山下敏明さんのあんな本、こんな本

第316回 「天才 ダ・ヴィンチ」の本

2012.2月寄稿

毎日、読んだり書いたりの合間には新聞を切り抜いて、関連する本に貼って行く。切り抜く分野は様々で、もちろん芸術も入っているが、これは政治や社会と違ってそう毎日あるものではない。

それでも今年に入って1月11日には、アテネの国立美術館で、ピカソの「女の頭部」とモンドリアンともう1点盗まれ、その額5億4,000万円と出た。2日おいて1月13日には、今度はいい知らせで、ドイツはリューベックの音楽大学のブラームスの研究所が、ベートーベンの手書きの書館が発見されたと、発表した。1823年7月にウイーンからパリ在住の作曲家に宛た手紙の由。中身は、目の具合が悪い、甥の学費が足りない、給料が少ない、と嘆いた後、同年に完成した大作「ミサ・ソレムニス」の買い手はないだろうか?と言ったようなことの由。

さて、2月に入ると早々3日に、スペインはマドリードのプラド美術館が所蔵している「モナ・リザ」の模写は、パリはルーブルのオリジナルの最も初期の模写と見られる。しかも、弟子の1人がダ・ヴィンチと同じアトリエで師と並んで制作した可能性もないではない....との見解だ、と発表。

ダ・ヴィンチと言えば、昨年の7月12日には、17世紀にイギリスのチャールズ1世が持っていて、18世紀半ばに競売にかけられ、1900年作者不明で、英国のコレクターの所蔵となり、2005年にアメリカのオークションで現在の所有者が落札したという作品が、ナント、ダ・ヴィンチの幻の作品だと分かった、とのニュースがニューヨークから報道された。絵のテーマはキリストで、題名は「サルバトール・ムンディ」即ち「救世主」。これ今年の11月にロンドンのナショナル・ギャラリーで展示される由で、時価160億円だと。

「ダ・ヴィンチ天才の仕事 1

「フーン」と感心しているところへ、札幌の大西君から手紙が来て、3月頃には「ボストン美術館展」と「ダ・ヴィンチ展」が東京であるらしい。「ダ・ヴィンチ展」の方は先に関西でやって、そのあと東京ということになるらしい...云々とある。これを読んで、私が独りごちたのは、「やはり、ダ・ヴィンチで行くか」だった。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ2

「ダ・ヴィンチ物語3

 

今年1月、中国は一級文物、即ち国宝の「清明上河図」(せいめいじょうがず)を初めて国外に出すとの触れ込みで、東京博物館に持って来た。但し期間限定と言うことで、1月24日(だったか)には本物は中国に戻り、そのあとはオリジナルの完全復元版が展示された由。

心臓手術の数日前に天皇・皇后が観に行ったと報道されたが、以上の事情からして御二方の観た「清明上河図」はレプリカだった訳だ。

「レプリカ=Replica=原形を忠実に模して制作した複製品」で、中国ではこれ(清明上河図のレプリカ)を国賓=こくひん=その国家による正式な招待客への土産に供するそうだから、両陛下が観たものが、このレプリカだったとしても、何の不都合もない。

さて、我々「ふくろう文庫」では、1月7.8の両日、「モルエ」でこの国賓が土産として持ち帰るレプリカと同じものを展示した上、更に、この宋時代の画家・張擇端(ちようたくたん)のオリジナルに触発されて描き上げられた明の仇英による「清明上河図」と清の「本院・清明上河図」のレプリカも併せて展示した。

結果は大好評で、来る人、来る人備えてあった拡大鏡を使ってじっくりと観ては、皆上機嫌で帰って行った。この好評を受けて、2月にも続いての展示をとの要望があったが、「ふくろうの会」の会員の時間の都合もあって、3月に持ち越すことにした。

さて、ここからが問題で、「何を出すか」だ。それを、あれか、これか?考えている所へ,ダ・ヴィンチのニュースが新聞に出、大西君からの手紙が来、で、「ダ・ヴィンチにしようかな」と思っている所へ、その案を強くおす要因が加わった。

と言うのは、ここに「カイ」という季刊雑誌があって、その2012年冬号が「やっぱり、本が好き」との特集。中で、私と「ふくろう文庫」が紹介された。

執筆したのは矢島あづささん、写真は伊藤留美子さん。その紹介の文章は実に間然とする所のない文章で、写真も又良くて、読んだ何人もの人から、良かったとの感想が来た。未だ見ていない人のなめに「カイ」2012.vol.4「特集・やっぱり本が好き』(札幌ノーザンクロス発行/¥680)市内の書店、コンビニで求められる。本州では出ていないので直接注文してください。tel011-232-3661・fax011-232-4918

さて、その中で矢島さんが言うには、「〜6時間に及ぶ特別講義(取材)が始まった。思わず息をのんだのは、パリのフランス学士院に収蔵されるレオナルド・ダ・ヴィンチの “パリ手稿” 原典ファクシミリ版だ。絵画の遠近法、光学、幾何学、水力学など、ダ・ヴィンチが思い付きやアイデアを直筆で書いた手帳で、そのインクの色、紙質や製本の材料、手垢のような汚れや破れまで、オリジナルを忠実に復刻している」〜。これ以上巧みな解説があろうか。これ全部で12冊、として持ち帰ったものだあ。この12冊(大小あれど全部手帳だ)+解説2冊、日本国内にわずか115部。この12冊、、実はナポレオンがイタリアはミラノのアンブロジアーナ図書館から戦利品として持ち帰ったものだあ。

この12冊に加えて、ウインザー城王室図書館が所蔵する素描集を並べると、更に興が増すに違いない。と如上のことを心中思いつつ、3月末展示方法を種々考えている所だ。「室蘭で俺の手帳を!」とダ・ヴィンチが驚くに違いない。そう言えば驚いた顔のモナ・リザを描いた人がいたっけな。


  1. ドメニコロレンツ.松井貴子訳.ダ・ヴィンチ天才の仕事.二見書房(2007) []
  2. 田中英道.レオナルド・ダ・ヴィンチ.講談社学術文庫(1992) []
  3. メレシコフスキー山田美明訳.ダ・ヴィンチ物語.英知出版(2006) []

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