第421回(ひまわりno237)習近平の「夜郎自大」

2021.4.7寄稿

ミャンマーで国の軍隊が国民を殺している。国連がこれを止めたいが、ロシアのプーチンと中国の習近平がこれに首を縦にふらぬから何の動きも出来ない。香港の民主主義も、これまた習近平のおかげで今や風前の灯火だ。

習近平は何故かくの如き挙にでるのか。それを解くのは「西戎東夷(せいじゅうとうい)」「南蛮北狄(なんばんほくてき)」なる熟語だろう。「西戎」の「戎」(じゅう)は中国の西部に居住した少数民族のことで、つまり「えびす」で未開の民のことだ。「東夷」の「夷(い)」も「えびす」で東部の未開の種族だ。「南蛮」の「蛮(ばん)」は南方の蛮族で蛇と共に南部にいる未開の民だ。「北狄」の「狄(てき)」は犬でこれも北方の異民族。全部足して、中国の周辺の未開の国、四方の諸国を野蛮視した言葉だ。一寸横道にそれるが、昔室蘭工業大学に在任中ポルトガル人とスペイン人の留学生が来たことがある。色々話をしている時、日本では昔2人の国の人を「南蛮人」と呼んでいたんだよと言って屏風絵他を見せたことがある。すると2人は異口同音に、自分たちの国は日本から見て南ではないし、それにどうして「虫」の字がつくのかと言う。これは中々鋭い質問だから私は丁寧に教えた。

日本では室町時代から江戸時代にかけて シャム(siam=タイの旧称) ルソン(Luzon=フィリピンの首都マニラのある島) ジャワ( java=インドネシア)など南方の国を南蛮と呼んだんだ。そして又、それらの国を経て日本に渡ってくるポルトガル人、スペインの宣教師やら商人達を南方から来た人と言うことで「南蛮人」と呼んだんだ。そして「蛮」の虫は、虫ではなくて「蛇」のことでこれは無論中国の言葉を借用したもので、別に俺が君達を馬鹿にしている訳ではないと言うことは分かってくれ、と付け足したのだった。話を戻す。

「西戎東夷南蛮北狄」 それにしても、この自分の国以外の四方の国をあなどったこの言葉、よくぞ吐いてくれたものを、と呆れるが、では日本はどう呼ばれたか。「倭(わ)」が答えで「日本人」は「倭夷=わい」だ。これは無論、日本人が小さくて丈が低い=矮小(わいしょう)で、低く小さい家=矮屋(わいおく)に住んで国も海に浮かぶ小さな国で、つまりさげすみの言葉だ。言ってくれるなあ、と思うが、一方中国人は自分達を何と呼ぶか。答えは「中華」で世界の中央に位置し文化が発達して歴史が悠久たる国と言う意味で、中夏、中州とも言ったりするが、漢民族が自国を呼ぶ時の美称なのだ。そして問題はこの漢民族。このこの漢民族がと言う限定が味噌で、となると、中国に住んでいる漢民族でない人はいつまでたっても未開の民と言うことになる。どうしてか?なにしろ、先の「中華の」定義にあるように中国人は自分達の文化(思想も美術も政治も)が世界一だと自負している。誰が認めた訳でもないのに、とにかくそう思い込んでいるから、世界は私(中国)を中心に回っていると確信している。秦の始皇帝に始まって漢民族は自分の国以外は尊重しない「中華思想」にとりつかれて、これを基に世界を周りの国全てを夷(えびす=野蛮人)とする「華夷秩序(かいちつじょ)」なる思想が生まれた。ところで

中国の前漢の時代、貴州省に栄えた「夜郎」なる国の王様が、漢の使者にたいして得意になって、自分の国と漢王朝のどちらが大きいかと問いただした。これから「夜郎自大」なる言葉が生まれた。自大とは自ら尊大にふるまうことで、四字の意味は「お山の大将」「井の中の蛙」と言うこと。しかしその国土の広さは認められるとしても、自分の力量を過信して尊大に振る舞っている現代の夜郎自大は私に言わせれば習近平ではあるまいか。中国共産党は世界中に自分と同じ体制を作るべく「革命の輸出」を続けてきた。カンボジア、ミャンマー、南米諸国、アフリカ諸国etc、国外に手を伸ばすくらいだから、国内は言わずもがな、チベット、モンゴル、そして今ウイグル、中国共産党が自分の体制と同じものを作ろうと出向く所、いたるところに、想像を絶する悲劇が起きている。その恐るべき実態を知ることは習近平体制を知るに大きな判断力となると思われるその一例として、ここに楊海英の「墓標なき草原1 」(上下)(岩波現代文庫)をあげる。副題は「内モンゴルにおける文化大革命・虐殺の記録」でこれが全てを物語っている。


第14回司馬遼太郎賞受賞の本だ。バイデンが指名したブリンケン国務長官は、今ウイグル自治区で習近平がしていることは「ジェノザイド=集団虐殺」で「人道に対する罪だ」と認定した。序でに、習近平の迫害を逃れて日本に来て、日本語を学んで芥川賞作家となった楊逸「わが敵”習近平”2 」も出しておく(飛鳥新社)「臓器提供の的にされたウイグル人たち」「香港は第二のウイグルになる!」の章がある。

私はずっと北御門二郎(きたみかどじろう)と言う人に関心を持って来た。良心的兵役拒否者でかつ又トルストイの翻訳者として知られた人だ。知られた人だと言っても「世界文学全集」に収録されて有名になったと言う人ではなかった。今回その北御門の孫にあたる小宮由によるトルストイの「イワンの馬鹿3 」の新訳が出た。世界中きなくさくなっている今こそ読まれるべき本だ。ハンスフィッシャーの挿絵で私の今まで知らなかった「アノニマ・スタジオ」なる所から出た。今時こういう心洗われる本を訳す人がいて出す所があるんだなあと感心する。我妻さんも読んで皆に贈りたい本だと言う。

  1. 楊海英.墓標なき草原.岩波現代文庫(2018) []
  2. 楊逸.わが敵”習近平.飛鳥新書(2020) []
  3. トルストイ・イワンの馬鹿.アノニマスタジオ(2020) []

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