`98.6.19寄稿
小学校6年生の学芸会で,「月の砂漠」と言う劇の主役をつとめたことがあります。筋はおろか,自分の役柄も,相手とのやりとりも,一切忘却の彼方と言う感じですが,只一つ鮮明に覚えていることがあります。
私の役は,「王子様」いや「王様」で・・・・・ その証拠に,今,小さなアルバムにはってある出演者勢揃いの写真をみると,私は,王冠を頭にのっけて,ナント,ヒゲをはやしています。 ・・・・・腰に剣を付けていたのですが,この剣が実は,本物で,・・・・・ と言っても,旧陸軍で使っていた銃剣(=じゅうけん=小銃の先につけた短い剣(を付けた銃))の剣で・・・! 王の私が,敵に攻めこまれたか何かして,「もはや,これが最後!!」とか叫んで,一旦抜いた剣を,思わず落とすと,驚いたことに,私の手を離れたこの剣が,舞台の床に突きささって,おまけにブルブル・・ルとふるえたのです。今流に言うなら,まさしく。リアリティ(真実味)満点と言うところで,ひょっとしたら,この劇での一番の名優はこの剣だっだかも知れません。
私は主役をつとめたにはつとめましたが,緊張して,小便をチビッタ程でした。それから今迄,劇中の人物として舞台に立ったことはありませんが,大学を出て直ぐの総合商社づとめの間2年程,演劇部に籍を置いたことがあります。とは言っても,役者としてではなくて,いつも本を読んでいる私を見ていた演劇部の先輩社員が,私を座付作者ならぬ,座付作品選択係として,私に入部をすすめ,断り切れなくて,作品を読むだけでいいのなら・・・ と引き受けたのが本当の所です。
私は,只々,作品=本を読んでいればいいのだと思って入りましたが,世の中そう甘くはなくて,結局のところ,私の最終のそして専らの仕事となったのは幕引きでした。とは言え,この部活はとても楽しくて, ・・・と言うのも京都工芸繊維大学出の亀井さんなる先輩に連れられて,宝塚だの,京都の撮影所などを,観に行くことが出来たからです。
さて,臆面もなくこんな古い話を思い出したには訳があります。その訳と言うのは,室蘭市の隣りの伊達市の,小中学生が,今年の3月に,「美女と野獣」の劇,それも英語劇をやったからで,・・・・ イヤハヤ,今のガキ,失礼。今の子供達は,やるもんですなあ。
ボーモン夫人作(鈴木豊訳「美女と野獣1 」角川文庫¥480)で知られる「美女と野獣」
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・・・と聞いて,今の人はディズニーのアニメを連想するようですが,私共が頭にうかべるのは正統的?にジャン・コクトー(フランスの文学者)による映画です。白黒画面んお幻想的な美しさは,今でも充分に観るに価します。是非『美女と野獣(JSL30036)』(ルイ・デュリック賞受賞作/¥3.689)を観て下さい。「美女と野獣-ある映画の日記-2 」(ジャン・コクトー 著 秋山和夫訳/¥2.310)は,その映画作りの記録で,まあ〜面白い。
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まあまあ,ですが,映画に合わせてこれを読むと,興が増すことは言うまでもありません。「ベッツィ・ハーン 著 田中京子訳.美女と野獣-テクストとイメージの変遷-.新曜社((1995))) 」(ベッツィ・ハーン 著 田中京子訳/¥3.990)は,これまでに出版された68册におよぶ・・・・・ と言う「美女と野獣」について,各版毎に比較検証してみせますが,・・・ これは面白くない,読むに甚だ疲れます。難解好みの方はどうぞ!! 『美女と野獣』(エティエンヌ・ドレセール絵/ボローニャ・ブックフェア特別賞受賞/¥1.155)と『美女と野獣』(エドマンド・デュラック絵/¥1.575)は近代絵本と古典絵本の傑作,楽しいこと,この上なし。
という訳で,今回は「美女と野獣」特集です。
‘98.6.19(金)