第364回「パナマ文書」と「パナマ事件」、悪態つくのは下品?

2016.04月寄稿

習近平の奥さん、彭麗媛(ボンリーユワン)は歌手だそうだ。習が夫人同伴でモスクワ大学に行き、舞台に奥さんが現れた時、其のあでやかさに満場の学生がどよめいた、と書いた新聞があったが、私は本人に会った事がないから、その美人の度合いが分からない。習が福建省はアモイの副市長だった時に、友人の紹介で知り合い結婚となったそうな。奥さんの親族には国民党の関係者がいたと言うが、それにしてはよく無事で来たものだ。

習の父勲は共産党員として開明派だったから、習は文革で下放となり、田舎で過ごさざるを得なかった。この農村で若い頃過ごしたというのが味噌で、それは庶民の苦労を知っているはずとなり、間違っても役人的ではなくて、民主的な人物に育っているだろう、との期待となる。で人の良い知識人達は、中国でも改革が進むだろうと思ったが、あにはからんや、知識人への弾圧は江沢民や胡錦濤どころではなさそうだ。

その一例として見られるのが、香港の「銅攞湾書店」事件。昨年10月この書店のオーナーを含む関係者5人がタイや広東省で失踪した。その理由たるや、関係者によると、同書店が近々、習の過去の女性スキャンダル本を出版しようと計画していたからだと。オヤオヤと思っていたら、もっと、やばい話が出てきた。

ご存知「パナマ文書」、タックスヘイブン(租税回避地)の利用者を暴露したもので、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部資料。世界どこに住んでいようが、普通の人間は税金を取られる。何でこんなものに税金をかけられるんだとゴネても意味なし。税金は納めなければ犯罪だ、というのが不承不承ながらの共通認識だ.然るに金持ち連中はこのタックスへイブンを利用して、税率が低い国や無税の国に資産を隠す。このこすいやり方で、税金逃れをしていた人物として、シリアのアサド、エジブトのムバラク、リビアのガタフィらと並んで、プーチン及び習近平の名が出てきた。習の奥さんの持ち歌は「希望の田野」で、歌詞は「私たちの未来は、希望の田野にある」だそうな。さて、どうなるか?

このパナマで思い出したノンフィクションがある。大仏次郎の「パナマ事件1 」1888年、財政危機におちいったパナマ運河会社を舞台として、金融界が操作した一大スキャンダル。フランス政界と金融界との癒着、専横、これ今の日本のみならず、世界いずこの国の情勢と似ていなくもない。「犯罪を公にしたい」との告発者の心が実るかどうか。

先輩のIさんが来て、「今、出がけに平沢カツエの弁解をテレビで見たんだけどさ」と言う。何の話かと思ったら、例の「保育園落ちた日本死ね」の母親の言を紹介した国会の場で、平沢が野次を飛ばしたが、その意味は「言葉が汚い、下品だ」というつもりで言ったのだと言うことらしい。このあと今度は山田宏が「産んだあなたの責任はどうなのかと言いたい」と発言した。

私はスマホとやらは持っていないから、ブログだかツイターだかは一切知らないが、新聞で読んだ限りでは、母親の言葉、汚いとも下品だとも一切思わなかった。あの「死ね」が例えば「くたばれ」になっていても、私はやはり下品とも思わない。逆に私が思ったのは、「お前たちが下品という柄かよ」と言うこと。つまり「お前たちみたいな者には言われたくねえ」ということだった。小学生の頃、口喧嘩で、漁師の子がよく、「オメンタモノにいわれたくねえ」と言っていた「オメンタモノ」とは、どこの方言だろうと、大人になって「北海道方言辞典」を見たが載っていない。しかし、「お前のような奴」の意味だとはよく分かる。

私に言わせれば、国会答弁で強ガリのニヤニヤ笑いをするASOUや「パートで月収25万円」なぞとぬかすABEの方が余程下品だ。「産めよ増やせよ」と言いながら、保育園なる受け皿を作りもせず、待機児童のままにしておく方がはるかに下品だ。松島みどりの狒(ひひ)顔負けの大アクビも下品だ。

自分では上品と思っているらしいが、私から見れば下品な「オメンタモノ」に読んでもらいたい本がある。「輝く日本語の悪態2」がそれ。書影は載せぬが山本幸司の「悪口という文化3 」もあるぞ・・・と言っても「カエルのつらに小便」か。

大学時代、よく下宿の皆して上野の鈴本へ、東大農学部→弥生町→上野池之端のコースで、落語を聞きに行った。ある時ある時父が上京して、寄席ではなくて、どこかのホールへ「林家三平」を聞きに行った。とにかく笑った。話の途中で遅れて入って来る客が来ると、「そこの席あいてます」とアドリブで案内したりして、また本題に戻る。で私は三平が好きだが、息子の正蔵は好きでない。と言うのは、大分昔だが蕎麦屋でテレビを見ていると、タレントを前に催眠術師が催眠をかけて見せる番組で,順が正蔵に来て・・・見事に催眠状態には入った正蔵に、術師が「日頃思っていることを口にしてください」と言った。すると、正蔵の顔がみるからに険悪な顔つきに変わると、年下のタレント達の前に行って「何だ、テメエ、ダマッテリア〜」とやり出した。それが一人に止まらず3人目程になった時、術師が慌てて催眠を解いた。瞬間ポカンとした表情の正蔵に司会が「何か覚えてますか」と聞くと「何も」と言う。私はこれですっかりこの男が嫌いになって、だから山田洋次と言えども,正蔵が出る「男はつらいよ」は観たくない。

三平の奥さんの反戦活動は常々感服しているが、この正蔵とあの娘には余り感心せぬ。好ましいのは2代目三平。それが先日、いわゆる戦争協力=戦意高揚のための国策落語の「出征祝い」を復活させた。南スーダンだ,ナンダ、と国策めいた動きがある中、その志たるや見上げたものだ。「出征祝い」を含む「はなし家たちの戦争ー禁演落語と国策落語ー4 」を挙げておく。

「アベノミクス」より「ネコノミクス」だそうだ。しかし、人間は飽きやすいから。放置猫も日に増えて、その薬殺代一匹78円だと。ーペット屋のウン10万円の猫ばかり可愛がって、普通の猫を粗末にするとは、猫好きの名に恥じるぞ。脅かすわけではないが、捨てられた猫は恐ろしいぞ。猫のたたりを馬鹿にしてはいかんぞよ。・・・・で見せるのはこの本。「怪猫鬼談5 」人類文化社「キャツー!!」私は二度読みたくはない。

 

 

 

  1. 大仏次郎.パナマ事件.朝日新聞社出版局(1983) []
  2. 川崎洋.かがやく日本語の悪態.思想社(1997) []
  3. 山本幸司.悪口という文化.平凡社(2006) []
  4. 柏木新.はなし家たちの戦争.本の泉社(2010) []
  5. 東雅夫.怪猫鬼談.人類文化社(1999) []

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