`98.12.1寄稿
「日、中、仏、米、の4カ国が総力を結集。全世界待望、今世紀最大最後の映画ロマンついに!」・・・・と大評判の「始皇帝暗殺」を観て来ました。
かくうのじんぶつ、ちょうひめにふんするしゅえんじょゆう「鞏俐.コン,リー」のあでやかなこと、おどろくばかりです。「美人は3日見ればあきる」・・・など、この美人にはあてはまる言葉ではありません。「紅いコーリャン」のデビュー以来、魅せられるばかりです。
美人はさておき、始皇帝について、知識をまとめておこうとするなら、「兵馬備と始皇帝1 」がいい本です。
始皇帝の生涯と事跡がスンナリと頭に入る仕掛けに出来上がっている本です。
映画を先に観てからこの本を読むと創られたものと歴史上の事実との違いがはっきりとわかって、小むずかしい歴史書の面白くなさが逆にわかる、と言うものです。
東大の心療内科が開発した「交流分析理論」なるものによると、始皇帝は「自己愛人格障害」と診断されて、「病的」な部分が多い人間だった、と判断せざるを得ないそうな。
さて、中国と言うと、テレビの「何でもお宝鑑定団」とか言う番組で、「長恨歌」絵巻が話題をよんだとか??
聞いた話では、金沢は、前田家(大名)の筋から出たもので1,000万円だったとか。
因に「長恨歌」(ちょうごんか)とは、唐の玄宗(げんそう)皇帝が、楊貴妃をなくした怨恨の情を述べたもので、唐の詩人、白楽天による叙事詩です。
美人、それも色香で城や国を傾け滅ぼすほどなものを「傾城(けいせい)の美女」と言いますが、楊貴妃が正しくこれで、玄宗は彼女にメロメロになって、国を治めるのを怠り、国を滅ぼしてしまうのです。
この玄宗の恨みを詠った白楽天の詩2 を、武部利男の「ぜんぶかながき」の卓抜(たくばつ=普通の人には真似が出来ない程すぐれている)な翻訳を読んでみませんか。
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前野直琳の訳によると、
「漢の帝(みかど)は色ごのみ 絶世の美人が得たいものとしろしめす御代(みよ)の年ごとに探したけれどみつからぬ」
これが、武部の手にかかると、「カンのみかどはいろごのみ、すごいびじんをもとめてた てんしになってひさしいが てんかにびじんはいなかった」となります。楊貴妃の美しさは、「ひとみをめぐらしほほえむと なまめかしさがみちあふれ きゅうでんじゅうの おんなども おしろい まゆずみ いろあせた」だった由。白楽天が一度に身近かになります。
ついでにアーサー・ウェーリーの名著「白楽天3 」もどうぞ。
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この名著を訳した花房英樹にも、「白楽天」(清水書院・人と思想シリーズ)なる評伝がありますが、これは啓蒙的なこのシリーズに入れられたものにしては、書きっぷりがいささかむずかしい。
さて、最後は最近読んだもので一番面白かった本。
それは、田中善信の「芭蕉、二つの顔4 」です.
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なにしろ、この本、おどろかされることばかり、例えば、伊賀上野から江戸に出た「俳聖」芭蕉は、ナント、神田上水の水の浚渫(しゅんせつ=泥さらい)工事の請負をしていた、そして妾(めかけ)としていた、女と・・・・
このあとは書くことが出来ません。この推理小説的に面白い本の種あかしをする訳にはいかないからです。
気になる方はどうぞ、どうぞ一読を!!
98,12,1(火)