2013.6寄稿
○月○日 先頃の大風で市内各所で多くの木が倒れた。見るも無残な切り株があちこちに見える。ところで、室蘭は「花と緑のサークル都市」などと美称を口にしているが、どうも言うだけで,他市に較べて、どう見ても花と緑がつながっているなんて印象はない。いたずらに街路樹を植える枡の数はほこるだけで、倒れたら折れたまんまの感が強い。古いビルが無くなって駐車場になるのが結構あるが、そこには木の一本もない。
○月○日 建築家・安藤忠雄によると、「神戸コロッケ」で有名な岩田弘三は、工場内に従業員の人数分の柿の木を植え、成った実は社員で分けているという。室蘭の企業家の全部が全従業員の数とまではいかなくとも、せめて1本でも2本でも樹を植えてくれたら、いつの日か或いは緑がつながるかも知れん。その根本に花を植えれば花もつながるかも知れん。室蘭は狭くてそんな余裕の土地はないわ、と言うなら、話しにならんけどね。心の持ち様の問題だわ。
○月○日 街路樹と言えば、36・37両国道の松の枯れようが凄い。殆ど真っ茶になっている。全滅するのでは?と毎日心配だ。家庭の松も檜葉も軒並みやられていて、この原因が虫なのか雨なのか、又管轄がどこなのか分からんが、誰かが音頭をとって枯れ枝落としをやらねばならぬ時に来ていると思うがね。「白砂青松」なんて風景は今や望めぬとしても、両国道唐松全部消えたらへんなものだよ。
○月○日 安倍首相が戦車の次に戦闘機に乗って現われ、次は何だと思っていたら、ビートたけしと並んで出た。たけしは「場違いな感じ」と発言してるが、権力にすり寄る癖のたけしには相応しい場所で、場違いではない。昔から芸人が権力に近付いたら、その末路はもう太鼓持ちに決まっている。たけしが自称するやに見えるアウトローなら、最初から安倍とは並ばぬ筈。馬脚を現した訳ではなく地が出た訳だ。
○月○日 「本屋大賞」なるものは知っているが、今まで何の注意も払った事がなく来た.それが「海賊と呼ばれた男」が出て、広告では「出光佐三」が主人公だという。あの出光美術館の出光なら読んでみたいと思っている矢先に、これが本屋大賞と決まった.それはまあどうでもいいが、或る事で買って読む気が全く失せた。
○月○日 というのは、作者の百田尚樹が「タカジン」の番組に出てハシャイデいるのを見たからで。この番組、中国に直ぐにせめて行けと叫ぶメガネの丸坊主や、橋本の後押しする慰安婦はなかったとする元NHK社員や、あの田母神を「面白い人だよ」などとする故禿頭老人やら、乾物のタツノオトシゴみたいな宮家の人やらと、何だか変に威勢のいい連中が揃ってて、ソバ屋だから仕方なしに見ていたものの...まあ、世の中に事を起こしたげな人間が揃っているなと思っているが、そこにこの百田が出て、陰一つない表情でしゃべっている。嫌になったね。
○月○日 「ふくろう文庫」が目出たく5,000冊に達したので、今まで寄付してくれた人全員にその喜びを伝えた。14年間の寄付者の中には既に故人もいるから、その場合は遺族に、又伴侶をなくして子供達の所に引き上げたと言う人にはその移転先へと、記録をたよりに出し終えたが、宛先に居らず出戻って来たハガキも10枚余枚あったから、洩れた人もいたに違いない。申し訳ないが仕方ない。知らせが行かなかった人にはこの場でお詫びする。
○月○日 ところで人様々だが、私の知り合いで、まあ普通の教養人だと思っている人がいるが、この人がいつも言うには、「山下さん,絵見て何になるの」と。見て何もならん人には答える術がないから私は笑っているが、つまりこれは美術に「無縁の人」で仕様がない。只、邪魔をしないでくれと思うのみ。この人と違って、新宮前市長は三谷秘書課長のスケジュール捌きのうまさもあって、「ふくろう文庫」展には必ずお顔を見せて、時間の許す限りいた。市長が見に来ると言うのはありがたい、と言うのは、偉い人が来るからありがたいのではなくて、市長が人類不滅の価値を持つ美術なるものに興味を示す、或いは共感を示すと言う事は、その人個人の文化度の高さに関して、まわりのの人の評価が高まるということの他に、公人たる立場から理の当然に、首長としての文化度、強いてはその地の文化度をはかる目盛りともされる結果になる訳で、私が新宮市長の参観にいつも感謝し胸をなで下ろしたのはそこに理由がある。先日、図書館長が室工大生一人を連れて来たので、ダ・ヴィンチの手帖を見せると、鳥肌が立つと感激してた。「何になるの」に聞かせたいせりふだ。
○月○日 一つ加えると、長老の某市議は市議の中で只一人「ふくろう文庫」展の皆勤賞者だ。この人は、いいふりこきせず、ここは何を描いたのか?とか、これは何か意味があるのかと訊きながら、二時間は見ている。人生に潤いをもたらすために、と「ふくろう文庫」を続けて来た身には、こうした市長とか市議の存在は嬉しいもので、これが全員に及んだら、何か色香みたいなものが、市全体に漂い始めるかも知れぬ。