司書独言(120)

2011.10月寄稿

○月○日「神さまんすう、神さまんすう、なしておれあ どこを見捨てやりあしたれ?」。これ気仙語で,標準語に直すと、「私の神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか?」となる由。

大船渡市の医者が,自身カトリック信者なことから,遊び心(?)で新訳聖書の「ケセン語訳」を出したことは前から知ってて、私の知人も一部買ったが、その在庫分3,000冊が今回の津波で被害に遭ったものの,泥水を払って乾かしたものが、その生乾きの湿り気が津波を実感出来てよしーとて,売れ始めたそうで,版元のイーピックスが再建出来そうだ、と。いい話だなあ。「神さまん」は「見捨てやりあ」しなかった訳だ。

○月○日 その点、見捨てている気配が濃厚なのは我が国政府で,一向に回復の方向が判然とせぬ。そんな時に「野田」と「どじょう」と来た。私は愛郷心が強い方なので,「野田」は「額縁屋』だけで結構,「どじょう」も相田みつをとやらのインチキ人生訓屋よりも「塩釜」の方がいい。ここで、道外の諸君(これが皆さん、結構いるのですぞ)のために、一寸説明を加えると、札幌に野田額縁店があって、その宣伝文句が「額縁は野田がいいのだ」なの。又「塩釜」とは、私が愛する室蘭の老舗の「うなぎ屋」で、うなぎはもちろん、柳川鍋も絶品であるぞ。そう言えばこの間、某店で「柳川風味の柳川鍋』とあるのを,話しの種に注文してみたら、味は確かに柳川だったがmどじょうの代わりに薄いハムが2枚入っとった。魂消たねえ。

○月○日 静岡県知事から「高橋知事は経済産業省出身だから独自判断が出来なかったのでしょう」と批判されて、道知事が「変わったことを言う方なのでコメントしない。ばばかしい」と返した由。ところが、どう言う訳か北海道新聞には、他紙にあるこの最後の「ばかばかしい」が抜けていて、これかばっているのか?、不注意か?、故意か?。それはともかく「ばかばかしい」とは、何だかんだととぼけられて、やらせも献金も皆目知らずにいた道民の言う台詞ではあるまいか??

○月○日 室蘭東ロータリークラブが創立50周年記念事業に,「ふくろう文庫」に25万円寄付してくれた。40周年の時には実に100万円出してくれて,文庫の運動に弾みがついたものだ。今回はこの25万円で,台湾の故宮博物院所蔵の「院本・清明上河図」を入手出来たので,先日、8月例会にお礼をかねて、この稀世の名画の説明に行って来た。私は,キリスト教社会では、富みは貧者、社会に還元との思想が強く、寄付行為が盛んで、例えば、ボストン美術館も先記の故宮博物院も寄付で成り立っているのだが、それに比べると我が国では、個人の大原やブリジストンや足立や細見などの名美術館はともかくとして、寄付だけでと言うのは少なく,未だしの感あるけれども、そうした土壌のなかで東ロータリーは会だけではなく会員諸氏も「ふくろう文庫」に多大の関心を寄せてくれていて,誠にありがたい,と言った主旨の話しをして来た。ところで、震災義援金を見ていても、ヨン様、チェ・ジュ、石川遼 etcと来る一方、はて、あの人は?と言うのもいる。例えば、先日室民でイチロー1億の記事と並んで、長島が色紙を持って正面向いた写真が出ていたが、この人色紙だけか?。確かに某氏の秀逸賞の川柳「どこにでも顔出すくせに金出さぬ」は言い得て妙だわ!! こういう人いるよなあ。

おじさんの引っ越しの手伝いに行ったら「これでコーヒーでも飲め」と角封筒を渡されたので、「ミスド」でコーヒー注文してから封筒開いたら、角砂糖が2ケ入っていて呆れたと言う人がいるが、入っているだけまだ許せるなあ。とにかく文化・文化と声高に言う人程、声だけだーと言う感じだなあ。

○月○日 私が仲人した建築屋の西方君がナンダカノ調査でブータンに行って来たとての土産話〜ブータンの家々の軒先には、風鈴のように、ポコチンの形をしたものを沢山吊っているそうな。50年も昔、中尾佐助の「秘境ブータン」を社会思想社の現代教養文庫で読んだが、そんなことが出てたっけかな?とその本を探したが出て来ぬ。一方2月だったかに、ブータン王室の三女が来日した。何でも、地球環境の保全に貢献(同国王)したとて顕彰会に出席のためらしい。中尾が初めてブータンを訪れた時の国王の称号は「スリ・スリ・スリ・スリ・スリ・ドルック・ギャルボ・ジグミー・ドルジ・ワンチェック」の由。この記事切り抜いて、中尾の本に挟もうとしたが前記のように見つからぬので、私は思い余って、この切り抜きを当座、D.W.マーラーの「スリのテクノロジー」なる本に挟んでおくことにした。国王よ、許し給え。しかし「スリ」が5回も重なるとはなあ。

○月○日 流通ジャーナリストの金子哲雄が講演と新聞に出ていて、あーあの舌っ足らずの反対の男かと気付いた。話しは「客に買いたい、行きたいと思わせる購買促進が必要だ」云々で、...これ、おかしくないか?子どもが本を読むように仕向けるには?との質問に、読みたいと言う気持ちにさせましょう、みたいな返事で、その読みたい気持ちにさせる方法が分からないから訊いている訳で、つまり、問いに問いで答えていて何やら、禅問答だ。リピーターを呼び込む方法を訊きに行っているのに、リピーターを増やすことが大事...と言うんだから気楽なもんだ。この馬鹿話でこの不景気の中、講演料はいくら取るんだろう...と他人事ながら心配になる。

 

 

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