2017.1寄稿
「流行語大賞」とか、今年を象徴する「字」とかは、日本だけの事かと思っていたら、イギリスにもあると見えて、昨年末、オックスフオード大学出版局が「今年の世界の言葉」を選定したと報じられた。
その言葉は「post-truth ポスト・トゥルース」=「ポスト真実」。この定義は、同出版局によると、「世論形成で客観的事実より、個人の感情や信念に訴える方が影響力を持つ状況」である由。これを紹介する評論家の田代忠利は、今度は東京新聞の説明をあげて、これを日本に当てはめると、「状況は完全にアンダーコントロールだ」と言う安倍総理や、稲田防衛相の南スーダンのジュバは「比較的落ち着いている」と言った発言が、それだという。成程!と思っていたら、今年に入って、東京MXテレビ(と言うのがあることを私は知らなかった)が、「ニュース女子」なる番組で言うには、沖縄でオスプレイパッド建設に反対している人々は「日当5万円もらって」かつ「週休2日だ」と言い、更に「反対派の中には中国人や韓国人がいて」etc.etc.と報道した由
しかも、この時の男性リポーターは「これ以上進むのは危険」と発言しているくせに、本当は高江の現場から10km離れた所にいてマイクを握っていたと言うのだから、これ正しく先述の「post-truth」そのものではあるまいか。それにしても何でこんなまでにくだらぬことをするのだろう、と呆れつつ、思い出したのは、これ又新聞で知ったばかりの、アメリカでの「fact-check ファクト チェック」=事実のチェックなる市民活動。これ、どういうものか、テレビで、例えばトランプが演説しているとする、で、その発言に嘘が混じると、殆ど同時的に、その発言は嘘だとの根拠が出る仕組みだという。実はこのトランプ、大統領選の初期の段階でのテレビ発言がこのシテムで調べられて、実にその発言の70%が嘘だった由。
これを日本で想像してみるに、例えば安倍総理が国会答弁で「強行採決したことは、かつて一度も御座いません」と言った途端に、過去の強行採決の例がズラリと画面に表示されるということではあるまいか。仕組みは分からんが、どこぞの機械に強いNPOがやってくれたら、国民もさぞスッキリするだろう。ところで先に「東京新聞の説明をあげて」と書いたが、この新聞の活躍ぶりは全国紙にいささかも引けを取らぬものだ。もっともガンバっているのは東京新聞だけではない。北海道新聞から沖縄タイムスまで、つまりは北から南まで、今や社会の木鐸と称しておかしくないのは地方紙だと言っていい。それは「日本の現場ー地方紙で読む2016ー1 」を読めばよく分かる。序でに、ヘイトスピーチ他に、毅然として反論した神奈川新聞の健闘ぶりを示す「時代の正体①②2 」(現代思潮新社/①は2015、②は2016/共に1600円+税)も挙げておく。
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最近おかしかったのは何と言っても「安倍VSプーチン」の「日ロ首脳会談」。全国紙が一斉に、これは失敗との見方を発表したが、そうだ、全国紙が一斉に反対と言えば、「カジノ解禁推進法案」の時がそうだった。安倍サンとお食事仲間の渡辺恒雄サンが社長の「読売」でさえもが「様々な問題をはらむカジノを賭博の例外扱いにしょうとする。あまりに乱暴かつ無責任だと言うほかない」と手厳しかった。
で問題を「日ロ」に戻すと、「総理は次も。次も安倍」と提灯を持つ二階幹事長さえもが、「日本の国民は失望しただろう」てなことを言ったのが先ずおかしかった。
失望と言えば。地元北海道新聞も「16回もの会談を重ねた結果がこれか。そんな落胆の声が聞こえてきそうだ」と嘆いた。批判の中で私が一番「こりゃいいや」と一人ごちたのが、東京新聞が伝えた、北大の木村汎名誉教授の談話。それは「会談は日本側の完敗だった。〜どうすれば日本の主権を損なわない形で四島での”共同経済活動”が可能になるのか。妙案があるとは思えない」というもの(下線山下)
木村さんにこうまで言われてはボクシングなら、もう立ち上げれない所だ。何しろこの木村さん、昔い聞いた所では「北大スラ研の天皇」と言われた右派の中でも右派の論客だ。私は北大を知らぬから,この「スラ(ブ)研究所」とやらの正式名称を忘れてしまったが、その右派なる証拠(というのも変だが)に、この人昨年末「フジサンケイグループ」から「第32回正論大賞」をもらったばかりだ。
正論なる雑誌、買ったこともないから受賞の理由がわからぬが、とにかく最近も最近、右派の雑誌の代表格の「正論」の名がつく賞をもらった人間が「完敗だ」と言うからには、安倍さんどう弁解しようが意味がない。
土台 KGB(カー・ゲー・ベー=旧ソ連の秘密警察)なるスパイ機関からのし上がって来た、それこそ「煮ても焼いても食えない男」が、温泉に入れられ、美味しいものを食べさせられ、そも上「君」だの「ウラジミール」だのと呼ばれて、ふやけると思ってんのかね。
温泉と言えば、タカジンなる芸人が、失意の安倍内閣総理大臣閣下と温泉で意気統合した話は有名だが、自分には効いたかもしれない温泉療法が、プーチン大統領閣下に効くとはとても思えない。突然「ウラジミール」と呼び捨てにされて、プーチンは「ちゃんちゃらおかしかった」のではないか。「ちゃんちゃらおかしい」はロシア語でなんというのかは知らぬが....。ともかくまあ、木村大先生が、効果はともかく「完敗だ」と灸を据えてくれたのは良かった。と言う訳で、木村大先生に賞を呉れた「正論)が何であるかを知るために,一寸古いが上丸洋一の「 『諸君』『正論』の研究3 」を出しておく。
「煮ても焼いても食えぬ」を型にしたらプーチンだろうが。「聞く耳持たぬ」とくれば安倍さんだろうから、木村大先生のお灸は効かぬだろう。無駄な耳をつけているものだ。所で、そんな無駄な耳ならともかく、人の話をよく聞く耳を持った明恵上人高僧を描いた国宝の肖像画が「ふくろう文庫」に入った。いずれも開陳するつもりだが、その前に耳切について「耳鼻削ぎの日本史4 」という実に面白い本がある。明恵理解に役立つとは言わぬが、日本人を理解するには役立つかもしれぬ。安倍さんにも読んで...と言ったって、そもそも聞く耳ではないか!!困った御仁だ!!。