見るに耐えないのが安倍に呼ばれて嬉々としている芸人達。前に小沢昭一の本を引いて、芸人のあるべき姿に言及したが、本来社会の”はみだし者”たる芸人達が時の権力者に招かれて嬉しがっているとは!!西洋の「道化」も日本の「幇間=太鼓持ち」も職業として承知の上で、自ら卑下し、人を笑わしとしてやていた。写真を見ると・・・安倍と並んで嬉しげな芸人達の名をあげたくなるが、本人も写されて恥ずかしいかろう…否、ではないな。自分まで偉くなったような気でハシャイデいるんだろうな。

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