`93.7.2寄稿
毎日生活を共にしていた夫が、或る日、ある時、突然姿を消します。そして、8年もたって、これ又突然に、姿を現します。様子が変わっていて、何だか、初めて会った人のような気がする。これは本当にわが亭主なのか、それとも誰か、他の人か、と妻は訝り(いぶかり=あやしむ)ます。16世紀に実際に起きた、こんな事件を調べた歴史書が、ナタリー.Z・デーヴィスの「マルタン・ゲールの帰還1 」です。
[tmkm-amazon]4582474101[/tmkm-amazon]
「女であるナタリーデイヴィスは言います。「妻」ならば「男が女にさわるそのてざわりで」で間違える筈がない。そうでしょうか?貴方なら、間違えない、という自信がありますか?
ジャネット・ルイスの「マルタンゲールの妻2 」は同じくこの事件をもとにした、楽しい小説です。
[tmkm-amazon]4891762802[/tmkm-amazon]
ところで、今評判のアメリカ映画「ジャックサマースビー」を観て来ました。南北戦争に駆り出され、行方不明となり、生存もわからなかった夫(リチャードギア)が6年振りに帰って来ます。しかし、どこがどうとはわからぬながら、なんとなく印象が違います。
迎える妻(ジョディ・フォースター)は、果たして「男が女にさわるそのてざわり」で、この男を、夫と確かめることが出来るでしょうか?
非常に面白い、これは脚本を担当したニコラスメイヤーによって作られた物語です。しかし、私はどうも、この脚本家が、先に紹介した事件から、創作ヒントを得たような気がしてなりません。もっとも、パンフレットのどこを見ても、そんなことは書いてありませんが。
さて、これらの話しの荒筋も、結末も、事の性質上、今知らせる訳には行きません。
このとてつもなく風変わりで、とてつもなく面白い話し、観る前に読むか、読む前に観るか、貴方ならどうしますか?
※ いなくなる といえば、1967年のキネマ旬報ベストテンで日本映画第2位を占めた、今村昌平監督の「人間蒸発」という面白い作品がありました。
Yという女事務員が、社長のすすめでOというセールスマンと見合いをし、婚約をかわす、ところが挙式直前に男が行方をくらます...という現実に起きた事件を知った今村監督はYと一緒に隠しカメラをたずさえて.Oの行方を追い始める....すると、意外にも実直な筈のOは...となる,実に面白い作品でしたが、あれももい一度観てみたいなあ。ビデオになっているかしらん。