山下敏明さんのあんな本、こんな本

司書独言182

◯月◯日 「concussion(コンカッション)」なる英語を知ったのは去年の3月頃。「激しい振動」の意で、医学用語としては「脳震盪」となる。

何でも日本国内でのラグビーのトップ選手の野口真寛(28歳)が脳震盪を繰り返し出場することは無理とて、引退すると言う話だった。この単語がそのままタイトルになっているDVDを観た。ウイル・スミスが医師役で、フットボールでの脳震盪と慢性外傷性脳症との因果関係を実証した警告の映画だ。激突で脳が破壊されるのを観て身の毛がよだつ。

◯月◯日 因みにウイル・スミスは白人ばかりが受賞するアカデミー賞を批判する黒人の一人。因みにもう一つ。二代目若乃花が引退後何を血迷ったか、アメリカン・フットボールに入団しようとアメリカに行った。は、いいが、直ぐに尻尾を巻いて帰ってきた。身体と力の差に適わなかった訳だが、最初の脳震盪で正気が戻ったのかもしれぬ。

◯月◯日 身の毛がよだつと言えば、DVD「コロニア」もそうだ。チリに実在したナチスの残党パウエル・シェーファーなる男が設立した、宗教団体の実話に基づく映画。この施設はチリの軍事独裁政権に反対する人達をいたぶる拷問部屋ともなっていた。アイヒマンの場合もそうだったが、南米の幾つかの国は、何故かナチス残党の受け皿となっていたが、チリにもこう言う組織が受け入れられていたんだな。

◯月◯日 恐ろしいDVDをもう一つ「ライオット・クラブ」がそれ。英国名門大学のエリート・クラブの醜悪な実態を暴露したもの。Riot=暴動だが、このクラブのモデルは、あの軽薄なディヴィッド・キャメロン元首相もいたオックスフォード大学の「ブリンドン・クラブ」だと言う。貴族の子弟たちが親ゆずりの金と権力を背景にして、彼らが下層とみなす人達に、想像を絶する乱暴狼藉を働く。非人間的なるもののイメージが勢揃いしたような話だ。自分もエリート校イートンの学生だったG・オーウエルが、唾棄すべき人間として嫌ったのは、こういう連中だったのだと納得する。

◯月◯日 これで思い出したのが、高2で読んだ慶應出の池田潔のイギリス・ジェントルマンを論じた岩波新書の一冊「自由と規律ーイギリス学校生活ー」(昭和24年刊)。

「Gentlman=紳士=礼儀正しく思いやりがあり、教養のある人を言う」(研究者/ニュースクール英和)像を描いて当時よく読まれたが、その紳士の姿には、上記のクラブ員のような要素は全くなかったと記憶する。この本、堀の浅い本だった、と今は思う。

◯月◯日 「安倍対プーチン会談は」、右派大物・木村汎北大名誉教授から「完敗」と酷評された話を2月号の「あんな本・こんな本」で書いたので、続いて「安倍vsトランプ」はどうか?外伝を2、3見ると、米のタイム誌「安倍首相はトランプ大統領の心をつかむ方法を示した。へつらいである」。ワシントンポスト紙「安倍首相は億万長者のビジネスマンにおべっかを使いながら、米国が”ますます強くなること”を歓迎すると願った」。米ニュース専門チャンネル「MSNBC]のデヴィト・コーンは「これだけ米大統領におべっかを使う外国の首脳は、今まで見たことがない」etc(山下下線)。ところが日本では「7割が評価」がアンケートの結果だ、と。この差!!理解に苦しむね。

◯月◯日 さっきフットボール選手の脳破壊の話をしたが、次はバスケットボール選手の話。スポーツ用品メーカー、アンダーアーマー社社長のプランクが、「実業家の大統領は米国にとって実にAsset=宝と、トランプにおべっかを使うと、龍球界の超有名選手スティフィン・カリーが、「その言い方には賛成だ。ETをとればね」と言ったと。「Asset-et=Ass」となって、Ass=①ロバ ②馬鹿者③米の俗語でケツの穴、けつ、となる。これ、機知(wit)だ。フットボールより龍球の方が脳震盪の害は少ないと見える。

◯月◯日 DVDでフランス映画「奇跡の教室受け継ぐ人達へー」を観た。素晴らしい。29の民族が混在するパリ郊外の高校が舞台の実話。生徒はバラバラ通り超して、こんなに個人の仕放題なら登校せずに家に居たら!と言いたくなる程の荒み様。それを経験20年の女教師が「アウシュビッツ」をテーマに共同研究をやらせることで、かえていこうとする、そして実際に変わった、という話。白紙的に無知な生徒に真の教育で教養を身につけさせていく気持ちの良さ、ここで思いだしたのが去年の暮れ、第16回大佛次郎論壇賞を受けた森千香子の「排除と抵抗の郊外」(東大出版会)。移民地域の調査さを通じてフランスの人種差別を追ったものという「奇跡の教室」とテーマが全く同じだ。読んでみよう

◯月◯日 「まち・ひと活力大賞」の副賞で、京都は高山寺所蔵の国宝絵巻全長49mの「華厳宗祖師絵伝-義湘絵」を入手した。新羅の僧•義湘と彼を恋う美女善妙を主人公とする絵巻だ。善妙は義湘に一目惚れするが、義湘はすげない。然し善妙はこれを恨まず義湘の助けとなろうとする。健気な心が表す奇跡は何か、見てのお楽しみ。

4月下旬に「モルエ」で初公開する予定だ.因みに高山寺は明恵上人がいた寺だ。その明恵の有名な樹上座禅(掛け軸)も、11月ワンコイン講座「ルバイヤートの世界」に東京、仙台、秋田、道内各地から集まってくれた室工大の卒業生「山下ファミリー」達が買ってくれた。これも国宝だ。これもモルエに出すつもり。見応えあると思うよ。「見なきゃ損損」と宣伝して,御出でを待つとしよう。

 

 

 

 

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