`07.9月寄稿
つい先頃、芥川瑠璃子の死亡記事が各紙に載っていた。芥川比呂志の奥さんだった人。確か比呂志より4歳年上の、北海道弁で言う所の「へら」だった。彼女は芥川龍之介の実の姉ヒサの長女。ヒサは結構入り組んだ人生を送った人で、最初葛巻なる男と所帯を持ったが、二人の子供が出来てから離婚して、弁護士の西川豊と一緒になった。
龍之介はこの男が嫌いで、「〜一度も打とけて話したことはなかった」と言っている位だが、その理由はと言えば、「体の逞しい(たくま)姉の夫(西川)は人一倍痩せ細った僕を本能的に軽蔑していた。のみならず僕の作品の不道徳であることを広言してた」からだ。この龍之介に嫌われた弁護士とヒサの間の長女が瑠璃子だが、12歳の時に、父たる弁護士を失った。と言うのは、あろうことか、この弁護士が千葉の土気トンネル近くで自殺してしまったのだ。西川は、あることから弁護士資格を失い、その上自宅が全焼した。ところが、時価¥7,000の家に¥30,000の保険がかけられていたことから、保険金目当ての放火と疑われて、身の潔白を証するために自殺したと言うことらしい。何人も人生たるもの坦々としたものではないよのう。
瑠璃子は比呂志の妻となってから、弁護士の死も含めて、芥川一族のことを色々と書いていて、一応、世間では詩人、随筆家とみなされていた。さて、今日は2007.8月14日(火曜日)昨日も一作日も真夏日が続いていて、あちこちで水死人が出ている。「河童」に「尻子玉」を抜かれている訳だ。下のコピーを読んでいただきたい。
奇しくも6年前の同じ8月14日(火曜日)に出た文章だ。で、今回の「河童」について書こうと思っている所へ、芥川瑠璃子の死を知って、「河童」→芥川→瑠璃子と、妙な連想で先程の文章が出て来ちゃった訳。
芥川は小説「河童」を書いただけでなく、「河童」の絵も描いた。有名な「水虎晩帰之図」の他に「河童屏風」なるものもあって、この屏風中の「河童」は左手に魚を下げ、右肩に蒲をかついでいるのはいいが、珍なることに乳房が描かれている。これ画家・中川一政によると「河童図」のなかの逸品の由。と言うものの、私が好きな河童図は、かの牛久沼の仙人事、小川芋銭の手になるもので、彼の「河童百図」(龍星閣版)は、大学生の時以来、私の愛玩する画巻きだ。因みに「水虎」とは、「河童」の別称だ。ところで、昨年の10月、私は苫小牧の読書団の別称「おはなしオルゴールの会」の墨谷さん達と、岩手は遠野に行く筈だったが、丸井で『ふくろう文庫浮世絵特集展」があったために行けなくなった。その遠野で観光客のために「カッパ」を捕獲してもいいとの許可証が発行されたそうな...と言っても、もう2004年の夏に始まってたと言う。この許可証には全部で7か条のことわり書きがあって、例えば、○「頭の皿を傷つけず、皿の中の水をこぼさないで捕まえること」○「餌は新鮮な野菜を使って捕まえること」○「捕まえた時には観光協会の承認を得ること」等々である。
「河童」は10月を過ぎると冬眠に入るので。この許可証の販売は10月末迄だと....となると、この事、墨谷さんに早く教えなきゃな。
「河童の世界1 」これ全11章から成る本で、「肝を抜く河童」
「相撲を好む河童」「キュウリを好む河童」等々、大方が知りたい所を絶妙に押さえてあり、しかも腰巻きの文章にあるように「日本各地の多種多様な”河童伝説”を渉猟し」...と、はじめて「河童」について読む人も、大分読んで頭の整理に、と思う人にも、いいのでは、と思う本だ。
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「河童駒引き考2 」は有名な本で、今は岩波文庫入りしている筈だが、何故「河童」が「馬」を水中に引きずり込もうとするのかと言う大問題を、日本はおろか、ユーラシア大陸の果てにまで民俗学ではない、民族学の方から探った、壮大で面白い本。
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「河童の荒魂3 」実のところこれが私には一番面白い。若尾の説く所を「にわかには信じがたい説」と微妙な言い方をする人がいて、私もそう思わぬではない部分もあるが、同じく若尾の「鬼伝説の研究4 」も「金属、鬼、人柱、その他5 」も皆面白かったなあ。
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明日8月15日午後、私は60歳以上の人達の「暮らし生き生き、お元気講座』(室蘭民報主催)で講演する「河童」の話で、暑気払いして来ようかしらん!!