山下敏明さんのあんな本、こんな本

第351 戦後の映画の検閲 、森美術館問題の会田の作品群

H27.01.10寄稿

北村洋の「敗戦とハリウッド1 」を読み終えたところ、これアメリカが日本を占領した時に、アメリカ側がアメリカ映画を通じてマッカーサー言う所の、精神年齢12歳の日本国民を教育しようとして、如何なる方策をとったかを、検閲を主にして語ったもの。

国務省やら、陸軍省は日本側が作る映画は言うまでもなく、自国の映画にも呆れるほどまでに口をはさんだ。子供の頃に、只々面白がって見た作品に、アメリカ側がこれ程に神経質に上映を禁じたり、作品内容に変更を命じたり..とやっていたのを知って、ご苦労なことよと変な感想を抱いた位だ。例えば① 小5の頃兄の友達の柔道の選手の佐々木さんに連れられて、ジョン・ウエインの「スポイラーズ」を観た。取っ組みあったガンマン2人がそのまま2階の手摺を壊して床に落ちても戦い続ける...ナンテなシーンに驚きつつも面白くて、数年前DVDになったのを買って改めて観た程だが、「これが映画全体を通してガンプレイや不必要な殺人があまりに多い」で、殴り合いや銃撃戦などという形で暴力が表現されているのは良くないとされた...由、② 中2の時か、兄と仙台に行った時、一人で盛り場に出て、ウイリアムワイラー監督、ベティ.ディヴィス主演の「月光の女」を観た。この映画館は案内ガールがいて、足元を懐中電灯で照らしながら席まで連れて行ってくれて、これ私には初体験だった。映画の方はマレーシアが舞台で、白人女と地元女と白人男の三角不倫物語。あとで知ったが、サマセット・モームの原作で、私は面白かったが、陸軍省が憎しみ、嫉妬、暴力が絡んだ「異人種間のテーマ」は日本で公開するに「まったく不適切」とした...由

③ やせと太目コンビのアボット・コステロも随分観た。ターザン映画に至っては小学校でクラス参観した。アボット・コステロは今思えばアホみたいな映画だった。ターザンもまさか合成した声とは思わずあの雄叫びでクラス全員拍手したし、ワニを相手に戦う場面などはあとで、格闘ごっこの際にそれを取り入れて遊んだ。ところがこの2つ「高尚」な内容が欠ける映画とされて、文化度が低い地方都市にまわされたものだという...から腹が立つより、妙に納得してしまう。④ ジェームズ・スチュアートの「スミス都へ行く」は私はDVD担ってから買ってみたが、これ若手上院議員が政界の腐敗や不正と戦う正義物語アメリカの検閲官は悪玉議員の汚職、メディア操作などアメリカ政界の「品位と効率性を物笑いにしている」として、1954年まで「お蔵入り」にしてた由。etc.etc と言う訳だが、私自身はターザン映画で別に悪ガキにもならなないし、西部劇で性格が粗暴にもならなかったし...つまり、検閲なんてものは、余計なお世話。逆に、今に至るも止まらない、アメリカ国内での人種間の争いや政界のゴタゴタを見ると、日本人を育てようとしていた時代のアメリカが、今よりはるかに上品かつ人間的だったのではないかと思えて来る。暴力、殺人、人種問題と来るなら、今時のアメリカ映画殆どダメだわ。

一寸古い話だが、2012年11月に、六本木森美術館で「会田誠展・天才でごめんなさい」が開かれた。私は見てなし、読んでないがこの展覧会NHKの「日曜美術館」で取り上げられ雑誌「美術帖」でも特集が組まれて絶賛された由。ところがこれ「ポルノ被害と性暴力を考える会」が問題視した。

「私たちが特に問題視したのは以下の作品群だった」としてあげるのをそのままうつすが、「少女が全裸で四肢切断されて首輪につながれている6連の”犬シリーズ”、若い女性の身体へのペインティング、全裸の少女が食べ物としてスライスされたり、やかれたりいている”食用人造少女美味ちゃん”シリーズ、裸体の若い女性と(実写)巨大ゴキブリ(模型)とが性交している”蜚蠊”草紙」若い女性がキングギドラの頭部でレイプされている”巨大フジ隊員vsキングギドラ”無数の少女がミキサーで壊されている”ジューサーミキサー”など」まあ読むたびにおぞましい情景のようだが、この「~極めて性暴力的で女性蔑視的な絵画表現」は問題だとして、前期の「~を考える会」が森美術館に対して抗議した顛末をまとめたのが「森美術館問題と〜2 」だがこれ、あまり知られていないように思われるので、心ある人が何かを考えるよすがにでもなればと思いあえて出しておく。因みに作者の会田にはには女子トイレに侵入して」云々の性犯罪歴があると、ツイターにある由これまたおぞましい話だなあ

ところで、会田誠とくれば、アライ=ヒロユキの「天皇アート論3 」のだい7章「アイディンティティの模索と再考」の中に「会田誠~新人類世代の反骨戯画」なる会田論がある。興味のある向きは読んでみられたし。

これを書いている今日は1月10日(土)来る24日には「第42回ふくろう文庫ワンコイン美術講座」で「ゾラとセザンヌ」をテーマに話すので、ぞら関係60冊程を持ち出して、点検中だが、一昨日1月8日に「パリの老舗百貨店の改修計画取り消し」の見出しで、1870年開店の「サマリテース」が耐火性の点などから改修と決まりその工事は日本の共同設計事務所のSANAAなるところが手がけることになったが、発表されたガラス張りのデザインがセーヌ川沿いの景色をこわす、と景観保護団体が反対したので、フランス許可院から工事許可の一部が取り消されたとの報道が出た。ところで周知のようにゾラの作品には「ボヌール・デ・ダム百貨店」があってこれは世界最初のデパートであるアリリスティードブシコ夫妻創設の「ボン・マルシエ百貨店」(1852)や、ショシャールエリオによる「ルーヴル百貨店」(1855)などをモデルに書かれたものだそれで丁度いい次なる話題は「デパート」と考えて、鹿島茂の「デパートを発明した夫婦」(講談社)を出そうとしたがあるはずがどこかに紛れて見つからぬ。そこで変更して同じくゾラの「ナナ」に話を変えて「ナナを含めた高級娼婦たちの」生涯をたどった山田勝本を出しとく。「蠱惑の女性列伝4 」「ナナ」のモデルのブラッシュ・ダンテニー「椿姫」のモデルのマリー・ディプレシスを初めとして、宝石王ティファニーをたぶらかしたレオニードブランなど。

この新年休みで大作をかなり読んだが、紹介する機会がなさそうな本なので、その何冊かを名前だけ出しておく。(刺激になれば幸い)

① 「韓国近代美術研究5 」金恵信(ブリュッケ刊)295P

② 「絵のようにー明治文学と美術6 」前田恭二(白水社)679P

③ 「太陽と仁丹-1912の自画像群.そしてアジアのなかの”仁丹”7 」田中淳(ブリュッケ刊)620P

 


  1. 北村洋.敗戦とハリウッド.名古屋大学出版会(2014) []
  2. 市民団体.森美術館問題.不磨書房(2013) []
  3. アライ=ヒロユキ.天皇アート論.社会評論社(2014) []
  4. 山田勝.蠱惑の女性列伝.早川書房(1994) []
  5. 金恵信.韓国近代美術研究.ブリュッケ刊(2005) []
  6. 前田恭二.絵のようにー明治文学と美術.白水社(2014) []
  7. 田中淳.太陽と仁丹-1912の自画像群.そしてアジアのなかの”仁丹.ブリュッケ刊(2012) []

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