2013.4月寄稿
○月○日 つい先だって,言葉に関して複雑な思いを持たせられたことがあった。
それはそば屋でテレビを見ていると,日ハムの選手が2人出ていて,1人はどことかから移籍したナントカ選手で元法政大のキャプテンなる人,もう1人はあごの先に貧相なヒゲを生やした中田。
アナウンサーが,16歳の女子からの質問ですとて、移籍組に「貴方の座右の銘は何ですか」と読み上げると,答えは忘れたがナントカ選手が「それはナントカです」と答えた.次いでアナウンサーが、では中田さんは?と訊くと,中田が逆に「座右のの銘ってなんですか?」と訊き返した.アナウンサーは一瞬とまどった表情になったが,咄嗟にそれは常日頃自分が信条としていることを一口で言うと、とか説明して....聞いた私の複雑な思いとは?....16歳の少女が知っている「座右の銘」なる言葉を,中田が知らないとは!との思いと、それにしても,今迄だって色紙を求められること位はあったろうになあ。これは矢張り無教養ということだよな...etc、と言ったもので、とどのつまり,中田が気の毒になって,私は何だか哀しくなった。
○月○日 哀しくなったと言えば,もう一つある。これも最近のこと。「ふくろう文庫・ミニ特別展」の取材に来たベテランの男性記者のこと。
「ふくろう文庫」は もう既にご存知のことと思うが美術書、それも大型の画集、写真集を主に集めていて、これは3Fの「ふくろう文庫」の部屋で、週に木・土の2日間,見守隊の「ふくろう文庫ウォチャーズ」の会員の協力のもと、誰でも自由に手に取って開くことが出来るように
成っている.他の蒐集物、絵巻とか掛け軸とかは常時開陳出来るものではないから、この類いは丸井のあった時は丸井で、そのあとはモルエなどの大型施設をつかって「特別展」として随時展覧して来ている。
○月○日 もう一つの蒐集物、私の言葉で言えば一枚物、つまり浮世絵とか創作版画とか書簡とか、本ではなくて、一枚ものが十数枚から数百枚が一函に収まっているものは、これも通常ご自由に見て下さい、とは出せぬものだから、これは先に記した「ミニ特別展」で額に入れて二、三十枚ずつ出展している。そして肝心んことは画集、写真集は別として、国宝・重文などの絵画、軸物、一枚ものはいわゆる「復元物」で。というのは単なるコピーではなくて、
限りなく本物に近い型で再現したものだ。つまり、素材も本物と同じ成れば、無論原寸・原色で、早い話しが「お宝鑑定」に出しても玄人ですら見間違いかねない、本物と寸分変わらぬ出来の「復元物」なのだ。
○月○日 話しを戻すと、男性記者は、この額に入れた一枚物は、私が画集や書道全集などをローソンとかセブ・ンイレブンなりでカラーコピーして来た物だと思っていたと言うのだ。
私が哀しくなった、という意味がお分かりだろうか。「ふくろう文庫」の蒐集物は、繰り返して言うが、本物と変わらない物なのだ。「複製」と言う言葉が与える印象が良くない訳だが、ナントモハヤ情けない。
○月○日 ローマ法王が交替したが、前法王の引退の理由の一つに、世界各地で暴露された、カトリック聖職者の青少年への性的虐待行為問題に嫌気がさしたのであろう、との見方が一部からでた。さもありなんと思っていたら、今度は上智大学短期大学部の学長が、女子大生にセクハラ(??)、とて解職されたとの記事が出た。これ本当かしら、とちらっと思ってしまった。と言うのは、昔、こっちはプロテスタントの青山学院大の教授が、大学院の女子大生にセクハラとて糾弾されたことがあったが、これ実は理事長職をめぐる学内の権力闘争とからんでいて、この大学院女子大生は銀座のバーの女で反教授側からの「くの一」であったことがわかったと言う一件があったからだ。これを小説にしたのが、確か石川達三の「七人の敵あり」(新潮文庫)だった。(と記憶する)。まあ、それにしても聖職者の禁欲問題は思うだに気の毒だなあ.私に言わせれば、古今西洋の文学、絵画の「聖アントワーヌの誘惑」的テーマ二出てくる、つまり、聖職者をあの手この手で誘惑する悪魔の全ては、聖職者の性欲が生んだ妄想の現れだね。無理せぬ親鸞は偉かった。
○月○日 「この国をダメにした○○」てな本が本屋に並んでいるけど、私から見れば小泉だの.竹中だのはその最たる物だが、国民はお人好しだから親父の罪は放っといて、小泉の息子に黄色い声を張り上げて始末だ。どもならん。これを国外に当てはめればアメリカをダメにした最たるものは、ブッシュ、イギリスをダメにしたのはブッシュに追随したブレア、そしてその前にいたサッチャーだと私は思う.そのサッチャーが死んで.イギリスがその葬儀でもめた。私は国葬まがいの必要はなかろうと思うが、種々出ている意見の中で同意出来るのは社会的良心派の映画監督ケン・ローチの見解だ。それは「サッチャーの葬儀を民営化して競争入札にかけるべきだ」と言うもの.弱者の視線に立って強者の理不尽を暴きつづけて来たケン・ローチの作品を観たことがあるものなら、この言、至言と思うだろうと思うがね。
安倍首相の会食に触れたかったが来月にまわそう。