第437回 「保守論壇亡国論」「アイヌ民族の現在、過去と未来」

2022年7月26寄稿

「安倍晋三は、小泉政権時代に拉致問題に熱心に取り組んでいたということを根拠に、つまり拉致問題をステップに急速に”保守の星”として台頭してきた政治家であるが、私は最初から安倍晋三の人間的、思想的未熟さを未熟さゆえの政治的脆弱性や危険性を強く感じていた。そのため保守論壇や保守系ジャーナリズムで異常と言える程に安倍晋三人気が高まったことが不思議でならなかった。言い換えれば私は安倍晋三を持て囃す保守系論壇に思想的劣化と退廃を感じていたわけだが〜」

これは保守の哲学者、文芸評論家の山崎行太郎の「保守論壇亡国論1 」の中に出る文章だ。山崎はこの文章の数行前では「安倍政権の”戦後レジームからの脱却”路線が支持されなかったのは、安倍晋三という政治家が人間的に信用されなかったからである。国民はイデオロギーより、人間的な存在本質をしっかり見据えて判断したということだ」とも言っている。同感だ。因みにこの本は、山崎が先に引いた「思想的劣化」を感じた桜井よしこや渡辺昇一を切った本だ。左の人間ではなく、右の人間が右の名立たる言論人を切ったところに意義がある。

ところで、私もアベを好きではない。その訳は、山崎の述べる”人間的に信用できない”と言うのと同じことだが、このアベ嘘をつきすぎる。アベは北海道弁で言う「万八(まんぱく)」だ。これ、万のうち真実は八つだーで、つまり、嘘つき、嘘八百と同じだ。ナニシロ国会で118回も嘘をついた男だ。こんな嘘つきを褒める人がいるのが私には理解できない。嘘と言えば「嘘つき弥次郎、藪の中で屁をひる」なる言い回しがある。その意味は、「人前で嘘をつくような者は、陰では悪事をする」と言うことだ。アベが国会で嘘をつきつつ陰で何をやったか、今や明白と思うが、改めて確かめるには、朝日の取材班の手になる「権力の背信2 」を読むがいい.2017年度「日本ジャーナリスト会議」賞大賞、第22回新聞労連ジャーナリズム大賞、受賞の力作だ。アベが殺された時、あの無学のアソウまでが、人の口真似で「民主主義の根幹たる選挙の最中に〜」と言ったが、それを言うなら、「民主主義の根幹たる国会」を数々の嘘で貶めたのはアベではなかったか。岸田はアベの国葬を決めた。しかし、かって街頭演説でアベは「こんな人たちに負ける訳にはいかない」と言ったが、「こんな人たち」の側にいる国民の多くはこの「国葬」にすんなりうなずけるものだろうか。序でだから、アベやらスガ他にうとまれた元官僚の古賀茂明と東京新聞記者の望月衣塑子の「The 独裁者。国難を呼ぶ男!安倍晋三3 」を出しておく。又しきりに戦争をしたがるアベを「軍服を着た首相」と捉えた保坂正康の「安倍首相の”歴史観”を問う4 」も出しておく。

 

 

 

話を変える。40数年前家を建てる時に私は仲が良かったTに一緒に建てないかと声をかけた。Tは室工大でドイツ語を教えていた。Tはこの誘いを受けて、並びあって住むことになった。その頃Tには息子が2人いたが2人とも小学生だったが、2人は成長して大学生になった。長男のIは東大に行ってフランス語を学び、序でフランスに留学して帰ってくるとアイヌ語に切り替え、今は北大で教えている。アイヌ語をやりだしてからは、アムールに調査に行ったりーとその都度「ふくろう」の土産を持ってきてくれた。「ふくろうの諸々を蒐め「ふくろう文庫」を始めた私の事を思ってくれての事だ。そのIが北大に来てから直ぐの頃,日高の方で行われたアイヌの集会に出て、アイヌ語で「今迄和人がアイヌに対して行って来た色々なことに対して謝罪したい」云々の記事が新聞に出て、私は「偉いIよ。よく言った」と内心褒めたが、この謝罪云々は北大を初めとして、アイヌの遺骨を多く持っている国立大学が外に示している態度とは正反対のものだ。その辺りが去年末に出た平山祐人の「アイヌ民族の現在、過去。未来!5 」(藤田印刷エクセレントブックス刊)にはこう書かれる。「遺骨などから出土したアイヌ民族の遺体及び副葬品の取り扱い」も「死者に対する敬意」「アイヌ民族の意思の尊重」など冠の文は美辞麗句が続く。そしてKの言う論はどこまでも正論だ。ただ具体策になると、力関係で揺れ動く。そこは北大、アイヌ、先住民研究センターの中でただ一人Iさんが一貫して遺骨の盗掘に謝罪と返還を求めて来たことと、明らかに違う」つまり北大他は今に至る迄一切誤っていない。

日本政府が北海道をアイヌからうばって以来、おためごかしの事ばかりを続けている事は驚くべき事ではないか!。

今白老に「民族共生象徴空間(ウポポイ)」がある.2020年に出来たものだが、これを直ぐに見に行った梅田君(室工大建築出身、盛岡在)の感想は「ダメ!!」だった。仲間のうちでも博学の梅田の言は正しい。まともな知識(アイヌについての)と、まともな感性を持っていれば「ウポポイ」が国と結託した御用学者達の集まり場所だと言う事が分かる筈だ。話を戻す。この「アイヌ民族の現在、過去と未来!」の著者平山祐人は元小学校の先生だった時、元「アイヌ文化振興研究所推進機構」が発行した歴史副読本に関わった。これ小学生用の「アイヌ民族の文化と歴史を学ぶ副読本」のことだ。

その副読本の次の文章「1850年頃、北海道のほとんどの場所にアイヌの人達が住んでいました。しかし1869年に日本政府はこの島を”北海道”と呼ぶように決め、アイヌの人たちにことわりなく、一方的に日本の一部にしました。そして、アイヌ民族を日本国民だとしたのです。しかし、日本の国はアイヌ民族を”旧土人”と呼び、差別し続けました。」に道会議員が噛みついた。曰く「アイヌの方々が先に北海道に住んでいて日本人がそれを奪ったというように間違えた認識が広がっている。それは違うのだという事を、北海道としてもしっかり、広報していただきたい。」これに同調して副読本批判を参議院で始めたのがヤンキー先生こと義家弘介(いたな、オドオドして卑しい表情の男が)この脅かしに屈して副読本を書き換えたのが当時のアイヌ文化財団の理事長でかっての北大の学長、そして今ウポポイ代表のNだ。このN、実は私の友人の弟だ。ーと言う訳で、この全体ふざけた話に怒りを感じた人はこの本を読んで下され。

とここまで書いたら、四国の俳人栗原さんからハガキが届いて、アベの国葬について「アンケートでは反対者より、賛成者の方が多いようです」とある。どこのアンケートか知らないが、私の情報とは違うようだ。7月16日の新聞では「森本毅、スタンバイ」なるラジオで視聴者に聞いたものとして、95%が反対。で意見としては「(桜見る会前夜祭を開いたホテルニューオータニなら)5000円で仕切れるでしょう、サントリーも無償で色々提供してくれるでしょう」なんてのがあって、森本氏曰く「いやはや反対のオンパレードでした」とある。四国と東京の地域差ということかね。7月26日の中国新聞では反対76.4%、賛成21,4%、南日本新聞では反対72.2%、賛成23,1%と出ている。

 

 

  1. 山崎行太郎.保守論壇亡国論.K&Kプレス(2013) []
  2. 朝日新聞取材班.権力の背信.朝日新聞出版社(2018) []
  3. 古賀茂明.望月衣塑子.ベストセラーズ.(2018) []
  4. 保坂正康.安倍首相の”歴史観”を問う.講談社(2015) []
  5. 平山祐人.アイヌ民族の現在、過去と未来!.藤田印刷エクセレントブックス(2021) []

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