司書独言(112)「一冊の本が次読む本を呼ぶ」


○月○日 拙著「本の話・続」が室蘭民報社の高橋結香記者の仲立ちで、主婦の友社発行の雑誌2誌に紹介された。結香記者には申し訳ないが、私はこの2誌共に知らなかった。一つは「mina(ミーナ)」の2011年2月号で、これは表紙に榮倉奈々が出ている所をみると20代〜30代、いやひょっとして10代向けの雑誌かも知れぬ。もう一つの表紙は五月みどりで「ゆうゆう」の2011年新年号。「50代からを応援!」との副題がついている。二つとも、どの程度(購読者数)出ている雑誌か分からぬが、いい機会だから感謝の意味を込めて、2つの記事を載録しておく。

○月○日 先ず「mina」の方のBook  pick  up 蘭。『 「良書の魅力を伝えていきたい」大学図書館に30年勤務したベテラン司書が、国内外1,000冊に及ぶ本をチョイス.その話題を取り上げ、面白可笑しく描いたユニークな一冊です。「読書は人間だけが出来る最大の幸福』.本を読む喜びや魅力をたっぷり教えてもらえるはず。』

○月○日 「ゆうゆう」の方は、Culture ゆうゆうの蘭、「Booksー今月読みたい6冊」の頁で、筆者は温水ゆかり.『新聞『「室蘭民報」の文化欄で連載中の「本の話」の続編。「一冊の本が次読む本をよぶ」の川柳の通り、元図書館司書の著者が多彩なジャンルの本や本にまつわる話しを綴る。取上げられた本は国内外約1000冊に及び、30頁を超える巻末の索引も圧巻本好きにはたまらない一冊だ.!」

○月○日 結香記者との2誌の書評者に礼を言わねばならぬ。因みに「本の話」の正続共、著者たる私は印税なるものをもらっておらぬ.全て「『ふくろう文庫」の本代に提供しているのです。つまり私の本を買って下さると、私の懐が肥えるのではなくて、「ふくろう文庫」の本が増え、文庫の本は図書館に寄贈するので、つまり図書館の本が増える訳です.この段、ご理解の上、室蘭の文化財を増やすために、とて、私の本を買って下さるとありがたい.(購入希望の方は、室蘭民法社又は図書館の私に連絡下さるか、或いは市内の有名書店でもお求め頂けますので、よろしくお願いします)

○月○日 因みに、先の雑誌の私の本の他5人は、と言えば、女性問題専門の樋口恵子、ジャーナリストと言うのか放送記者と言うのかーの池上彰、次に2010年11月16日101歳になった言う詩人のまどみちお、医者の鎌田実、そして作家の工藤美代子だった.ついでに言うと表紙を飾った五月みどり、と言う人、中々不思議な人だ.ポルノめいた映画に出ていたかと思うと、NHKにも出たりして、人生の汚れというものがちっとも出て来ぬ人で、きっと根性のいい人なんだろうな。

○月○日 「ふくろう文庫ワンコイン美術講座」も5年目に入る.3.5.7.9.11と奇数月の第4土曜日と決めて、だから次回ははや21回目。今回は何を取上げるか、てな事を取材に来た高橋結香記者としゃべっている所へ、毎回黒光ひささんと受付に座ってくれる香川妙子さんが来て....この人は非常に多方面に好奇心のある人で...魯迅のことをもっと知りたいと言う.魯迅な、魯迅と美術を結ぼうとすれば、中国革命に際しての魯迅の版画運動だなあ—と答えて、このテーマはいけるな、と思う.これならケーテ・コルヴィッツやフランツ・マゼレールの事も、もっと話しをのばしてロシアのマヤコフスキーらのポスター運動も語れるかも知れぬ.妙子さんは又言う。「オーケストラよかった.チャイコフスキーももっと知りたい」。この映画はすばらしい。最初に見た私は田村博文さんと、黒光、香川両人に直ぐ感動を伝えていたのだが...チャイコフスキーと美術とくれば、直接にはないが、チャコフスキーのあとのロシア5人組のムゾルグルスキーとなれば「展覧会の絵」があるなあ。あれなら「本の話」でも取上げたことがあるしー、とまあ、色々考えている最中.卯年だから兎と美術と言うことでもいいかも知れぬ。

○月○日 一昨年の7月だったか、さいたま市で計画されている「大宮盆栽美術館』が購入した高級盆栽5鉢、計7500万円が、誰かに薬品をかけられたかして、誰が枯らした?とて問題になった事があった.5鉢の中一番高いのは、2000万円のエゾマツで樹齢800年というからすさまじい。その問題が落ち着いたかして、昨年3月に無事開館、12月には来館者が5万人と言うから先ずは目出たい。一億円を超える五葉松も出ているそうな。

○月○日 私は盆栽を見るのは嫌いではないが、その技術は一切ない.只、聞けば笑うだろうが、似たようなことをやって楽しんでいる.きっかけは我が家の前のAさんが火山岩(とよぶ程の大きさではない、一抱え程の石だが2人でないと持てぬ)を4個呉れた.火山岩?だから矢鱈とでこぼこと凹凸がある。それを庭の五葉松の傍らの鳥の餌台の下に置いておいたら、そこにオンコやら馬酔木やらがまみずやらが芽吹いて、かつ根付いた.皆、鳥の糞が落ちた結果なのだろう、土台が土台だからぐいぐいとは伸びぬ、土がない訳だから伸びようがない訳で、だまっていても、つまりなんの世話をしなくとも、何やら全体盆栽めいてくる.早い話しが栄養失調なのだろう。とは言え、4つの岩が各々植相を違えて、つまり植種が違って、そこへ又違った苔が生えて、とそれぞれ案外に面白い、昨年は忍冬の実のつきがよくてヒヨドリが盛んについばんで落としてくれたから、今年は忍冬も芽を出すかもしれぬ。こうしてエセ盆栽作り(と言っても自分はなにもせぬが)を楽しみつつ、私は時々書棚から岩佐亮二の名著「盆栽文化史」(八坂書房)を取り出して、本物の盆栽を想像して楽しんでいる。あー、忙しい。

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