`02.4月16日寄稿
当官発行の「図書館だより.ひまわり」の第18号(`02/4月号)に久保館長の「晴読雨読15』が載っているが、その中で館長は、名前の漢字の難易を語ったあと、貞の字の連想から貞操、そして、貞操帯と話が移り、貞操帯についての疑問を2.3述べたあと、「この分野でも権威(?)のある当館の山下先生にこっそり、聞いてみよう」と結んでいる。この質問受けて立たずば男であるまい(とは誰も言わぬが)疑問符付きとは言え、権威とたたえられ(とは誰も思わぬが)私としては、受けて立つべしと、自分をふるい立たせてこの難問を、明快に解くべく今まで密かに極めた蘊奥(うんおう)を披瀝(ひれき)しようと思う。...それも大っぴらにこの形で!!
と言うのも、こっそり聞かれようとも、この問題はこの世に男女両性ある限りの大事な問題であるからであって、秘して語らず...ではよくないことだからだ.お分かりかな、ワトソン君!!
「貞操帯の文化史1 」さて「貞操帯」とは何か??これは平たく言えば、美貌、醜怪を問わず、我が妻(でなくともいいが)の操を、他の男にうばわれたくない、いやうばわせるものか!!と考える男が、我妻もしくはそれに準ずる女性、...,ここで口ごもってはならぬ...女性の名ナニにツッペする器具のこと...だ。
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「ツッペ』って何?って?.これは北海道弁で栓のこと。故に、ツッペすることは、栓をすること、して又.ツッヤカルとも言い、例えば“鼻さツッペカッテ、血止めれ”なぞと使うのだが、北海道弁ぐらい、ちゃんと覚えてくれたまえ!!これは標準語。
さて、男性本意の、それも、焼き餅焼きの独占欲,加うるに支配欲のみ発達した、カチャペナイ(これも北海道弁=品位がない)連中が考え出した器具はどんなものか?と言うと、文章で説明するよりも、見るに如(し)かず...で、次をご覧じろ!!これ、久保館長の質問①どのような構造になっているのか?に対する答え、して又質問②トイレに行く時にはどうするの?に対する答えは、これ又私が図解すると、Ο型の切り込みからは小の方を♧切り込みからは、大の方を致すのである。
因みに図示した貞操帯は「マテオ・ファルコーネ」や「シャルル9世年代記」の名作を持つ、作家にして考古学者のプロスペル・メリメ(1803〜1870)がパリの「クリュニー博物館」に贈ったものの由。
因みに、もう一つ、長い戦いを終えた悋気亭主(りんきていしゅ)が帰宅すると、迎えた妻の下ばきが汚れて真っ黄色になっておった。妻君の語るによると、貞操帯はおろか、下ばきを一度もぬがず、洗わず、はきっぱなししていたためだと。
感激した殿方が、この行為かつその色を賞(め)でたので、これが女人の間に流行し...即ち、カラーパンティの元祖はこれだ.と言う説があるぞ。
さて又、この器具が、何時、誰によって発明されたか?となると、諸説があって、まあ辞書には例えば「広辞苑」には、“ ~中世ヨーロッパで十字軍出征の騎士などが、その妻に用いた。”などと書かれているが、これは資料的には証明されないと言う。
現に、エドワルド・フックスは、15世紀以前に貞操帯はなかったであろうと述べている。つまり、フックスは、自由奔放な性風俗が特色(と言うと変だが)のルネサンス期の発明だと言うのだ.(フックスの説を確かめたい人は「風俗の歴史」ぜん10巻角川文庫但し、絶版)にあたること。一方パウル・フリッツシャウワーは。その著「世界風俗史」(全3巻、関楠生訳`83刊河出書房新社但し、絶版)の巻②で、十字軍に触れ、「〜夫の留守中貞操帯によって妻の貞節を確保する習俗が出来ていたのである.〜」と言っている,となると11.12世紀に発生したことになるが、はてさて、どっちの説が妥当か。尚、こうした器具を妻もしくは愛人につけた最初の人物は、14世紀パドヴァ最後の君主.フランチェスコ・ダ・カラーラ2世の由。「性の世界記録2 」
十字軍と言うのは、我がキリスト教こそ真理なりとて、邪悪なイスラム教徒を滅ぼそうと11〜13世紀にイスラム世界にくり返し7回も押し入った傍迷惑な連中のことだが、何だか今のアメリカこれにそっくりの感なきにしもあらず...だで。さて、久保館長の質問③は、鍵を持って行った騎士が戦死したら、未亡人はどうするの?だが、ご心配めされるな。
(事一つ成れば、これにチャレンジする者必ずあり)が世のならい...かくして、「合鍵」を作る錠前屋がワンサといたのである。
ところで、貞操帯と聞いて私が思い浮かべるのは、この名ズバリの小説、イタリアはピティグリリ(1893〜1975)の
「貞操帯」1920年作のこの小説、13万部も売れて世界23各国訳され、我が国には和田顕太郎訳で昭和6年に出た。
性を描くのを恐れぬ果敢な作家として、日本でも世評を集めたこの男、ムッソリーニのファシズムに迎合したために、戦後にはアルゼンチンに逃亡して、何を思ったか、今度はカトリック作家に転じて道徳臭の強い作品を書いたと言うから、参っちゃうね.私が好きなイタリアの作家に「目とかがり火」を書いた、パヴェーゼがいるが、このパヴェーゼが政治犯として流刑地から戻ったとき、このピティグリリが秘密監視役をしてたと言うから益々もって卑怯な奴だ。
ピティグリリはともかく、貞操帯をはめられる女性側の男性に対する反撃はないのか?...で思い出したことがある。20年前位の話、桂三枝に「新婚さんいらっしゃい」に日本製鋼所の職工夫婦が出た。この新婦は、亭主が寝ている間に亭主のナニを引き延ばして本体に「私のもの」とマジックで書くのだそうで、亭主が会社の風呂で同僚から笑われから止してくれと言っとった。これで又思い出したが、フランスの小説に他所で遊んで来た亭主をとっちめようと、女が張り切って調べると、ナニの根元にリボンが巻いてあって拡げてみると、「自由、博愛、平等」と書いてあって、これは、革命以来のフランス国家の国是であるからして、焼き餅女房も黙り込んだと言うのがあった。日の本の男性諸君フランスとは、憲法も国是も違うのだからして,夢夢真似するでないぞ。
最後に日本には貞操帯はあったか? ナンデモ不埒(?)な侵入者を防ぐべく,鋭い針で作られた疑似陰毛,つまりナニ用カツラが昭和十年代発明されたけれど,危ないとして不許可になった由。検査したのはきっと男だな
アイヌには貞操帯(チャハチャンキと言う)はあったか?については、知里真志保の「分類アイヌ語辞典=人間篇」を見て下さい。まだ知りたい方はここに挙げた様な本をどうぞ。「秘ごとの文化史3 」 「世界艶本大集成4 」(日本艶本大集成と対になったもの)
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そうだ、そうだ肝心の久保館長これで,答えになったかしらん。不明な点はまたこっそりどうぞ!!