第193回 スターリン批判

ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」は、イングリット・バーグマンとゲーリー・クーパー主演の 映画によっても知られた有名な小説だが、スターリン独裁下のソヴィエトでは、すんなりとは出版されなかった。

と言うのは、この小説の中に、イバルリ・ドロレスなる女性について、辛辣な批判が書かれて いたからだ。それがどうした、と言われると、ドロレスは「スペイン市民戦争」の時に、軍人独裁者フランコに対して反対した共産党の女性政治家で、「奴ら(フランコ側の兵隊)を通すな」と言う、有名なせりふを吐いて、「ラ・パッションナリア=情熱の花」と呼ばれ、スターリンのお気に入りだったからだ。ドロレスを批判することは、スターリンを批判することになる訳。で、それは誰にも許されぬことだった。 続きを読む 第193回 スターリン批判

第272回 ふくろう文庫ワンコイン美術講座

昨年7月から奇数月に「ふくろう文庫ワンコイン美術講座」なるものをやって、
この3月で無事5回めを終えた.最初から題目を並べると、7月①七夕と北斎の謎、
9月②お化けと妖怪—お化け・妖怪・幽霊の違いと、その絵画作品についてー、11月③切腹の画家・渡辺華山対脱獄の蘭学者・高野長英、1月④琳派−光琳から抱一までー、3月⑤悲恋に泣く岡倉天心・明治美術界の指導者、、、、となる毎回平均50人程の来場者がいてくれて、好評だった。

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第271回 菊の花の由来

これを書いている今日は3月12日水曜日、今朝白鳥大橋を渡って来た時の気温(10時一寸過ぎ)は+5℃、風速は4m…でまあ寒くはない。先週はもうちょいと冬めいていた…が、その或る日、「ふくろう文庫」のことで来客中のの所に、質問があるとて別に来た人がいて、その質問とは「菊」についてである。「菊」は日本在来のものか、いつ頃からあるのかetc…と言った所で、私は即答出来る種類のものでなし、「ふくろう文庫」の方の用事は片付いていないしで、帰宅して調べてみますからと、一旦引き取ってもらった。その晩、晩酌を終えてから書庫から出して来た何冊かの本の中から「答え」を見つけて、翌日知らせたが…今回は、まあちょいっと季節外れの話題であるけれども、事の序でだから「菊」の話をしよう。

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第270回 音楽は人を善になしうるか-善き人のためのソナタ-

マルセル・ライヒ=ラニッキはポーランド生まれのユダヤ人でドイツの『フランクフルター・アルゲマイネ』なる新聞の文芸デスクを勤めた人。現代ドイツ随一の批評家と評される人だが、①「わがユダヤ・ドイツ・ポーランド」だ。その中にバイオリニスト・メニュインに関する発言がある。長いけど必要だから全文引く。メニュイン70歳の誕生日の祝いの席で述べられたものだ。

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第269回 岸田劉生展

昨2007年6月9日(土)〜7月29日(日)迄「北海道立函館美術館」で、「画家・岸田劉生の軌跡—油彩画・装丁画・水彩画などを中心にー」展が開かれた。ポスターの謳い文句は「駆け抜けた38年」。「とってもいいですよ」と、これをみこれを観た苫小牧の墨谷さんから感動の知らせが来たが、私は折悪しく風邪を引いていて、諦めざるを得なかったーと覚悟していたら、明日で終わりと言う日に元気が出て、勇躍行って来た。

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