2020.3.30寄稿
「週刊文春」3月26日号を買ってきた。「森友自殺・財務省職員・遺書全文公開”すべては佐川局長の指示です”」が出ている。「妻は佐川元理財局長と国を提訴へ」なる解説を付けているのは大阪日日新聞記者の相澤冬樹。
この人は東大法学部を出てNHKには入り、司法キャップとして森友事件を取材していたが、それが嫌われたか、2018年にNHKを切られて現職になった人。自殺した近畿財務局職員の赤木俊夫氏(54歳)の遺書を多くの人に是非読んでもらいたいものだ。この手記が公表された後の国会での安部・麻生の人間味の全くない答弁については、すでに各紙に報じられているから、繰り返さない。只、この2人には「改悛の情」が全く見られないことははっきりしている。またそれだから、遺書を読んだら少なくとも普通の人間ならもよおすであろう「一掬の涙」(いっきくのなみだ=ひとすくいのなみだ)さえもこの2人は浮かべない。トランプを指示する人たちは大方、キリスト教でも原理主義を信奉するファンダメンタリスト(聖書の記載を文字通り信じる人)達だが、彼らの間でさえ、最近のトランプは「不道徳」だとして指示しない層が増えているというが、安倍・麻生を指示する人たちはこの連中を「不道徳」だとは思わないのだろうか。「週刊文春」の4月2日号には「赤木さん”遺書”私はこう読んだ」と題して、石破茂の「再調査検討せよ」他、識者5人の読後感が出ている。私が「ようやくか」と思って読んだのは三浦瑠麗の「次の死を防げ」。この39歳の国際政治学者は赤木氏の自殺の際「人が死ぬほどの問題じゃない」と発言して、多くのヒンシュクをを買った人で、私も好きではないが、今回は発言が誤解されたとしつつ、「財務省が赤木さんの遺書を新証拠として採用し、すでに退職した佐川さん以外の関係者を左遷や懲戒免職にするなどの行政処分がありうるでしょう」と言う。多少は増しになったか。
ところが、安倍が自粛と言い、小池が都市封鎖と強調して国民の多くがそれに従っている最中、安倍の能天気な細君がタレントやアイドルとともに13人してレストランで花見をしたと報じられたから、「又か!」と思ったのは私だけではあるまい。そしてそれを咎められた安倍の反論が又ふるっている曰く。「自粛を求められた公園ではない」曰く「レストランに行ってはいけないのか」。この夫婦詰まる所「不道徳」に加えて「ハンカクサイ」のではなかろうか。世が世ならーと言うことは、例えばこれが大名の奥方ならば幕府にその不行跡をとがめられて改易(御家断絶)の口実とされたかも知れぬ。しかし安倍の立場は一藩主、一大名ではない、言うなれば徳川将軍家の地位にある訳で、その御台所(みだいどころ)がこの阿保ぶりじゃ、老中あたりから「そろそろ、御謹慎、さもなくばお座敷牢にでも」と言われる頃じゃなかろうか。そう言えば、題も役者も忘れたが、藤沢周平原作の映画で藩主の奥方の勝手放題に藩の行く末を案じた若侍が奥方を殺すのがあったな。廊下の向こうから馬鹿奥方が来る、両膝ついて脇に控えていた若侍が突如目の前を通過する奥方の胸めがけて錐のような秘刀を繰り出し〜といったものだった。ナンニシテモ、この「責任」を一向に果たそうとしない愚かな夫婦にいい加減引っ込んでもらいたいものだ。
コロナで全国高校野球大会が史上初めての中止というが、「ソウカイナ?」という気がする。と言うのは、ナラ、戦争中の中止は史上にならんのかいという気持ちだからだ。「シリーズ過去の戦争とスポーツ③1 」の46Pに「1942年(昭和17年)の夏〜全国中等学校野球大会」を最後に甲子園での球音は消えてしまいました。」とある。中学と現在の高校では呼び名が違うというかも知れんが、それは屁理屈で甲子園は同じだ。甲子園はこの年軍部接収されて芋畑になり、スタンドには高射砲台が設置され、昭和20年8月6日には空襲を受け3日3晩燃え続けたのだ。
序でに言うと、今野球ファンは(私はファンではないが)阪神タイガースなど英語を並べているが、これも1940年(昭和15)9月、戦争だと言うのに敵の国の言葉を使っているのはケシカランと言う軍部の圧力で、その時まで英語名しかなかったチームの名を皆日本語に変えてしまったのだ。その結果が、ジャイアンツ=巨人、タイガース=阪神。イーグルス=黒鷲軍、セネターズ=翼軍、ライオン=朝日軍だ。おまけに「野球は全て日本語でやれ」となって、ストライク=正球、ボール=悪球、ヒット=正打、ファールボール=圏外、セーフ=安全、アウト=無為、チップ=擦打etcとされ、その数え方も、ストライクの時は「よし1、本」、ボールの時は只「1つ」、四球は「一塁へ」アウト=ひけ、スチール=奪還、そしてもちろんグラブとミットは手袋となった。もう一つおもけでいうと旭川出身のスタルヒンは須田博と改名させられ、あげくに外国人だからと首になった。コロナにより史上初の中止と言うなら、「戦争で中止」もあったんだと書いて欲しかった。と言うのも、コロナもさることながら「戦争」ときたらその悲惨さは輪をかけて非道いものだ、と言うことを「コロナ中止」で泣いている選手達にも言ってもらいたかったからだ。沢村賞の沢村も戦死した。
全国一律「休校要請」で至る所で要らざる混乱が生じたが、新聞によると、これ安倍が股肱(ここう)の臣(しん)=腹心たる菅にも相談せずに発表したものだという。菅もコケにされたもんだ。その発表が2月27日、2月29日にはこれについての安倍の記者会見が開かれた、ーはいいが35分程度の会見で質疑応答僅か15分。国会で相手の質問をスリカエ,ハグラカシ、自分の言いたいことだけをしゃべる悪い癖が出た訳だ。しかもこの質問時間で許された5人の記者はあらかじめ決められていて質問内容も打ち合わせされていた様で、つまりは馴れ合い=お芝居=やらせの質問ではなかったか、との疑いが出された。その証拠に、まだ質問ありとする記者が10人も手を挙げていたと言うし、更に「まだ質問あります」と何度も声を上げていた女性記者を無視して安倍はさっさと公邸に帰っってしまったと言うのだ。これ誰だあろうと思っていたら江川紹子だという。さもありなん!江川は「オウム事件」や「名張毒ぶどう酒殺人事件」などの取材で敏腕ぶりを発揮し95年に菊池寛賞を受けている人だ。この江川の本で私が一番ススメたいのは国際法の東大名誉教授、故大沼保昭と組んだ「”歴史認識”とは何か2 」(中公新書)だ。江川が問題提起をする進行役となって、大沼がそれに答える形で展開されていく本だ。その問題の選び方、展開するにつれて江川が発する質問の的確さ、そしてそのまとめ方、読んで私はつくづく江川の力に感嘆した。その問題も、よく「日本いい国」式主張する連中が言う、東京裁判はパル判事が言う様に無罪だった、日本は朝鮮はじめアジア諸国を解放したのだ、在日の特権はケシカラン、慰安婦問題には責任ないetcそれらは本当なのかと言う事に大沼は実にやわらかくやらかく解きほぐして、それらは正しくない事を論証してゆく。できたら山崎雅弘の「歴史戦と思想戦」(集英社新書)と合わせて読めば読後の実りは一層豊かだろう。
ところで「日本いい国」派の代表格百田尚樹が「週刊ポスト」の4月3月号で「安倍さんには失望した」とて120分のインタビューを発表した。今更遅いが何考えてんだか。
それによると百田の言い分はこうだ。「安倍総理はこれまでいい事も沢山やってきた(?)しかし、新型肺炎の対応でそれらの成績は全て吹き飛んだ」(?山下)沈みかける船からネズミが逃げ出す様に百田も「あぶないと」と思う安倍丸から逃げたいのか。そかし。安倍の権力が続いたら、安倍は「籠池夫婦」を見殺しにしたようにたように百田も切るだろう。
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