2021.2.6寄稿
作詞家で作家の「なかにし礼」が2020年12月23日に82歳で死去した。この人についてはいささか思い出がある。彼が2000年に「長崎ぶらぶら節」で直木賞を受賞した時のことだ。
私はその時迄「なかにし礼」に関心がなかったが、この小説が「古賀十二郎」という長崎の郷土史家と、丸山の芸者「愛八」を主人公にしたものだと知って俄然、興味が湧いた。というのは私の関心の一つに「蘭学」があり、今私の書棚にはその関連本がおよそ1,500冊程並んでいる。その中に古賀の大著が数点ある。大著というのは、例えば「丸山遊女と唐紅毛人」は全編846P、後編780P+索引101P+正誤表6P、いずれも昭和43年に長崎文献社から定価15,000円、限定500部で出た大作だからだ。因みに私のは代405番本。
直木賞を取ると、この作品について安原顯(けん)なる人の酷評が出た。この男当時「天才ヤスケン」と自称して、辛口の批評で鳴った男だ。このヤスケンがその酷評の中で、古賀十二郎を「〜妻も子もいる道楽者の自称学者古賀といい〜」と表現するのを見て、私はこの自称「天才」に一言いわねばと思い、2001年4月10日の「本の話no.313」に、古賀について色々書いた。例えば東京外語大出の古賀は10カ国語に通じた人でその日蘭(日本VSオランダ)の交渉研究に対して、オランダから勲章受ける程の人だったことetc、このような人を自称学者とおとしめるとは何たる無礼!というのが私の気持ちだった。序でに言うとこの作品は映画化されて「愛八」は吉永小百合だったが、これはミスキャストで、というのも「愛八」は座敷で横綱の土俵入りを真似する程の相撲好きでデップリとした女だったから、吉永小百合とはイメージがまるで違う。小百合の土俵入りは貧弱なだけだった。「なかにし」に戻る。彼は満州生まれだが「改憲を訴える政治家たちは、個人よりも国家を優先させたようですが、その先にあったのが棄民です」と言い「(ソ連軍が侵攻した時)関東軍は数十万の」居留民を置き去りにして逃げました。それが最初の棄民です」と足し、さらに軍用列車で満州の牡丹江から脱出する途中、日本刀を振り上げた将校に命じられ、列車にしがみつき”乗せてくれ”と懇願する開拓団員たちの指を一本一本はがしていった〜僕らは同胞すら見殺しにしたのです」というこの時「なかにし」8歳。そういう「なかにし」には憲法を尊重し擁護する義務を負っている筈の首相が憲法改正を唱えることが許せない。その「なかにし」が心の丈(たけ)を述べたのが「天皇と日本国憲法1 」(河出文庫)。いい本だ。
83歳の「森」が又やらかした。この「森」、これで「森って?どこの森?」という人は先ずはいない位、世界に知られた「森」になっちゃった。この「森」、早稲田の現役学生だった頃、買春をしたことが週刊誌にスッパヌカレ、もみ消しに必死になったことがある.売春禁止法が成立したのは、森が高校生の頃だったから、大学生になってからの買春は明らかに違法行為だ。この知性のかけらもない、というよりも馬鹿が背広を着ているような「森」で私には変わった思い出がある。以前私は北海道新聞に頼まれて「朝の食卓」なるコラムを書いていた。それが”評判がいいから続けてくれ”と言割れて2年目に入った時のことと記憶するが、この「森」が「神の国」発言をやらかした。それで私が「朝の食卓」でこれを取り上げ批判すると、函館の人から手紙が来た。開くと巻き紙に毛筆で「しゃらくさいことを書きやがって、そのうち日本刀を持って行くから待ってろ」と言ったことが書いてある。ウヒャーと思ったが放っておいたら来なかった。右翼にしてみると、巻き紙に毛筆で書くのが、大方日本の伝統文化を守っているような気がして、いい気分なんだろうな。まあそれはともかく、この天下に馬鹿を晒した「森」を例の悪徳弁護士の橋本徹が妙に庇っている。橋本に言わせると「森」は自分の83歳のおかんと同じで、この年代の女はガンコ・キクミミモタヌで何を言っても通じないから、この際名誉会長でもなってもらったらと言う。世の中の83歳の女性をひっくるめて自分のアカン、おかんと同じにするのは、「森」の「女は皆話が長い」と言う論法と一緒で、83歳の女性で「私は違うわよ」と思う人はゴシャマンといるだろう。この橋本はいつも一見批判するようで、大物にはどこかで救いの一言を加えてる癖がある。橋本は一家してマクドナルドが大好きで、ナント府知事時代には日本マクドナルドへ何故か表彰状を送っている。日本の食文化を向上させた、とでも言いたいのか。このことをのせた適菜収(てきなおさむ)の「日本をダメにしたB層の研究2 」(講談社+α文庫)には自分に批判的な大阪市職員に対して「、負けた時はー一族郎党どうなるか、我々が勝った時には覚悟しとけよ」との発言の収められている。橋本は又市長時代卒業式に教員が国家(君が代)を歌うかどうか、自分が採用した校長にチェックさせた。いわゆる「口パク問題」を起こした。この時の橋本の論は「完全なマネジメントだ」と。この口から出放題「デマ魔の弁護士」の実態については適菜收の本が一番詳しい。この本知らなかったこと、忘れてしまったこと、etcに満ちている。忘れてはいけぬを 日常忘れてはいけぬ。
美容外科の「高須クリニック」の高須克弥というハッタリ屋、何の必要あってか、ヘリなんかに乗って忙がしがっている様子のこの男、ヒトラー礼賛者で、それだけでもとんでもない男だが、2020年の8月に妙なことを始めた。事は「あいちトリエンナーレ」に関する。この美術展中止問題については、私も何回かこの欄で中止反対を述べ、それを考える助けになる資料も挙げて説明してきた。ところが、名古屋の河村隆市長が展覧会会場に座り込んで中止を主張すると、あの司会業の落語家シラクまでが、”私も駆けつけて隣に座りたい”などの馬鹿な発言をした。こうした事に力を得てか、あろう事か高須は「あいちトリエンナーレ」の実行委員長大村知事のリコール運動を始めた。ところがその結果集められた約43万5000人の署名を選挙管理委員会が調査したところ、ナントナント8割以上の約36万2000人分の署名が無効と分かった。と言うのはこの無効分の9割が同じ人物によって書かれたと分かったからだ。これを問われた高須は「責任は私にある、死刑でも懲役でも受ける」と死刑になぞなりっこない事を分かって大見栄を切り、「しかしこれは私をおとしいれようとする人達の陰謀です」と言い始め、一緒にリコール運動をやった下品な河村も「僕も被害者」などと言い出した。汚い奴等!!インチキ署名とは聞いて呆れる。こんなへナマズルイ馬鹿者に陰謀を企てる程にヒマな人間がいると思うのか。先に挙げた適菜の本には「B層は陰謀論が好き」との一章がある。虚言癖出なくて虚言症の安部が去ってくれた。この稀代のカラポヤミ(役立たず=北海道方言)について整理するには青木理の「安部三代3 」がいい。解説は北大から東工大に移った中島岳志。安倍に一票投じた連中の責任は重いよな。
「安倍政権とは何だったのか4 」