ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」は、イングリット・バーグマンとゲーリー・クーパー主演の 映画によっても知られた有名な小説だが、スターリン独裁下のソヴィエトでは、すんなりとは出版されなかった。
と言うのは、この小説の中に、イバルリ・ドロレスなる女性について、辛辣な批判が書かれて いたからだ。それがどうした、と言われると、ドロレスは「スペイン市民戦争」の時に、軍人独裁者フランコに対して反対した共産党の女性政治家で、「奴ら(フランコ側の兵隊)を通すな」と言う、有名なせりふを吐いて、「ラ・パッションナリア=情熱の花」と呼ばれ、スターリンのお気に入りだったからだ。ドロレスを批判することは、スターリンを批判することになる訳。で、それは誰にも許されぬことだった。 続きを読む 第193回 スターリン批判