2024.12.10寄稿
先日、猪口邦子参議院議員の自宅マンションが火事になり、夫と娘が焼死した、と報じられた。
このニュースを見て、私が思い出した本がある。山崎雅弘著『歴史戦と思想戦ー歴史問題の読み解き方〜」2019年5月に「集英社新書」の一冊として出た。その第5章は「時代遅れの武器で戦う歴史戦の戦士たち」。ここに猪口が登場する。見出しは「産経新聞社の”歴史戦”をアメリカの学者に大量に送付した日本の国会議員。
それによると、2015年10月海外で活動する大勢の歴史学者やジャーナリストに、猪口名義の小包が届いた由。猪口の言わんとすることは一言で言うと、日本が大東亜戦争中に行った(慰安婦)問題について否定するものだった。このトンデモ本を送られた一人に、アメリカ・モンタナ州立大学の山口智美准教授が居た。山口は岩波書店から『海を渡る「慰安婦」問題ー右派の「歴戦戦」を問う』を出した人で、当然猪口とは真逆の立場の人だ。そこで猪口が送った資料について歴史学などを専門とする学者やジャーナリストの感想を聞くと全てが批判的なものだった。それらには「不快だ〜信じらえない」とか「学術的価値はない」との文言が並んでいた。要するに猪口の送った資料は超右翼とみなされた産経新聞の主張を同じと見られたのである。山崎は言う。自分が育った国について、良いことばかりアピールすれば、他の国から好かれると言うのは、子供じみた思い込みです。大人なら誰でも知るように、実際は逆です。猪口の話は終わりにして次に移ります。
私は青木理の本は出るつど読んでいる.2024年2月に出たばかりの「時代の反逆者たち」河出書房新社刊だ。登場する人物は皆私の好きな人ばかりだが、読み応えのあったものをあえてあげるなら、まず政治学社の「中島岳志」次にコメンテーターの「松尾貴史」ロシア文学者の「奈倉有里」など。ところでもう一人あげたいのは「国谷裕子」クローズアップ現代でキャスターを務めていた人だそうな。国谷はそのキャスターを23年間つとめていたが菅義偉官房長官が番組に出演した際、辛辣な質問をぶつけられたことに菅氏が激怒し、それが降板の原因になったらしい云々。国家権力に対して、メディアはどうあるべきかを考えたい人には是非読んでほしい。今回はこれで終わり。