2013.03.10寄稿
私が室蘭工業大学在任中、美術好きな建築家の学生水野正弘君は、三日にあげず我が家に来て、余り物も言わず、美術書の本棚の前であぐらをかいて、あれこれを抜き出しては、見入っていた。
その水野君がわずか27歳でガンに犯されて死去してから、毎年仲間と集まって墓参りをして後小旅行をすることを続けて来たが、生き残った同期生がもはや皆定年を迎えたのだ。
3年位前と思うが、その小旅行で軽井沢に行った事がある。高原に散在する美術館はもちろんだが、主たる見学目的は、アントニオ・レーモンドが建てた教会他の建築物だった。
案内役は、水野君の同期か後輩の、鉄腕アトムのお茶の水博士そっくりの西方、その西方を天才と評した、梅田、嶋崎、根元、阿部と言った面々で、皆建築卒。
目的としたレーモンドはチェコ出身のアメリカ人で、フランクロイド・ライトに師事した人。
耐震構造の正確な事、デザインの美しさなどで日本近代の建築家達に大きな影響を与えた。
もう、5年前になると思うが、レーモンドの設計による東京女子大の東寮と体育館が、キャンパス拡張のために解体と決まって、卒業生達のみならずその保存を望む人達の解体反対運動が大きく展開されたことがある。その運動は実らなかったのが残念だったが。このレイモンドとル・コルビュジェに学んだのが日本のモダニズム建築を牽引した前川國男で、前川の弟子の1人が丹下健三だ。この前川は読書好きなら無視出来ぬ名で、...というのは、...前川がベテランたることは、日本相互銀行、国際文化会館、京都会館、国立国会図書館etcとその設計した数々を見れば直ぐわかることだが,,,それらをおいても「本好き」が前川を好きなのは、あの新宿の「紀伊国屋書店」の設計者であることだ。
....とここまでは、実は前置きと言うべき文章で、この3月、建築専門の月刊誌「建築知識1 」(エクスナレッジ社刊)が発行700号の記念企画として「日本の住宅を変えた50人+α」なる特集をした。
[tmkm-amazon]B00BAWTNDC[/tmkm-amazon]
その顔ぶれはと言うと、前川はもちろん、前川と国際文化会館で共同設計をした、吉村順三、60年代の建築運動「メタモリズム」の主導者菊竹清訓、最近ではベネチア.ビエンナーレ国際建築展入賞者の妹島和世、また余り建築に感心のない人でも知っているであろう新聞によく出る藤森照信(タンポポの家、だったかの主)、「伊豆の長八記念館」の設計者の石山修武、それにむろん安藤忠雄もいる。そして、落語でないがここで「耳をかっぽじって」良く聞いてくれと言いたいのが、先に案内役はと出した卒業生のお茶の水博士の西方里見君が「次世代省エネ基準の先を見越した高性能住宅の実践」なるほめことばで先程あげた大家に堂々位して、50人に選ばれているのだ。いつぞや西方君のの工房のパンフレットを見せてもらった時「国土交通大臣賞受賞」などその受賞歴にびっくりしたが、今回はそれに勝る快挙を成し遂げた訳だ。
西方君は、水野君と連れ立って我が家に来てた常連で,実は私は西方里見、耿子夫妻の仲人だ。2人は私を重んじて(?)くれて現千葉大生の息子の名を「敏明」としたが、まあそう言う間柄の人間として,今回のこの西方君への建築界の評価はまことに嬉しくかつ誇らしいものだ。私が長年観察するに,建築卒でも美術に全く関心を示さぬ,数字オンリーみたいな人間の設計は無味乾燥...と言うより下手だ。反対に美術に絶えず興味を示し,加えて油絵でも水彩でも,絵を描く人間の設計は上手だ。そしてこの私流の採点方法からすると、学生時代既に油絵を描いていた西方君は合格となる訳だ。昔西方君が描いた雪の「かまくら」なぞ暖かく穏やかで実にいい絵だった。
西方君を支えているのは,実に良く出来た女房の耿子と県立大の建築卒で力ある娘の響子だ。
私は耿子から如上の知らせを受けて,すぐにお祝いとして,我が「ふくろう文庫」の仲間である「モンパリ」こと須藤智恵子さん作るケーキを送った。すると選抜を記念してとての「ふくろう文庫」への寄付と礼状が来て、「〜かまくらのようなきれいな白いケーキ〜」とあった。これ雪の「かまくら」で間違っても鎌倉ではない。
この「かまくらのような〜」と言うケーキは何か?と言えば、これは「ズコット」でコクと酸味のある種類のクリームチーズで焼き上げたスフレタイプの菓子で「モンパリ」の味ある一品。因みに「ズコット」はドイツの僧侶の冠る帽子のこと(だそうな)これ須藤さんからの受け売り。
さて、この須藤さんは先記したように我が「ふくろう文庫」の仲間で、移転だ、新規開店だのの度に文庫に記念だとて寄付してくれる豪気な人だが、今回「northern style スロウ2 」なる雑誌が「街のお菓子屋さん”モンパリ”息づくのは須藤さんの負けん気」と題して、このブレヒト流に言えば「肝っ玉母さんの」奮闘記をのせた。「フントウ.ドリョクの甲斐もなく〜」と歌ったのは車寅次郎だが、須藤さんは反対にその努力実って、国道36号線沿いに建てた趣味よき店には客が引きもきらぬーと言うより、その前を素通り出来ぬ魅力に満ちた菓子店となっている。娘さんの綾子の笑顔も嬉しい。
以上仲人した夫婦の快挙と、文化運動を共にする仲間の成功とを報じた雑誌2点をあげて...ここで話題を変えて紙幅がないので急いで2つ。
①はジャンケンのこと。室蘭民報2013年2月10日の記事の中で、小学校でのALT(外国語指導助手)の授業に触れて、ゲームを行ったとて「〜アフリカの子供達がよく遊んでいる、足を使ったジャンケンもしました。”足を使うジャンケンを初めて知りました”と異文化に触れてうれしそう〜」とあった。このアンダーライン(山下)の箇所でびっくりしたー。と言うのは、私は姉とよく足ジャンケンをした。異文化なんて大間違い−と思ったのだ。「再考じゃんけんぽん3 」には「足じゃんけん」が何度も出てくると言う訳で、この所記者の勉強不足。
②は馬肉のこと。2月中旬「馬肉騒動、欧州悲鳴』とて、ロンドンやら、イタリアで”ビーフラザニア”に馬肉が混入してたとて、大騒動....馬肉如きで何を騒いでいるのかを書きたかったけど省略...知りたい向きはマーヴィン・ハリス「食と文化の謎4 」の本を読んでください。
※これから家を建てたい人は西方君に注文を!! おいしいケーキを食べたい人は「モンパリ」に注文を!!お願いします。