`01.9.1(土)寄稿
去る8月30日(木)、200名余の小学生相手に1時間、話をした。題して、「僕もほしいな○本、私も読みたい△本」。場所は本室蘭小学校体育館。同校、開校120周年の記念行事だ。
私の話はともかく、特筆すべきは、会場の雰囲気。祭典気分、満天で、心から多くの人に見て欲しかった。これ、全部、柴口さんを中心にしたお母さん達の力のたまもの。それに、外部からの協力者として、白鳥台で「たんぽぽ文庫」を開いている、安藤さんと仲間の結束、もう一つ言及しておかねばならぬが波の端小学校の木下先生と図書ボランティアの人達の心からなる援助。etc。
なにしろ、会場入口の上部には、お母さん達手造りのみみずくが一羽、「ふくろう小学校」の文字が入った横板をかかえて羽を広げ、右脇には安藤さんが自宅の庭から引っこぬいて来た白カバの餌台にみみずく型のローソク立てを置いて、灯をともし、左側にも大滝ガマのみみずくローソク立て、入口を入って会場までは、安藤さんと、用務員の加藤さん苦心の桜の木のアーチのトンネル・・・・
3m余をくぐって出ると、右手に1m50cmはあろうかと思われるふくろうのパネルが、皆をWelcome。正面演台上には、佐藤カツ子さんの手なる野趣あふれる生花(みみずく柄大型花びんに生けたもの)、会場正面と両脇には、私の提供したふくろうのスタンドやら置物が点々とおかれ、正面に向かって左には私の出品した本の数々を、右側には、安藤さん所蔵の「仕かけ本=POP UP本」20数点がずらりと展示された。トンネルをぬけたら、或いは森に入ったら、「学問の象徴」たる「ふくろう」に囲まれた「知」の世界が現出した・・・と云う趣だ。
フランス語では「ふくろう」を「イブー」、みみずくを「シュエット」と言い、どう言う訳か「ヤッター!!」と言う時に「オー、シュエット」と言う。してやったり!!と言う快感を表現する言葉だが、この日の会場は、正しく「オー、シュエット」だった。
120周年と言う壮大な記念の節目を、非日常的(=安藤さんの言葉)な、つまりは「祭典」にしたいと言う思いが、皆の仂らきで現実のものになった訳だ。
さて、私の題目だが、これは奇をてらって小学生に○△の謎かけをした訳ではなく、ましてや、私が何か不届きなことを書いて、佐々木哲弘校長に伏字処分にされた訳のものでもない。小学生に、様々な本のあることを知ってもらいたく、文字通りに、三角や丸い本を見せたのである。
例えば、三角形の本は、アメリカの「Six Brave Explorers」と題するもので、6人いた探検家が、コブラやひょうなどにおそわれて・・・・ と言う話だが、本を開くと、コブラが立ち上がる仕掛けのもので・・・・ 私は思いついて、安藤さんに、読み、かつ翻訳する役をその場でお願いし、私は、本を開く役にまわった。
と言うのも、安藤さんの舌は転翻自在で、歯の間にはさんだかと思うと上唇のうらに当てる・・・ と言った調子で、彼女がthemと言えば、誰にもthemと聞こえるのだが、私がthemと言っても、それは「禅」に聞こえ、従って私の発音、否ハチオンは、誰の耳にも「禅問答」よろしくチンプンカンプンだからなのである。しかして、思った通り、本を開いて、或いは怪鳥が或いはハイエナが立ちあがると生徒達は、「オー」とどよめいたが、日頃読み聞かせや語りをしている安藤お姉さんが、なめらかに、Six Brave 〜とやり始めると一層一様にどよめいたのだ。
丸型の本は、例えば謎の浮世絵師、「写楽」を扱ったもの。「相撲絵から見た写楽考」との副題故に、この本は土俵の型をとって、丸い本なのです。
さて、最初に柴口さんに助けてもらって、世界で2番目に小さい4㎜弱四方の豆本(ペンダントに入っている)を紹介したのを皮切に、40点以上の本を順繰りに見せていったのだが、皆がアッとおどろいたのは、こちらの思惑通り、「不思議な国のアリス」の仕掛本④だった。
これは御存知、ジョン・テニエルの原画をもとに、ジェニー・ソーンが作った「とび出す絵本」で、同書、第12章「アリスの証言」での、トランプが一勢に舞い上がって、アリスをおそう、と云うかアリスの上に舞い落ちると言うか、の場面を、透視図法的な描写を交えて作った、効果バツグンの本で・・・・・ いや、開いてみせる方も大いに愉快でした。
ところで、1点紹介すると同時に、その本を開いたままお母さん達が持って、生徒の間に入り、かつ後方に居並んだ父兄達にも見てもらったのですが・・・・・ 大英図書館が秘蔵する、「不思議の国のアリス・オリジナル1 」アリスのオリジナル原本 を見せた時、2、3のお母さん達から、「アラッ、オリジナルには絵がないのね」との声がありました。
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これは見せ方(パラパラッと)が早かったので、見え辛かったので、実は少ないながら、ルイス・キャロル直筆の絵があることはある。例えば、先述のトランプの場面で、キャロルが描いたのは①ですが、後、キャロルの意をうけた、テニエルによって描かれたのが「ふしぎなくにのアリス(しかけほん)2 」あなたなら、どちらが面白いと思う?
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ところで、テニエル本よりも親しみやすく、丁寧に描かれたと評されるのが、「不思議な国のアリス3 」、チャールズ・ロビンソン(画)によるもので、この本の挿絵は、実に150点を越します。
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と言う訳で、もう一寸これら「アリス」本について知りたい方は、「アリスとテニエル4 」やら、「ルイス・キャロル伝5 」やらをどうぞ。「絵本」とても奥が深いこと、限りなし・・・・ ですぞ。
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さて、末尾ながら、今回の講演の為に、本立てを50ヶも用立ててくれた、苫小牧市立図書館の今井章子さんなる、佳人にも礼を言わねばなりません。今井さん、まわらぬ舌でThank you!!
※手製の「ふくろう柄」の手旗を振って迎えてくれた生徒諸君と、「オッハー」なるアイサツを演技指導してくれたF君にも感謝!!