2016.8.寄稿
小樽の裕次郎記念館が閉館するそうな。昔、法事のとき義兄に頼まれて、本州勢の親族達の小樽案内をしたことがある。私は全く興味がなかったが、横浜勢の希望で入った。そのとき別の小母さん達団体が、口々に「裕次郎が死んだのは飲みすぎたんだ」と言ってたのが記憶にある。
それはともかく閉館の理油は、建物の老朽化で、改修費の2億円が捻出できないからだと。聞いて不思議なのは、ナンデ慎太郎に出してくれと頼みに行かないんだろう。だって...慎太郎は不良の裕次郎と、その仲間のチンピラ達のろくでない行状をモデルにして小説「太陽の季節」を書き、それを(また愚かなことに)文壇という隔離された世界に住んで世間知らずの審査員(文学者?達)が驚いた結果,賞を与え,それが映画化されると呆れた事に、モデルの不良=裕次郎が主演をつとめ...で、この本と映画のお金で、父親が死んで破産寸前だった石原家が救われたーと言うのは周知の事だ。おまけに慎太郎は政治の世界に出た時、「石原裕次郎の兄でざいます」といって当選した。私が思うに、慎太郎は裕次郎に、俗に言うところの世話になっている訳だから、2億円位出してもいいんじゃないの。「空疎な小皇帝「石原慎太郎」という問題 ( 斎藤貴男.空疎な小皇帝「石原慎太郎」という問題.ちくま文庫(2006))) 」
それと石原軍団とやらの面々も裕次郎入院中に並んでテラスから手を振るばかりが能ではあるまい。この際全員して2億円カンパしてしかるべきじゃないの???
ところで慎太郎は,遂先だって「大年増の厚化粧」なる発言をした。これはかつて「文明がもたらした最も悪しき有害なものはババア、なんだそうだ」につながるものだが、そういう女性達の石原観はどうか。
「〜彼の表情を見ていると、絶え間なく瞬きを繰り返している。〜石原氏は本当は”びびり”なのだろう。しかしそれを隠したいために、ことさら卑猥で粗野で下品で、ひんしゅくを買うような表現を繰り返す。弱い男がケンカをする時、やたらと突っ張って虚勢をはるのと似ている。(辛 淑玉、怒らない人、角川)序でに〜辛のビートたけし論。「こういう癖(石原のまばたきをさす)をもったタレントは〜ビートたけしだろう。彼がやたらと首をひねるのも石原と同様の癖で、それは、彼の表向きの粗野さや下品さの陰に隠された過敏で繊細な神経を物語っている」
も一つ序でに,上野千鶴子のたけし観。たけしが落ち込んだ時、「俺は北野武だ。お前をくどいている暇はない〜俺と寝てくれ」って言うんだって〜これ落ち込んだ時に娼婦を買いにいく男と同じ理屈ね」(上野千鶴子・辛淑玉・佐高信、ケンカの作法。角川)
私はすでに2009年に11月号の本欄で、石原批判をやっている。そっちも是非読んでほしい。「HTTP://t-yamasita.info/」で読める。石原の浪費は舛添どころのさわぎじゃないぞ。
8月11日早朝「本の話の原稿書き終えてから、陽の上がらぬ中に、と墓掃除に行ってきた。これで本州勢・札幌勢いつ来ても大丈夫だ、気持ちよく墓参りできるだろう。
さて、今日は「山の日」。この日を記念してデパートでは「全品山盛り」だの、苗字に「山」の字のつく人におまけだの、又、各地で老若男女の団体登山だの、etc.とやっている。「平和」のおかげだ。
平和でなければどうなるか。先ず「山盛り」は消えるね。先の15年戦争下、食料不足だから、登山はおろか、ハイキングでも只歩いてはダメダ、両手は何のためにある、歩きながら食べられる草を採りましょうーときて、発案されたのが「国策摘み草ハイク」。ところが、このハイキングは敵国英米の「hiking」で、適正語だから使用禁止ときて、「健歩」なる言葉に変わった。又敵のスパイがどこにおるかわからんから、山の上に着いたとて、あれはどこ、ナゾと指指し確認はダメ...で、登山もお国のために登らねばならんと来た。...で、私は2011年2月27日の「本の話」NO.567で、西本武志の「十五年戦争下の登山(本の泉社)を紹介しつつ、平和であっての登山を強調した。我が文章ながら古くはなっていないので、その文章を前ページに載せておく。きな臭い当今、「山盛り」食べていれるのも今のうちだぜ。
昨年の6月だったか「トラッシュ!この街が輝く日まで」なるブラジル・イギリス合作映画を観た。舞台はリオデジャネイロ郊外のゴミ捨て場。ここでゴミ拾いをして生活している少年3人の話だ。政治家の汚職、警察の腐敗、抵抗する者への弾圧,社会の下層にいる者への仮借ない差別。この世界に希望はあるのか、...その国でオリンピック・・・・私は本当のところ呆れている。
何しろ、警察の腐敗と言ったって、甘い汁を吸っているのは言うまでもなくおエライ方達だけで、末端の警官にはおこぼれもないどころか、給料遅配とて、オリンピックの開始直前、「給料払え」との現職警官のストがあって、写真を見ると、ずらりと並んだ警官が皮肉なのか「Welcome Brazil」の横断幕を掲げている。でオリンピックが始まると、ポルトガル教育相が強盗にやられるわ、ベルギーのレスリングの選手が海岸で強盗事件に巻き込まれるわーと、だから言わんこっちゃないという感じ。只悪の根源は政治にあるとはっきりしている。
まあそんな変なオリンピックでも、世界の種々相は反映されていて、感動させられる話が次々おきる。その2つをきっかけに2冊の本を紹介しよう。柔道で金メダルをとったケルメンデイ。内戦で傷ついたコソボの選手だ。その内戦とは何なのか?。ユーゴ連邦が崩壊した後「民族浄化」なる凄まじい民族間の内戦が起きた。それを解明したのが、ちょっと古いかも知れぬが、田谷千香子の「 『民族浄化』を裁くー旧ユーゴ戦犯法廷の現場からー1 」。「オリンピックでコソボの国家が聞ける夢が叶った」と喜ぶケルメンディの背景を知るべし。もう一つは、難民選手として競泳女子100mバタフライに出た、シリアのユスラ・マルディーニ18歳。
昨年夏、救命ボートを押しながら、ギリシャのレスボス島に辿り着いたという。今や難民の目指す地となったレスボス島。だが、ここは女性の美しさを、簡明で率直な詩句で称えた女流詩人サッフォー(紀元前612頃?^?)の生地だ。
暗い話題が続いたから、最後は詩の世界に遊ぼう。「Lesbos=森林の多い」に平和が戻ることを祈ろう。
- 多谷千香子.『民族浄化』を裁くー旧ユーゴ戦犯法廷の現場からー.岩波新書(2005) [↩]