第031回 鳥獣採集家 折居彪二朗

`93.4.1寄稿

私が住んでいる室蘭市には,昭和20年来の歴史を持つ地元紙「室蘭民報」があります。全国に数ある地方紙の中で,朝刊,夕刊と日に2回出すのは、この新聞だけです。

私は、この新聞に平成元年(`89年)11月4日から「本の話し」を連載していて,現在118回迄きましたが,下にあげるのは、その22回と23回の分です

当時,この文章を読んでくれた折居の三男、辰宏氏は,父親がしていた「鳥獣採集家」と只の「狩猟家」との違いを世の中にきちんとわからせてくれたとして、私に手紙をくれました。

その中には「父彪二朗の生涯を的確に評価下さいまして,思わず喝采(かっさい=やんやとほめること)を送りたい気持ちになりました。」とあり,更に続けて「短い文面の中に凝縮(ぎょうしゅく=縮まる)された彪二朗の人となりが,初めて読まれた方にも良く理解されることでしょう。」とあって,かえって私の方が感激したものでした。

折居が住んだのは、苫小牧(とまこまい)市の北東部、勇払平野にあるウトナイ湖に,流れを注ぐ美々(びび)川のほとりでした。この面積3k㎡の海跡湖であるウトナイ湖は,白鳥,ガン、カモなどの渡りの重要な中継地です。

ウトナイ湖には,現在、財団法人,日本野鳥の会が運営する「ウトナイ湖サンクチェアリ.ネイチャーセンター」があります。そこでチーフレンジャー(保護官、警備員とでも訳すのでしょうか)をつとめる大畑孝二さんから、この2月末に手紙をもらいました。

用件は「本の話」23回に出た懇談会のテープが欲しいというものです。残念ながら私は録音もせず,メモもとらず,記憶で書いたものでしたから、その趣旨を伝えました。大畑さんは,目下、折居の業績をまとめようとしているのです。

私は返事の中で,折居の伝記が一日も早く成ることを願うということを書き、ついでに、まだまだ世に知られていない折居のことが、ちょっぴりながら出ている本と、折居と同じような仕事をした人の伝記で,子供向けながら,続いて出た事を知らせました。すると,大畑さんから,折り返し,手紙が来て、その2冊ネイチャーセンターにも置きたいので,書名その他を教えてくれと言うことでした。野鳥専門家の大畑さんがまだ気付いていなかったと言うことは,この2冊まだ余り読まれていないと言うことかもしれません。

一冊目は岡本文良「野鳥と生きた80年1 」です。副題の「鳥類の研究と保護に生涯をささげた山科芳麿(やましなよしま)」がこの本の内容をよく現しています。

書中、折居の登場するところは次の場面です。もっと,もっと,樺太の鳥を知りたいと望む芳麿に,鳥類学者、内田清之助がいいます。ー「北海道の苫小牧に,折居彪二朗という狩猟の名人がいますよ」その人は,年は芳麿より15歳ぐらい年上で若い頃,ある,イギリス人に連れられて朝鮮半島の鳥を採集しました。ー

二冊目は,林正敏「鳥学を支えた岳人2 」です。帯に「大正−昭和初期、鳥学の黎明期(れいめい=始りの時期)に裏方として,,,とありますが、これは折居にもそっくり当てはまる文字です。自然保護が最も必要な今,ぜひ読んでほしい一冊です。なお、大畑さんからの知らせでは,近々,折居の日誌の復刻作業を始めるとの事で,何とも喜ばしいことです。

※ つけたし

昭和57年、山科鳥類研究所、青木栄治著「山科芳麿の生涯」という本がある、との事で,同研究所に勤務の岡奈理子。水産学博士(私の友人の友人)に聞いたところ、これは芳麿の日誌で、その克明さ(こくめい=こまかさ)は読むのに気の遠くなるほどだ、とのことです。


  1. 岡本文良.野鳥と生きた80年.PHP研究所 (1990) []
  2. 林正敏.鳥学を支えた岳人.信濃毎日新聞社 (1991) []

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です