司書独言(220)

◯月◯日/京大出の中国文学者、井波律子が5月13日に亡くなった。76歳。この人の本はテーマが面白くて結構読んで来た。かの「孔子」が背丈216cmの大男だなんてことを初めて知ったのは井波の「奇人と異才の中国史」からだった。井波の好きな詩人「蘇東坡」も入っている「中国文章家列伝」も良かったし、「破壊の女神〜中国史の女たちーも面白かった。我が書庫の中国文学の棚を豊かにしてくれていたこの人の本が、もうこれ以上増えないのかと思うと読書の楽しみが一つ減ったような気がする。残念だが、冥福を祈るのみ。

◯月◯日/40年前の5月、韓国で民主化運動が起きたが弾圧されて300人余りの死者、行方不明者が出た。「光州事件」だ。弾圧の指揮をとったのは後の大統領全斗煥。これを映画化したのが「タクシー運転手」。主役はソン・ガンホ。最近各種の賞を総ナメにした「パラサイト」の主役の人だが。前の朴槿恵政権の時には、「政府に協力的でない文化人」としてブラックリスト入りしてたそうな。

◯月◯日/文在寅大統領は5月18日、光州市で独裁と闘った光州市民を讃えて「40年前、光州は崇高な勇気と献身で、この国の主人公は誰かを見せてくれました」と演説した。光州の惨状を世界に届けたドイツ人記者は共に走り回った韓国人のタクシー運転手の身元がわかる人は伝えてくれーとのメッセージを映画の最後で発したが。去年の7月、この映画を見た運転手の息子が名乗り出た都のニュースが出た。息子は映画を見ていて「父だったのか」と気付いて泣けて立ち上がれなかったと語る。いいニュースだった。まだ観ていない人はDVDも出ている、是非ご覧あれ!

◯月◯日/「この国の主人公が誰かをみせてくれました」と言えば、5月19日、わが国でも「民主主義の底力」らしきものを示す事件が起きた。「検察庁法案」が、インターネット上で広がった世論の反対他で、今国会成立を断念したこと。同じ日の朝刊に一寸笑ってしまった事件も載っていた。名古屋で「コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言中」にもかかわらずドアが3枚もある「3密」の状態の中でバカラ賭博をやっていたとして3人が逮捕された云々。この「3密」がナンダカ笑えるね。

◯月◯日/ ところが5月22日になると、黒川検事長が賭けマージャンを認めて「訓告」されて辞任したと出た。こっちも「3密」の中でのトバクなのにタイホでないとはいささか不公平ではないのかね。しかし検察のトップがギャンブル依存症じゃ国民もシマらんわな。それに安倍も、外出自粛の最中に、大分の宇佐神宮くんだりまで出かける能天気の細君に”訓告”位してもいいのでは??

◯月◯日/コロナで古本屋は開店ダメとなって、名にしおう世界の古本街。かの神田神保町でも9割が休業中だとて、神田古本店連盟会長の「矢口書店」の当主が「大正7年(1918)の創業だが病気の流行での閉店は初めて」と苦情を述べている。56歳というが何代目なのだろう。この店映画、演劇、シナリオの専門店だが私には苦い思い出がある。というのは高校を出て上京した時、最初に行ったのがこの店で。¥13,000余で30数巻の昭和9年板「鴎外全集」を買った。文字通り背中にかついで喜びいさんで下宿まで戻った。

◯月◯日/当時の仕送りが12,000だったから、¥13,000は出費も出費で兄にえらく怒られた。(然しその¥13,000は上京に際して私がもらった餞別の一部だったから兄にとやかく言われる筋合いはなかったけどね)それはいいとして、下宿で30数巻広げると、一冊だけ函が妙だ。よく見ると、5巻の函が本体より薄くてギュウギュウになっている。変だと調べると背文字の漢字の三が五に墨で直されていたのだ。思うに端本を集めて全巻を揃えるのに函のないのがあって、それでダブっていた「三」の函を直して全集に仕立てたのだろう。これあって後、私はここで買ったことはない。

◯月◯日/それにしても何故上京直後にまっすぐこの店に行ったのかと言えば...私は高2の時だが、全国高校弁論大会に全道代表として岩見沢東高の人と2人選ばれて出場したのだ。と言っても自発的ではなく、社会科のエロポンこと水口先生に行けと言われて出たのだが、その時の会場が確か神田三崎町の日大の講堂で大会終了後私は神保町迄歩き。岩波の先、九段よりのこの店で記念に叢文閣版10巻の布装重厚な「有島武郎全集」を買い、トランクに詰めて帰蘭したことがあったからだ。上記の2全集は今も2階の書庫にある。堂々たる本だ。

◯月◯日/何年前か忘れたが「ルワンダの虐殺」なる映画を見た.1994年に起こった事件を扱ったものだ。フツ族とツチ族の構想で80万人、一説には100万人が殺された。それから26年経った今年5月18日に大虐殺の実行武装勢力に資金提供し虐殺をあおったラジオ局の持ち主だった富豪のフェリシアン•カブガ(84)がパリで逮捕されたとのニュースが出た。肥溜に逃げ込んで難を逃れた少女の「斧を振るって殺しまくっている男の人をみたら、隣の小父さんだった」なんて証言も残っている。そう言う行為に資金提供とは!!この事件を知らない人にDVDで「ルワンダの虐殺」を観ることをすすめる。

◯月◯日/黒川検事長と言えば、安倍の「黒川氏にお目にかかったことも個人的に話したこともない」発言が話題になっている。嘘だからだ。黒川の麻雀については「依存症ではないか」との意見が出ているが、この伝でいくと、国民相手に平然と嘘をつく安倍のこのくせも或いは「虚言症」ではないのかね。証言能力、責任能力の有無を一度精神鑑定して欲しいものだ。

◯月◯日/「アベノマスク」で馬っ鹿じゃないのと思っていたら、それに輪をかけた様なことを安倍がやらかした。コロナの医療従事者に感謝と敬意を表するとて、航空自衛隊の曲芸飛行専門チームの「ブルーインパルス」に東京上空を飛ばさせていたのだ。6機編隊で20分間。昔読んだ本にジェット機が離陸して上空に達する迄に、ドラム缶で◯本だとかのガソリンを消費するとあって、その正確な数は忘れたが、とにかくすごい数でびっくりしたことだけ覚えているこれを見て誰が喜ぶんだろうと思ったら、自衛隊中央病院の職員を屋上に動員し手を振らせていたと言うから呆れる。

◯月◯日/その後にこのガソリン代〆て360万だと河野防衛相が発表した。しかもこの珍芸披露「アメリカストロング作戦」の真似だと言うか、しまらない。河野は前にもあの杓子面で鉄カブトかぶり落下傘つけて飛び降りてたが、妙なことが好きな男だ。きっと戦争ゴッコが好きなんだろう。それにしてもこの360万円、コロナ医療にまわすという考えが浮かばんのかね。各地から「俺が上空でもやってくれ」との要望が出たと国は言うが、本当かね。もし本当だとしたら、各地の首長も少しおか聞くなってんのではないかね。

◯月◯日/おかしくなっている首長と言えば、さしずめ小池がそうだ。東京都は毎年関東大震災を記念する朝鮮人犠牲者追悼式を行って来た。ところが小池は知事になると歴代の都知事が送ってきた追悼文を取りやめた。おまけに今年はこの式典を行うことに対して条件をつけてきた。この式典の日に会場の横綱町公園では「そよ風」なる団体も同時に集会を開く。この団体はそのやさしげな名前とは大いに違う「ヘイト集団」で、彼らの目的は「関東大震災で朝鮮人虐殺があったなんてのは大嘘だ」と怒鳴りたいためなのだ。

◯月◯日/小池がやるべきことは先ずはこの「ヘイト集団」の動きを止めることなのに、小池はそれをやらずにこの集団と追悼側の面々がぶつかったら事だから、とて条件つけた訳だ。名古屋の「愛知トリエンナーレ展」の時も、「爆破する」との予告のFAXがあったから美術展を取り止めると行政側は言い、この時も行政はこの「オドカシ」を先に排除すればいいのに、ミスミスこの「オドカシ」に乗って「美術展」の方を中止にしてしまって、これに市民から異議を申し立てられて「美術展」は再開となり、行政側の失点となった。

◯月◯日/今回も関東大震災研究家の加藤直樹の呼びかけで、哲学者の内田樹、小説家の島田雅彦、フォーク歌手の中川五郎。歴史家の山田朗などが賛同した。この問題については、呼びかけ人の加藤直樹の「トリックー朝鮮人虐殺をなかった事にしたい人たち」(ころから刊、2019、¥1,600円)を読めば、普通に読み書き能力のある人なら「ヘイト集団」の方が間違っていると分かる筈のものだ。小池はカイロ大学卒となっているが、それは嘘だと去年だったか雑誌「文芸春秋」にすっぱ抜かれた女だから、この加藤の本を読む、「読み書き能力」がない人なのかも知れんな。小池の学歴詐称は最近も週刊誌で叩かれていた。

◯月◯日/「ヘイト」と言えば、この「ヘイト集団」に悩まされたのは川崎市だったが、今は行政側がたくましくなり、実に立派に対応しているから、此処で「ヘイト」は生き延びられないだろう。川崎と言えば、この6月5日、川崎富作が死んだ.1961年に「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」を見つけた医者だ。乳幼児を中心に全身の血管に炎症が生じ、時には急死する原因不明の病気だ.1967年に富作が学会に報告したので「川崎病」と呼ばれた。95歳だ。悲しい事に立派な人が減っていく。

◯月◯日/私はプロ野球にもプロサッカーにも興味がない。だからJリーグと言われてもピンと来ないが、6月8日、そのJリーグが J2京都なるクラブに罰金100万円を科すとのニュースが出た。なんでも、J2京都のサポーターがナチス親衛隊のマークに似たデザインの旗をかかげていた事に対する罰金だという。サッカーに興味はないと今書いたがサッカーファンのこの手の行動には興味があって、そうしたニュースが出ると、私は切り抜いて陣野俊史著「サッカーと人種差別」(文春新書)に挟んでいるが、もうパンパンにふくれ上がっている。

◯月◯日/前にも「日章旗」をかかげてどうのこうのと言う事件があったが、サッカーとかアメフトファンにこの手の事件が絶えないのは何故だろう。軍歌鳴らしてみたり、軍旗はためかしてみたりと威勢のいい事やって自分も景気のいい人間になりたいのだろうか。ひょっとして、ヤクザの入墨と一緒で音楽だの旗だのの景気付けで自分も偉くなったような気分になりたいのかもな。いずれにしろ、そんな熱気の中には入りたくないな。2020,6.12

「司書独言」のバックナンバーは

http://t-yamashita.info/     を見てください。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください