2012.5.寄稿
○月○日 ジャッキー・チェンの新作「新少林寺」を観た。中で子供が誘拐されて篭につめられている。ハラハラドキドキしたが、勿論無事救出となったが、この話し今でも空絵事でなく、今年2月末の報道だと、中国での人身売買で保護された子供達は、この3年間で53,000人だと。
「一人っ子政策」の結果、2人目を生めば罰金と成るので、女児は嫁用に売り、男児は跡取り、又は労働力として買う市場がある由。私が子供の頃、遊んでいて黄昏時になると、誰言うともなく、お互い「人さらいが来るから帰ろう」と言い合って、別れたことを思い出す。
○月○日 昭和天皇の墓(武蔵野稜)の総工費は26億だったが、今上天皇は国民の負担を考えて、自分は火葬にしてくれとの意向の由。天皇家は江戸時代より350年余、土葬で来た。死後の世界は土中にあると想像し、土中での暮らしの良さを保証するものは棺であるとは昔の中国の普遍的信仰であった、とは司馬遼太郎の説。それで「住むなら蘇州、死ぬなら甘粛」なる諺がある由。蘇州には美人が多く,甘粛では上質の棺材が得られるからというのが理由だ。棺材には「梓」を使うそうだ。天皇が火葬がいいと言うなら、そうすりゃいいと私なぞ単純に思うがね。因みに、天皇の今度の心臓手術は知らず、03年の前立腺手術の費用は760万円で,天皇は保険に入っていないから「宮廷費」から支出される由。
○月○日 四月末の記者会見で石原都知事が「イエローカードが2枚,3枚になったら殴るからな、覚えとけ,俺本当にやるからな」と「ほざいた」由。常々この男、育ちの悪い見本だと私は思っている。ところで私は,オリンピックが近年何やら政治化しているのが好きでないが,大嫌いな石原がオリンピック招致に動いたので,坊主憎けりゃ式にオリンピックが更に嫌になった。とそこへ,ロンドンオリンピックに米国のダウ・ケミカルが五輪協賛を申し出た。この会社,ベトナム戦争で米軍が使った「枯れ草剤」の製造元だ。当然のことにベトちゃん・ドクちゃんなどの肉体的・精神的障害者を現在でも300万人抱えているベトナムから異議が出た。「そんなことする前にベトナムの猛毒剤ダイオキシンを除染せよ、また被害者へ補修せよ」と言う訳だ。これをせずに人類の発達と平和の促進を唱えるオリンピックに1億(=80億)も出すのはけしからん、と言うのは、当をえていると私は思うがね。
○月○日 除染と言えば原発だが、先日某誌と某紙に、中立的な立場で原子力行政に物申すべき立場の筈の大学教授ら24人が原発マネー総額1億円の寄付を受けていたと出てた。
名前の筆頭はこの節「出鱈目」の異名をとる斑目春樹元東大教授だが、見て行くと、オヤオヤ室工大の大学院教授がいて、北電他から950万円もらったとある。11人程出ているなかで金額ではこの950万円が筆頭だ。どこかで聞いた名だと思ったら、先日室蘭民報の人事異動報道で、この4月から道北の某高工専の校長になった人と同じ名だ。新聞に本人は「もらったけれど自分の考えはそれに影響されない」と言った趣の答えをしていたが、これは一寸うなずけぬ。例えば東電は20億円の寄付金を電気料に上乗せして、結局利用者負担にしているからだ。
○月○日 そんなこと位わからぬかなあと思うが、まそこまで頭が回らんのだろう。ところで新任地の某市は日照時間の長さでは道内一二で、ソーラーの盛んな所と聞く。そこで、私、善意に思うにこの教授,海霧濃き室蘭を出て陽光輝く某市に赴き、最たる自然エネルギーの太陽光発電につとめ、もって原発依存を軽減しようと志下のではなかろうか。単なる出世主義の男と思われては本人もつらかろう。
○月○日 私は、快食・快眠・快便の性だから、便所に長居は全くしないが、それでも壁に日本地図を貼り、拡大鏡を脇に置いてあって、時々は見る。また私は日本に西洋の学問が入って来た歴史を辿る蘭学と、洋学も好きだから司馬江漢や亜欧堂田善などの地図造りに苦労した人達についての研究書を出る都度集めて読んで来た。又、明治期「日本地図最後の空白地点」を埋めるために北アルプス劔岳に測量士たちが挑む映画「剣岳点の記」も面白く観た。総括的なものとしては、海野一隆の「地図の文化史」などを重宝している。そうした私にとって、国土地理院が日本地図(地形図)の電子化をすすめていて、いずれは紙の地図の発行を取りやめるとのニュースは腑に落ちぬ。電子化は時代の流れだろうが、一口で言えばどこでも見ることが可能な紙の地形図が消えて行くことはあるまい。じっくり考えてみたいものだ。
○月○日 今年4月13日、理論者の社長だった小宮山良平が死んだ。95歳だ。理論社自体は、2010年の秋に倒産した。テレビしか見ぬ人間にも倉本聡の「北の国から」を出した会社と言えば、ここが良心的な出版社だったと言うことは分かる筈だ。確か小宮山は小学校卒で第一銀行に入り、澁澤敬三に仕えた。そして或る時澁澤がタバコを吸おうとしたので、給仕の小宮山がマッチをもって近寄ろうとして、大理石の床の上ですべって転ぶ。すると澁澤は「決してそんなことをするな。そんな時間があったら。ここある本を全部読みなさい」と言ったと言うようなエピソードがあったことを、佐野真一が書いていたのではなかったかしらん。
小宮山の自伝的大河小説全4部の「千曲川」(理論社)を心ある人に勧めたい。