司書独言(102)

`10.3月

○月○日 月日の経つのは早いもので、もう昨年になってしまったが、11月に苫小牧の「ふくろうの森の会」の人達と20数人で「札幌ハリスト正教会」の山下りんのイコンと道立美術館の「ジョルジュ・ルオー展」と芸術の森の「山本正道展」を観て定山渓一泊、とまあ大人の修学旅行に出かけたときのこと.芸術の森の有島武郎旧邸を過ぎて一寸行った所で、向こうからエライ美人が長い筒を持って来るのに出会った。筒と言うのは、製図する人やポスターを作る人がよく作品を入れて持ち歩く太く長い筒のことだ。この美人を見た途端、隣を歩いていた田村博文さんが私をみて、「これぞ“つつもたせ”ですね」と囁いた。「本当・本当!!」と私も受けてお互い笑った.と言うのは二人共同時に「筒+美人」で「筒もたせ=美人局」を連想したからだ。美人局とは「夫ある女が夫となれ合いで他の男と姦通し、姦夫から金銭などをゆすり取ること」(広辞苑)だが、何故に「美人局」なる字を当てるのか?と美術館の入り口迄田村さんと話あったことだった。この字の起こりについては諸説あるので、そのうちゆっくり「本の話」にでも書いてみよう。

そういえば昨年だったか、大阪の地下鉄で痴漢だと騒がれて捕まった50歳代男がいたが、結局は嘘で、大学生が恋人の年上の女に言い含めて痴漢と騒ぎ立てさせ、男をゆすったと分かって無罪になった事件があったが、これも形を変えた「美人局』だと言えるのではなかろうか。オソロシイ。

○月○日 文化出版局が出している季刊誌「銀花」が2月27日発売の161号で休刊になった。工芸や食文化など人間の手仕事に焦点を当ててきた、中々文化度の高い雑誌だったが残念だ。私は創刊号から定期購読者だった.今「人間の手仕事に〜」と書いたが、その「手仕事」をテーマとした特集号で、私が10年余も苫小牧は沼の端小学校で続けている「蔵書票」作りのことが評価されて、同行の児童達と共に同志に8ページにわたって紹介されたことがあって、これは思いがけぬ事と、この仕事を支え続けてくれている同校の地域連携授業の推進役の墨谷真澄さんや、当時の石川校長らと喜んだものだった。同誌では又、私の「本の話」も取り上げてくれて、最近「ユリイカの本」を出した装丁作家の田中栞さんが、はるばる取材に来てくれたことも嬉しいことだった。

○月○日 東京六本木の「森ビル美術館」で「医学と芸術」展が開かれて、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた解剖図がナント3枚も出ていると評判になっている、との記事を読みながら思うことは、一昨年の丸井での「ふくろう文庫展」では復刻版とは言え原寸大・現色の上記3枚を含む解剖図が30枚近くも並んだんだぜと言うこと。

これ、イギリスはウインザー城にある物で門外不出とて、女王の許可を得てから、6カ国の学者が同城の馬小屋に集り、数部限定でかろうじて複写したものだ。「ふくろう文庫」はこの全200枚のセットを持つ身だから、「たかが3枚で驚かないで、一度はふくろう文庫に来てみたら」と言いたくなるが止めておこう。

○月○日 おくればせながら、DVDでレスリー・チャンやらコン・リーが出る「さらば、わが愛〜覇王別姫(はおうべっき)」を観た。覇王とは劉邦(りゅうほう)と戦って敗北した楚の項羽のことで、又別姫とは項羽の愛した虞美人(ぐびじん)追いつめられて城に立てこもった項羽の耳に、ナント包囲している劉邦の漢軍側から、項羽の故郷たる楚の歌が聞こえて来る.自分が頼りにしている楚の兵士達が既に漢に降っていた訳で、これ即ち「四面楚歌」なる言葉の発祥の場面。それを映画では劇中劇として“京劇”でやる。これも大いに興味があったが、驚いたのは京劇の役者の育成の仕方。殆ど拷問に近い体罰に次ぐ体罰で、鍛えるは、鍛えるは。角兵衛獅子の子ども達や瞽女(ごぜ)修行も厳しかったろうが、とてものこと、この京劇の厳しさの比ではなかろう。さすが文化大革命をやる中国!!と妙に納得かつ感心(?)させられた。

○月○日 「ふくろう文庫ワンコイン美術講座」で明治のイコン(聖像画)画家・山下りんを取り上げ、そのあと札幌は福住にある札幌ハリスト正教会にある「りん」作品27点を観る修学旅行をしてきた話は、既に知らせた所だが、2月に入って同教会のホームページに、我々の見学の記事が出た。その記事はー「室蘭市立図書館もと館長・山下敏明氏が主催する読書の会「ふくろうの会」で山下りんを取り上げて後援会が催された。苫小牧でも催され篠永神父ご夫妻も聴講されました.11月14日には中型観光バスでやく20人の方が札幌教会に見学に来られた。参加された皆さんは事前に山下先生から山下りんについて、講義を受けていたので、松平神父から山下りんの入信に関わる過程簡単な説明を受けた。そのあと自由にやく時間にわたって見学.多数の質問を受け、正教会のイコン、建物、聖歌について、理解を深めた』(松平記)。如上の文章のあとに、苫小牧勢と室蘭勢の見学中の写真が載っている。

○月○日 さて、「ふくろう会」では4月には函館への修学旅行を実施する.①は函館・船見町の高竜寺所蔵、蠣崎波響作「釈迦涅槃図」.②はガンガン寺の山下りんイコン③は道立美術館④は松前資料館の波響作品.⑤は「湯の川温泉」一泊。出来たら七飯の「木村捷司美術館」にも寄りたい。画で心を豊かにし。温泉で身体を解放しーとこの盛り沢山の旅、目下田村博文さんがスケジュールつくりに打ち込んでいる。期して待つべし。(山下敏明)


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